特別企画
虹の降りるところ



 2005年5月12日、私の住む街には冷たい寒気が流れ込み、午後から強い雨が降りました。それはやがて狐の嫁入り(天気雨)になりました。

 仕事から帰るとき、ふと東の空を見上げると大きな虹がありました。地平線から地平線まで、綺麗な半円を描いていたのです。

「虹が消える前に、家に帰らなきゃ……!」
いつも通りの速度で車を走らせる家路。こういうときは慌てると却っていけないのです。フロントガラスからはずっと虹色の半円が見えていました。

 家に着くなり思わず家族を玄関先に呼び、しばらく虹を見入っていました。よく見ると虹の外側に「副虹」*が見え、「こんな綺麗な虹はしばらく見たことがない!」と一同感激。そしてカメラのシャッターを押していたのでした。

*副虹 虹の外側に見えるうっすらとした虹で、二次虹[にじにじ]ともいう(ホントです)。
    普通の虹(主虹・一次虹)は水滴中で光を1回反射させたものであるのに対し
    副虹は2回反射させたものであるため、七色のつき方が主虹とは逆になる。

虹・左虹・中虹・右
玄関先で見えた虹の連続写真。実際にはもっと鮮やかでした
写真のとおり、副虹は写っていませんでした……

 地面から地面へ。まさに“虹の橋”でした。

「虹の端っこはどうなっているんだろう?」と気になるのが人情です。家から少し歩いて、山の下の街が見える所まで行ってみました。すると……

 虹の根元
虹の降りるところ

 虹は山の向こうへ消えているのではなく、山のこちら側、つまり街に根を下ろしていました。虹は山で遮られるものだと思い込んでいたのでとても驚きました。写真では見えませんが、山の緑が虹に透けて見えていたのです。

「虹の降りたところには幸せが訪れる」といいます。きっといいことがあるでしょう。

 ……振り返って西の空を見ると、すっかり晴れていました。明日はいい天気だ、と。

西の空
虹が見えたときの西の空

 少し経ってもう一度東に振り返ると、虹は殆ど見えなくなっていました。

 もう少し見ていたかったけど、そう思うからこそ虹は美しいのだと思います。

 虹を見つけると、どうしてあんなに嬉しくなってしまうのでしょうね。



2005.5.12

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