KM21
●2014年賀状/辰木桂/『神戸在住』より
2013年、友人に薦められて見事にはまってしまった漫画『神戸在住』。人に秘められた優しさや悲しみに触れる世界観に心惹かれました。
この年は身の回りの環境が大きく変わり、考え方や行動の傾向も覆され、自分が本当はどうしたいのか、何を大切に思っているかを徐々にはっきりと認識していくような一年でした。そこに寄り添っていたのがこの作品であり、本作の主人公である“かつらっち”こと辰木桂に深く感情移入しながらこの作品に心酔していました。
そこで今回の年賀状は、桂を描くことにしました。
『神戸在住』のコミックス5巻カバーの見返しと第40話の桂が成人式で着ている着物を参考にしています。壺と活け花は6巻第50話に登場した、辰木家で活けているという松竹梅の正月飾りです。
着物も壺も、桂の亡き祖母が大切にしてきたものです。もし天から見ることができたのなら、この姿の桂や壺の活け花をどう思っただろうかと想像しながら。そういった背景を秘めつつ、今回はテーマやキャッチコピーを定めずストレートに新年の挨拶を表現しました。
この漫画の素朴な絵柄に合わせて“堀口シフト”(『けいおん!』の絵柄を参考にした顔の描き方)は解除しました。時間がなかったためざっくり描いて彩色していますが、本当はもっと細かく描いてあげたかった。着物の柄や手の表情、色の深さに拘りたかったです。
写植は亮月写植室による自家印字です。和風を意識した絵柄に合うよう控えめな書体を選びました。大見出しは秀英明朝(SHM)一択でした。蛇の目記号「◉」(記号SN-1-9)は文字盤がすぐに見付からず、止むなく「記号SA-1-8」を使用しました。
ほぼ左右対称の絵柄なので、左右に大見出しを配置して重さのバランスを取り、中央に小さく添えた言葉と紅色の丸で紙面を引き締めたつもりです。
そうすると上半分が重くなるので、薄紅色の網を絨毯のように敷き、デザイン上目立たない方がよい注釈を白抜きで載せました。
今回の印字は写植用の印画紙ではなく黒白写真用の印画紙を使用しました。
制作時に出ていた時点での研究結果では多階調の「フジブロバリグレードAM」の濃度が写植用の印画紙とほぼ同じだったため印字に使用しましたが、大Q数では文字の輪郭が階調を持っていてぼけてしまいます。そのため、単階調かつ硬調の印画紙を使用するのが望ましいです。(→写植レポート・写真用印画紙を写植に使う)
ラフ~下絵~作画:2013.12.26~30
彩色:2013.12.31
画材:落描き帳・上質紙・Dr. GRIP シャープペンシル・コピックスケッチ・三菱Uni色鉛筆・Adobe Photoshop CS3
書体:秀英明朝 SHM・石井中明朝体OKL・石井中ゴシック体KL+欧文E58-24(いずれも写研)
写植の印字:亮月写植室
→イラスト制作部・2013年
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