2007.11.3(土祝) 早稲田祭2007 湯川潮音コンサート 待ちに待った潮音嬢の早稲田大学学園祭コンサート。地下鉄で駅に着くと既にそこから人がごった返していて、その列についていくと自然に大学の前へ着いた。学内はもっと人だらけで歩くだけでも大変だが、母校の学園祭の何十倍も規模が大きく、若者で溢れていて、お金がかかっていた(さすが私立大手だ)。本当は色々な催しや食べ物も楽しみたいところだが、まず主目的であるコンサート会場へ。地下鉄から見て一番奥にある15号館の101教室。 早稲田大学北側から学内を望む(右の建物が15号館) 15号館に掲示されていた手作りポスター 開場40分前に着いたら当日券売場に係の学生さんと観客らしき人が何人か。あまりに早過ぎたようなのでしばらくその辺を散策して戻ると入口付近に数人集まっていたのでそこで待機。暇なので客層を見ていたが、女性が多いようで、学園祭ということもあって20代らしき人が圧倒的だが40〜50代と行った人もちらほらいる。潮音嬢のような服装や髪型をした女の子が何人かいて微笑ましかった。栗色のふわふわなロングや後ろ髪を小さく“お団子”にした娘[こ]を見ては一瞬「本人!?」と思ってしまった。 係に人が準備のため会場の扉を開放すると、500人は入れそうなとても広い講義室。下りになった大部屋にズラーっと奥まで机が並んでいて、小さく教壇……もといステージが見える。机の上には謎の黒い正四面体が。パンフレットだろうか。会場を見て既に緊張がピークに(観客が緊張せんでもよいが)。頭に血が集中するのが判った。自分でも(大丈夫か?)と思った。 14時。会場時刻になり席の整理が始まる。“湯川潮音の”列ということが係の人の案内や掲示から判らず不安なまま待つ。主宰は学生さんだから不十分は仕方がないか。自分自身そうやって許してもらったことがあるから順番だ。……30分ぐらいかかってようやく入場できた。80番台だったのに前から3列目のど真ん中の席が空いていて座れた。ラッキー! 隣に気を遣う狭い席が懐かしい。そして開演の時をひたすら待つ。先の黒い正四面体はやはりパンフレットだった。両面オフセット印刷の凝った作り。さすが早稲田だ(笑)。多分貴重なものになると思うので、“所宝”(家宝になぞらえ、亮月製作所の宝という意味)にしよう。 正四面体のパンフレット ……15時10分頃、会場が真っ暗になりどよめく。潮音嬢とバンドメンバーがステージ下手[しもて]の扉からさり気なく入ってきた。そして照明が当たる。今回のバンドはアコーディオン(初登場らしい)、ギター+ウクレレ+パーカッション(いつものアフロの人)、ユーフォニウムの3人。潮音嬢はふわふわとした栗色のロングヘアにブルーグレーのひらひらした短い袖の服、極太で茶色いペルシャ絨毯のような模様のベルトに真っ白で裾にラインが入った膝丈のスカート、灰色のタイツ(靴は見えず)という出で立ち。尚、右耳には胸の辺りまで届く例の白いレースの耳飾り。池上本門寺の時は米粒のような小ささでしか見えなかったので、表情がとてもよく判る席で嬉しい。 「それでは、授業を始めます。」と早速笑いをとった“潮音先生”であった。今回は教室だけあって机があるので聴講(メモ)がばっちり出来る。セットリスト(曲目)を、潮音嬢の“講議”の内容を交えながら書いてみる。 1 風よ吹かないで PAの片チャンネルの調子が悪く音が出なくなって心配したが、美声により直ってしまった(笑)。 「半年ぐらい前に主催者である「山羊のまくら」から企画書を頂き、表紙に描いてあったフンをぽろぽろ出している山羊の絵(実はそばがらが出ている山羊の枕)が気になって引き受けました。」 2 木の葉のように 『ギンガム〜』では池上本門寺の時のように歩きながらカウベルをコンコン鳴らして歌う潮音嬢。終曲の「ジャン、ジャン、ジャン」ではばちで指揮をする。(あんな娘が欲しー!)とまた思ってしまった(笑)。 4 さよならの扉 潮音嬢の歌の中では3本の指に入る好きな作品。個人的に「さよなら」という言葉に弱いのと、メジャー調の明るい曲調の中にふらっとマイナーコードが入る「ふと垣間見える二面性」がこの上なく好み。潮音嬢の歌声もよく伸びていたと思う。あと、パーカッションの人があちこちにある楽器をせわしなく叩いていたのが面白かった。 5 かたち 高い声が心地よく、吸い込まれそうになる逸曲。このコンサート中、潮音嬢と何度も眼が合ったと確信している(と、書きたくなるほど)。曲が終わるごとに、真剣な表情が満面の笑みに変わるのが人間くさくて可愛らしい。 「高校の学園祭で、人前で初めて歌を歌いました。映画『リンダリンダリンダ』で歌った歌と同じだったのですが、出番の前に土屋アンナが歌っていて、彼女は背が高かったので自分の出番になってマイクスタンドを直していたらお客さんに笑われたのがトラウマです。」その話でまた笑いをとってしまっていた。 7 明日になれば 潮音嬢には珍しく(?)すごく前向きなメッセージソング。曲調も素直で広がり感がある爽やかなもので、松山千春の『大空と大地の中で』を連想してしまった。 「日本には若者がこんなに沢山いたんだとびっくりしました。普段のライヴは若い人は多くないと思います。」バンドメンバー(パーカッションの人)に「一段と老けて見えますね」と言ってしまいウケていた。メンバー紹介になり、ユーフォニウムの人を紹介したら黄色い声が挙がったがサクラだということになってしまい、「そういう事はいけませんよ〜」と潮音嬢に咎められ、会場がまた笑いに包まれた。 8 This Little Bird(可愛い小鳥・カヴァー曲) ブランデーでも飲みたくなるしみじみとした歌。『人間みな兄弟』(サントリーオールドのCMソング「♪ダンダンディダン シュビダデ〜」)や『小さなスナック』(パープル・シャドウズ/1968)を思い起こさせた。こういう歌も優しげに歌いこなしてしまうのね。 9 長い冬 「今日はグッズも売っています。最近できた特大缶バッヂが可愛いのでプレゼントに買っていってください。」とちゃっかり宣伝。 10 When She Loved Me(映画『トイストーリー』挿入歌) 「子供の頃からライヴを観ていた遠藤健司さんが、ライヴでアンプを背負って登場する姿に『あの人は王様に違いない』と思っていました。父がバンド『王様』のバックバンドをやっていてよく王様から電話がかかってきました。『もしもし、王様ですけど』って(会場笑い)。それでなぜかエンケンさんとリンクして王様だと思い込んでいた……というのが『裸の王様』という曲が生まれたきっかけ」……ってホントに? 11 裸の王様 「週1回ぐらいやらせてもらえませんか?(会場、拍手)三角のはおにぎりかと思って、おにぎり付きライヴかと思っていました。」ぜひ1週間に1回やってほしい! 今日の潮音嬢、トークも絶好調のようだ(笑)。でも『最後の列車』の出だしに失敗してた。 12 最後の列車〜メンバー紹介 終わりはやっぱりこの歌。ユーフォニウムで汽車の音を出したり、パーカッションの人がせわしない中で「♪見られるっ ことがっ! チーン!」と難しい位置にあるトライアングルを鳴らしたりするのが面白かった。メンバー紹介では手拍子が起こり、とてもいい雰囲気で締めくくった。 拍手が鳴りやまず、アンコールで潮音嬢だけ再登場。一人で行けと言われたらしく「どうしよう……」と不安そうだが「九段会館でライヴやります! 武道館でYUIとかやってくれるとちょうどいいのですけれど」と言ってウケていた。最後まで毒舌が冴えていて嬉しかった(?)。 アンコール 緑のアーチ ギターの弾き語り、ピンスポットが当たる中でエコーもいっぱいにしっとりと。今日はバンドが3人だったからか潮音嬢の弾き語りが多かった。アンコールの後は意外とあっさり終わってしまったが、余韻にふけったりアンケートを書いたりする人が多く(私もその中の一人)、評判は良さそうだった。係の人に断って看板の写真を撮らせて頂いた。感想も直接伝えることができた。 会場の出入口に掲げてあった大看板と手作り感満載の貼り紙 やや年輩の方が「70年代みたいだった」と言っているのが聞こえた。そう思っているのは私だけではなかったことに何だか安心した。そして潮音嬢が「久し振りに若い人を沢山見た」のに妙に納得してしまった。私は20代だが音楽の好みはかなり古いので、湯川潮音という音楽家の存在はとても貴重だと思うし、自分の音楽の好みにこれ以上合う若手は現れないのではないかと思う事がよくある。今回も湯川潮音に感謝。 |