KM16
●時空ツアーズ/初音ミク(その1)
2013年1月に発売された、声優・竹達彩奈さんの3枚目のシングル『時空ツアーズ』。筒美京平作曲ということもあり良質なポップスで、私にとって非常にぐっと来る作品だったので、あまりに好き過ぎて想いのやり場に困っていました。
それで曲を耳コピし、イラストを付けて動画にすることにしました。
4月から忙しくなることが分かっていたので、制作に使える時間は3ヶ月弱。自分の時間の殆どを注ぎ込みました。この3ヶ月間は本当に色々あり、何となく「卒業制作」という言葉がいつも頭の中にありました。イラスト描きもこういう趣味も辞めるつもりはありませんが(笑)。
また、亮月製作所がイラストと MIDI 音楽を活動の軸として発足してから2013年で15年経つので、ささやかではありますが「亮月製作所15周年記念事業」という側面もありました。
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2000年以降の歌を耳コピするのは初めての試みで、生演奏に打ち込みの効果音が散りばめられた今時の複雑な編曲を再現するのは私の実力では無理だと思いましたが、何としても再現したいという思いに駆られ、1ヶ月かけて取り組みました。
音作りは困難を極めました。高解像度と言われる AKG のリファレンスヘッドフォン「K701」を以てしても聴き取るのが難しい音があったり、GarageBand では2音を超えるピッチベンドが不可能だったり、原曲に似た効果音が打ち込みで再現できなかったので自力で音を出して録音した素材を加工して作ったり、名古屋駅に出掛けて雑踏の音を収録したり、手拍子も自分のものを使ったり……。工夫して問題点を少しずつ解決するのがいつの間にか楽しくなり、思い出深い作品になっていました。
1月15日制作開始、2月11日にほぼ完成。
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次はイラストです。今回は自分の記念の為に特大で。
竹達彩奈さんのジャケット写真を初音ミクで再現してみました。
竹達さんといえば『けいおん!』の中野梓ということで、絵柄は2013年の年賀状に引き続き“堀口シフト”を敷きました。
アニメーションの絵柄は工業製品と同じように、同じ品質のものを複数の人間が大量生産することを前提として、絵柄に論理的な設計がなされているのではないか……と私は考え、堀口氏のキャラクターデザインの特徴を読み取り、それを私の絵柄に嵌め込むような形で作画しました。「このパーツはこの位置にこういう形で描かれる」というような感じです。
落書き帳に大雑把に描き始めて少しずつ細部を詰め、2日で線画が完成。自分にしては驚くほど速い&可愛い!(笑)
この線画を彩色する訳ですが、ここで彩色用の紙にトレースする時に絵としてかなり劣化することが分かっていたので、この線画をできる限り忠実に写す方法を探り当て、彩色に臨みました。何故今までやろうと思わなかったのか不思議なほど非常にオーソドックスな方法です。
コピックで彩色して完成。こちらも2日で完了。
上手くはないかも知れませんが、イラストを描きたいと思い立った20年前に全く描けなかった者としてはこれでやっと地平線に立てた、という思いです。実に感慨深いです。
夜明けの街並みのような背景はぼかすので大雑把に30分ほどで。
最後に背景とキャラを合成し、ジャケット写真のように文字を載せます。和文書体はタイプラボさんの「セプテンバーL」。イラストの下にある黒い部分に載せる歌詞の字幕は見易さを考慮して「セプテンバーM」にしました。欧文書体はそのものが見付からず、雰囲気が一番近いもので代用しました。
これで冒頭に掲載した作品が完成です!
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タイトルもできる限り再現しました。和文書体は「DFP綜藝体」と分かっていましたが、写植ファンサイトなので敢えて写研の「創挙蘭E」を手動写植機で印字して使いました。欧文書体はオリジナルに近いものが見付からずかなり妥協しました(泣)。
勢い余って「竹達彩奈 時空ツアーズ」と印字してしまったの巻。現像して文字が現れた時に気付き、印画紙を替えて「初音ミク」と印字しました……。創挙蘭EのE欧文文字盤は持っていないので、メインプレート上の欧文を印字してスキャンしたものを Photoshop 上で詰めました。
こうして完成した『時空ツアーズ』の動画。愛着のある作品となりました。
あと3枚描いていますので、別途掲載します。
ラフ〜下絵〜作画:2013.2.16、17
彩色:2013.3.7、10
画材:落描き帳・上質紙・Dr. GRIP シャープペンシル・フジカラーイルミネータープロ・コピックスケッチ・三菱Uni色鉛筆・Adobe Photoshop CS3
書体:創挙蘭E(写研)、セプテンバーL/M(タイプラボ)、Falstaff、Snell Roundhand Bold Script
写植の印字:亮月写植室
→イラスト制作部・2013年
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