亮月写植室

ミニレポ写真用印画紙を写植に使う
2013.12.25(水)
於:亮月写植室



注意

 本記事は筆者が実験した結果をレポートしたもので、業務に使用できる品質を保証するものではありません。本記事に従い作業を行って生じた損害について、亮月写植室はその責を負いかねます。あらかじめご了承いただきますようお願いいたします。

(※2014.2.6追記)他の写植機ユーザー様からは、写真用印画紙について、「SPICAでは濃度が上がらない」「当方の現像環境(自動現像機をご使用)では鮮明に出ない」といった報告も寄せられています。亮月写植室には自動現像機がないため皿現像で仕上げています。本稿はすべての写植機や現像の環境に当てはまるものではなく、普遍的な実験結果ではないことをお知らせしておかなければなりません。

●写植用印画紙、生産終了

 2013年9月、富士フイルムが写植用印画紙「富士写植ペーパー」の生産終了を発表しました。ラストオーダーは同年10月ということで、現在も印字を続けている写植業者が多数発注したとのことです。筆者も例外ではありませんでした。
 同年12月、東京の表参道画廊で開催された写植展「moji moji Party No.5 写植讃歌」では、この写植用印画紙の生産終了が話題となり、現役で写植業を営まれている方からも業務の存続を危ぶむ声が聞かれるなど、写真植字はその歴史上最大の危機的状況に陥りました。

●代替製品はないか?

 筆者が手動写植機を導入した2011年にも印画紙の価格改定(値上げ)があり、今後写植用印画紙を入手することが難しくなるだろうことを考え、写真用の印画紙を使用することができないか検討した時期がありました。しかし、写植機を導入したばかりで整備が万全ではなく、薄くしか印字できないなど実用とはほど遠い状況でした。
 しかしながら2013年9月、上記生産終了の知らせを聞き、改めて個人的に写真用印画紙での印字を試みていました。

フジブロWP FM4での写植印字

 印画紙は富士フイルムの写真用黒白印画紙「フジブロWP FM4」です。上の写真は通常の光量(筆者の写植機では光源ダイヤル65ノッチ)と約2割増(80ノッチ)での印字を行った結果です。後者では通常の写植用印画紙と同等の印字結果を得ることができました。
 従来とはある程度異なる扱いとはなるものの、写真植字という技術が途絶えることはないということが証明されました。

●写真用印画紙の選定

 そこで今回、写植の印字に最適な写真用印画紙を探るべくカメラ量販店に出掛け、安価かつ容易に入手できるものを購入して同条件で印字してみました。(そのため、「イルフォード」等の海外製品は除外しています。悪しからずご了承ください。)

院時試験に使用した写真用印画紙

 購入したのは、いずれも富士フイルムの写真用黒白印画紙「フジブロWP」シリーズです。
・FM3(光沢・硬調)
・FM4(光沢・特別硬調)
・KM4(微光沢・特別硬調)
・VARIGRADE AM(半光沢・多階調)
 写植文字は白と黒の極端な高コントラストと解釈できることから硬調の印画紙を候補とし、比較用として多階調のものも準備しました。光沢とそうではないものも揃えました。以上により、代表として4種類の印画紙を選定しました。

●印字の濃度について

 12月某日、それぞれの印画紙で印字を試みました。結果は以下の画像の通りです。画像をクリックすると別窓にて拡大表示します。画像の階調はスキャン時のままです。印字ミスと日付を削除修正した以外は画像を加工していません。
 写植機は PAVO-JV、シャッター回数は1回、現像はパピトール4倍稀釈26℃、2分間です。通常亮月写植室で行う露光・現像の条件と同一です。
 印画紙の数字は光源ダイヤルのノッチ数、下半分のデステップ文字盤の印字のうち「2SH」とあるものは65ノッチでシャッター2回の重ね印字です。

富士写植ペーパーPL100WP
富士写植ペーパー PL100WP(基準)

フジブロWP FM3フジブロWP FM4
フジブロWP FM3 ・ フジブロWP FM4

フジブロWP KM4フジブロバリグレードWP AM
フジブロWP KM4 ・ フジブロ VARIGRADE WP AM

 いずれも印字は可能でした! 硬調の度合いや多階調かどうかによる大きな差はありませんでした。
 濃度は濃い順に(数値は筆者の写植機での推定適正ノッチ数)
・フジブロ VARIGRADE AM(<65)
・富士写植ペーパー(65=基準)
・フジブロ WP FM3(70)
・フジブロ WP KM4(75)
・フジブロ WP FM4(75)
でした。画像は濃い目に階調が出ていますが、目視ではFMとKMの65ノッチの文字はやや薄く印字されていました。

 つまり、「フジブロ VARIGRADE WP AM」であれば、従来の「富士写植ペーパー PL100WP」と同等の光源ノッチ数・現像条件で印字が可能であることが分かりました。他の印画紙でもノッチ数を上げるかシャッター回数を増やせば同等の品質を確保することができます。

●印画紙の光沢について

写真用印画紙の光沢
左からFM3、FM4、AM、KM4

 写真用印画紙には光沢のものとそうではないものがあり、FM系統はつやつやの光沢、AMは絹目のような半光沢、KM系統は僅かに裏表の判別ができる程度の微光沢です。写植用の印画紙の光沢に最も近いのはKM、次点はAMでした。

●【2014.2.6追記】印字物のぼけ足について

 筆者が写真用印画紙を写植の印字に実用し始めて2ヶ月。印字を依頼されたりサイトの素材に使ったりしているうちに、あることに気付きました。
フジブロ VARIGRADE WP AM って、大Q数での印字がぼけている気がする……。
 2013年12月に行った本稿を書くための実験では、黒々とした文字が現れたことばかりに気を取られ、写真植字としての品質や精度が保たれているかまでは充分に検証していなかったのです。

 そこで今回、ぼけ足が感じられる多階調印画紙「フジブロ VARIGRADE WP AM」と、単階調印画紙の代表として「フジブロ WP KM4」、そして写植用の「富士写植ペーパー PL100WP」で印字した文字を可能な限り高解像度でスキャンし、ぼけ足の出具合を検証してみました。
 スキャナーは EPSON GT-8700F、取り込み解像度1600dpi、色調補正やシャープネスは一切かけていません。旧い機器ですが分解能が充分あることを示すために埃等の汚れも修整していません。下の3つの画像はそれぞれ幅600pixelsに縮小したものです。画像をクリックすると取り込んだままの画像が別窓で表示されます。

フジブロ VARIGRADE WP AM 拡大

フジブロ WP KM4 拡大

富士写植ペーパー PL100WP

 ぼけ足の大きさが、AM→KM4→PL100WP となっていることがお分かりいただけると思います。50Q以下では大差がないように見えますが、100Qでは特に顕著です。
 但し、肉眼ではこれほどぼけぼけには見えません。「富士写植ペーパー PL100WP」の100Qは私の眼ではキレキレと言ってもいいほど鮮明です。コントラストの高い白黒のものに対するスキャナーのダイナミックレンジ(最小値と最大値の比率。大雑把に言って感度の幅)が人間の視覚よりも広いのか、あるいは他の原因なのかは分かりません。
 いずれにしても、多階調の「フジブロ VARIGRADE WP AM」は大Q数での鮮明な印字には向かず、単階調印画紙を使用した方がよいということが示されました。写植用印画紙と近い風合いで光沢の少ない「フジブロ WP KM」シリーズがよいでしょう。

●どの写真用黒白印画紙が最適か?

 今回の実験では、写植用印画紙の代替として最も適する写真用黒白印画紙は「フジブロ VARIGRADE WP AM」単階調印画紙である(※2014.2.6修正)が他の写真用印画紙も使用可能、と結論づけられました。
 業務でこれらの印画紙をご使用になる場合は、必ず試し印字を行って適正ノッチ数・シャッター回数・現像条件をご確認ください。(なお、剝離修正が可能かは試していません。)
 簡単な実験である上、実験を行っていない写真用印画紙はまだあります。あくまで目安としてお役に立てていただけましたら幸いです。

【完】


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