暗箱・ドラム/マガジン
【あんばこ・どらむ/まがじん】


マガジン
PAVO-JVのマガジン

●感材を収納する箱

 写植の文字は印画紙やフィルムなどの感材に印字されますが、写真の原理を用いているため、不必要な光が当たってはいけません。光が当たることを感光といいますが、不必要な感光を「かぶり」といって、かぶった感材を現像すると、光が当たった部分が黒く変色してしまいます。

かぶった印画紙
かぶってしまった印画紙
この印画紙の場合、現像中に暗室のドアを開けたことが原因だった。現像液に浸した印画紙がみるみる黒くなっていった。

 かぶりを防ぐため、感材は光を遮断した箱状のものに入れます。写植機の世代によってその箱は異なりますが、初期の機種は「暗箱」と「ドラム」、SPICA型やPAVO型では「マガジン」といいます。どちらも光を遮断した箱の中に円筒形のものがあり、そこへ感材を巻き付けるようになっています。

SK-3RYの暗箱とドラム
SK-3RYの暗箱とドラム(写研『写真植字ハンドブック SK3-RY 操作篇』p.22/1972年より)

 SK型以前の機種(SK-4系統を除く)の場合、上図のように、本体の点示板の裏に暗箱が固定されていて、そこにドラムを装着するようになっています。ドラムに感材を巻き付け、その上から布製のドラムカバーを掛けて光を遮断します。そのようにしたドラムを暗箱に装着し、ドラムカバーのフックを暗箱のテンションローラーに引っ掛け、蓋を閉めて光を遮断するようになっています。ドラムカバーはぜんまいの力で自動的に巻き取られ、暗箱内で印画紙が露出するようになっています。

ドラムの断面図
ドラムの断面図写真植字機研究所『写真植字ハンドブック SK3-RY 調整・保守篇』p.37/1962年より

 SK-4系統、SPICA型、PAVO型では、暗箱とドラムを一体化したようなマガジン方式が採用されました。暗室でマガジンに感材を装塡し、それを写植機に装着するだけでよくなったため、明室でのかぶりを気にすることがなくなりました。

SPICA-QDのマガジン
SPICA-QDのマガジンに紙を装填したところ
マガジン内に円筒状のドラムがあり、そこへ印画紙を巻き付ける。
目盛りは印画紙を挟んで止める金具。
※印画紙を光に晒すと感光してしまうため、写真ではコピー用紙を使用しています。

 写植機に装着するとマガジンに設けられたスリットが開き、印字する一瞬だけ文字盤やレンズから導かれてきた光を通し、文字の形がマガジン内の感材に像を結ぶ(文字の形が感光する)ようになっています。

写植機のスリット
PAVO-JV 本体側のスリットを開けたところ
写植機にマガジンを装着するとスリットが開き、写真のように写植機とマガジンが素通しとなる。文字盤やレンズを通ってきた光は45°のミラーで直角に向きを変え、マガジン内の印画紙に文字の像を結ぶ。
写真では非常に見にくいが、ミラーはアルミダイキャストの頑丈な台に据えられている。左右方向の可動式で、左右の送りに対応した動きをする。

●暗箱(ドラム)・マガジンの搭載状況

マガジン
(最大508×610mm)
PAVO-B、-B2(モデル60)、-BL60
マガジン
(最大508×432mm)
PAVO-B2(モデル40)、-BL40
マガジン
(最大305×305mm)
PAVO-9、-10、-JL、-JV、-K2、-K3、-KL、-KS、-KV、-KVB、-KY
マガジン
(最大254×305mm)
PAVO-8、-J、-K、-JP
SPICA型全機種
ドラム
(最大260×320mm)
SK-3RY
マガジン
(最大230×280mm)
SK-4、-4E
不明
上記以外

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