ライヴレポート

2007.5.12(土) Rock on the Rock '07

 愛知県吉良町で開催された野外フェス「Rock on the Rock」へ。
 無人駅から歩いて20分。天気は快晴で、道から見える海が絶景だった。
 歩いていると砂浜が見えてきて、その反対側の断崖を背にした広場との両方が会場という異様さに驚く。崖側の会場は50×100m位で思っていたより小さく、客層は90%が20〜30代と思わしき人達。出店も学園祭のような雰囲気でアットホームな感じ。でもこういうイベントに行くのは初めてだったのでただただ圧倒されて居場所を見付けるのに時間がかかった。

 名前を知っている人が出演している時間帯だけいたが、曽我部恵一BAND→湯川潮音→クラムボン→せいかつサーカス→元ちとせ→オオヤユウスケ と聴けた。曲を知らなくても、いい音楽というものは自然に自分の中に入ってきて気持ちよく聴けるものだ。曽我部恵一の力強さ。クラムボンのお洒落なリズム感。せいかつサーカスのパフォーマンスがとても笑えて、初めて観た元ちとせの歌の上手さ・綺麗さ(踊りも)に身震いした。そして湯川潮音の初レコーディングに参加し、曲(『かたち』)も提供しているというオオヤユウスケのやさしい音楽で若干余韻を残しつつ帰った。

 で、肝心の湯川潮音嬢なのですが。
 入れ替え時間に早目に行って、前から3列目の右寄り中央というとてもいい場所を取れた。ステージと客席との距離がないのでマイクから3mも離れていない。が、後ろを振り返ると立ち見席は後ろの3分の2が空いていた……。他のバンドの時は満席だったことを考えるとやっぱりマイナーなのか?
 始めはサウンドチェックがしばらく続いた。木製の椅子と小さな花の柄が付いた白い肩掛けベルトのギターが登場し、あれに座って弾くのか〜と期待が深まる。
 そして潮音嬢登場。髪型は焦茶色のストレートを胸の辺りまで、前髪を眉毛の下で真っ直ぐに揃えている。左耳の周りに白っぽい耳飾りが見えた。朱赤色の膝丈ワンピースに白いサンダルを履いている(語彙が少ないのでこれ以上は文字にできない)。客席の女の子から「かわいー!」という声が次々飛んでいた。(全くその通りだが思うに留めた。)睡眠不足・日差し・食料不足と相俟って、演奏が始まる前から脈が上がって気絶しそうだった。思わず往年のグループサウンズの“失神バンド”を連想した。
 今回のセットリスト(曲目リスト)を。

1 知らない顔
2 朝の賛歌
3 ツバメの唄
4 鏡の中の絵描き
5 かたち
6 緑のアーチ
7 インディアン・スミレ
8 裸の王様

という約40分。バックバンドはドラムス兼パーカッション、ギター兼バンジョー、エレキチェロ(っていうのか?)というシンプルな編成だった。
 彼女が歌っているとき、太陽が眩しかったのか何度か辛そうな表情をすることがあって気になった。右膝からも白い包帯がちらりと見えたし。でも曲が終わったときちょっと照れ笑いしたり、『鏡の中の絵描き』では間奏で取っ手付きの鈴を振りながら小さく踊ったり(何故かこれがとても好き)、メンバー紹介は威勢がいいのに裏声だったりと相変わらず目と耳が離せなかった。なんか健気なんですよね。曲にすごくのって歌っているようには見えないけど、落ち着いて真っ直ぐ声を飛ばすように歌っている所がよい。
 今回は曲間のゆるいトークがあまりなく残念。「湯川潮音といいます。今日はいい天気。この日の為にビールをしばらく我慢して、このあとたっぷり楽しみたいと思います」というようなことを言っていてあたたかい笑いを貰っていた(笑)。
 好きな歌手を間近で観て生の歌を聴くことができるのはとても贅沢なことでこの上ない至福のひとときだった。終演後、飲むつもりはなかったのにビールを買って飲んだ。なんか、“初夏だ一番! 湯川潮音まつり”(←ドラえもんかい!)という気分だった。

 潮音嬢のライヴ中、一列前にいた自分より若そうな人が肩からMF一眼の名機「ニコンF」(ニコンの初代一眼レフ・1959〜1974)をぶら下げていて驚いた。その隣には自分と同じ機種の「NewFM2」を持ってる人が。会場ではどういうわけかフィルムのMF一眼レフを持っている人がデジカメの人と同じぐらいいて、黒いFM2使いが見ただけで4人もいた(男女同数)。F3やFM10の人もいた……。自分がニコン使いだからそう見えたかも知れないが、ニコンの比率が高かったような気がする。メーカーを問わず、1960〜70年代の古いカメラを持っている人も。何でこの時代に普通の若い人がフィルムカメラを使うの? と思ったが、音楽が好きな人ってそういうもんなのでしょうか? 名古屋の街中ではMF一眼レフを持ってる人なんて見かけないのに。
 自分も会場ではNewFM2を肩から掛けて移動していたからか、FM10使いの人にライヴを聴いている姿を撮影された。被写体になるのは全く苦じゃないので気付かない振りをして差し上げた。その人は会場の様子をバシバシ撮っていた。よっぽど写真が好きなんだろうな。
 帰りの電車で偶然その人と同じ車輌に乗り合わせ、FM10にブロアーをかけ、布で丁寧に手入れしている様子を見た。カメラ本体も付属するズームレンズもとても安いものなのに、道具を大切に使っているという姿がとても好印象だった。話しかけてみればよかったな。

 ……というわけで、とても充実した思い出深い一日になった。今回は一人で行ったのだが、やっぱりあの空間を共有できる人がいるともっと楽しそうだ。来年も(湯川潮音さんが来れば)行くつもりなので、もし一緒に行ってくださる方がいましたらご連絡ください。

→ライヴ公式サイト

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