2008.3.23(日) 弦とわたしツアー 名古屋クラブクアトロ

 2008年最初の名古屋ライヴは1年前と同じクラブクアトロにて。「弦とわたしツアー」ということで、今までのバンドとはまた違う趣のものを期待して会場に向かった。

 開場時刻に遅れて入場したが、何故かステージに近い方がやや空いていて、開場30分後にもかかわらず前から3列目のほぼ中央に立つことができた(全席立ち見だった)。

 クラシック音楽が流れる中で開演を待つ。いつものように潮音嬢の好きな音楽が流れる中で“士気を高める”ような雰囲気ではなく、落ち着いてゆったりと始まりの時を待った。

 18時、潮音嬢がステージへ。栗色のウェーブがかった長い髪(前髪は分けていない)、右耳には白い花びらのような耳飾り、胸から上は肩紐だけの(と書くと何だかやらしいが)薄い紺色のフレアのワンピース、白いラインの入った灰色っぽいタイツ、白いハイヒールという出で立ち。ふわふわだ(笑)。……拍手が起こってまもなく歌が始まった。

1 風よ吹かないで(CD未収録)

2 さよならの扉
 ……悲しいことがあった時は2ビートの曲を作る癖があるらしい。

3 雪のワルツ
 ……最近『男はつらいよ』にはまっていて、「リリー」(浅丘ルリ子)のように色っぽく歌う女になりたいと思ったらしい。この歌、普段よりキーがかなり高く少し辛そうだった。ギターで弾けるスケールに合わせた?

4 朝が終わる前の花(CD未収録)
 ……友人eriのブランド「mother」のために作ったそうだ。テーマは“エロとセクシー”らしい(笑)。そんな感じではないような穏やかな曲調だったと思うが、歌詞がそうだったのかも。

5 巻き貝とわたし(CD未収録)
 ……会場近くの久屋大通で祭をやっていて、牡蠣を買い、そのままライヴ会場まで持っていこうとしたら店のおっちゃんに止められたらしい。
 荒井由実のような雰囲気の曲だったと思う。ここまで弾き語りのみで他の伴奏なし。贅沢だ!

6 3:15
 ……前奏で潮音嬢がドラムを叩き、サンプリングしたものをループさせていた。ドラムをぎこちなく叩く着飾った潮音嬢が可愛らしいというか、シュールだった。

7 シェルブールの雨(CD未収録)
 ……好きな映画に『シェルブールの雨傘』という作品があり、その映画のエンディングの続きを空想して書いたものらしい。

8 蝋燭を灯して
9 ハーレム
 ……CDでは危うさや怖さを感じる歌い方だったが、こういった割と以前の歌でさえ今回は透明度が増しているように感じた。でもストリングス(バイオリン×2、ビオラ、コントラバス)の伴奏がスリリングでよかった。

10 逆上がりの国
 ……逆上がりが苦手だったからできた曲(?)。本当かい!?

 潮音嬢は「東京生まれ・名古屋大好きっ子」だそうで、「長者町繊維街」が特に好きらしい。でも行ったことはなく、どんな街かも知らないのだとか。以前のライヴでも同じようなことを言ってたな。

11 渡り鳥の3つのトラッド
 ……個人的に名曲だと思っているので、初めてライヴで聴けてぞくっとするほど感動した。この曲も弾き語りとストリングスの絡みがすばらしかった。

12 見つめてごらん(CD未収録)
13 秘密(CD未収録)
14 明日になれば(CD未収録)
 ……「7月、初夏にアルバムを出せると思います」と潮音嬢。その中から3曲。タイトル紹介はなかった。
 “聖と邪を兼ね備えている”ような今までの印象が殆ど払拭され、見てはいけないものを見せられてしまったようなぎりぎりまで迫ってくるような感覚ではなかった。フォークソングにも通じるようなやさしい曲調で、純粋さを極限まで高めたような印象だった。今の潮音嬢にはよく合っているが、彼女の片面しか見えなくなってしまったようで何だか寂しい。とてもいい楽曲だったけど。

15 ツバメの唄
 ……湯川潮音にはまるきっかけになった歌。ストリングスにバンジョーが加わりおなじみの布陣だ。様々な奏法が使われ、弦楽器の魅力が全開。

16 鏡の中の絵描き
 ……これも大好きな歌。間奏では例の鈴を持ってステージを練り歩きながら踊る。何故かこれがたまらなく好きなのだ。

 ここで新しいアルバムのプロデュースから演奏にまで携わった“熊さん”登場。はるばるロンドンから、福岡と名古屋だけ。笑顔が素敵なおじさまだが、潮音嬢とはとても仲が良さそう。

17 恋は月をめざして(Voyage of the Moon)(カバー曲)

En1 キャロル(CD未収録)

 アンコールで再登場。特大缶バッヂ(スキーをしている絵)の宣伝、5月に大須で小部屋ライヴがある(!)という告知があり、アンコールは何を歌おうということで「笑っていいとも!」のように(?)はがきを取り出してその中から『カントリーロード』を選んだ。手拍子が起こり、それが裏拍になるように歌い始める潮音嬢。さすがだ。個人的に思い入れのある歌なので嬉しかった。
 途中で、一人で歌っているのに耐えられなくなったのか「誰か助けて」と熊さんとバンジョーの人を呼んで加わった。何だか某ジブリ映画のシーンを彷佛とさせた。

En2 雫のカーテン
 ……フラメンコのようなアイリッシュのような不思議な歌で元気よく締めくくった。今回の潮音嬢、踊りが多かったな。振りも今までよりも大きかったように思う。それがなんだか健気に見えてしまうのだが。

 潮音嬢のライヴは毎回編曲が大きく変わって楽しませてくれるので、CDを聴いて気に入ったらライヴも行くべきだと思うのだが、今回は弦楽器が主題になっているだけあって割と落ち着いた雰囲気で、立ち見というよりは座ってじっくり聴きたかった。
 新曲は意外とあっさりしていて優等生的な作りだったように思う。個人的には一癖あって明暗が同居するような感じが好きだったのだが。アルバムではどうなるか、大いに期待したいところだ。

 終演後に特設グッズ売場で、長らく入手困難になっていたインディーズ時代の名盤『逆上がりの国』を購入。特典として『シルエット』のPVが収録されたDVDがついてきた! まあ、『逆上がり〜』は元々の紙ジャケット版を某オークションで苦労して落札したのを持っているので、DVD欲しさだった訳だが。でもこうしてこのアルバムが多くの人に聴いてもらえるようになったのはとても嬉しいことだ。

 今回の客層は男女半々ぐらい。最前列には年輩の男性もいて、年齢層は幅広そうだった。全体に穏やかそうな人の集まりで、女の子も(湯川好きなんやろうな〜)と何となく判る清楚な感じのお嬢さんが多かった。ハチクロの「花本はぐみ」そのものみたいな格好の小さい子(背が)もいた。映画から出てきたような似姿にびっくりした。

 湯川慣れ(?)したのか、今までよりも気分が高揚するようなものではなかったが、やはりひと味違う手の込んだ音楽会に満足して会場を後にしたのであった。

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