文字の引力

1*思い立ったが吉日

 2007年5月27日。8時頃名古屋発の新幹線で東京へ。駅貼りのポスター、案内看板、電光掲示板など文字に溢れている。どこを見ても書体名を言ってしまう不思議な二人。車内でも、持ち寄った資料を見たり色々な書体について話したりと文字づくしで2時間弱はすぐに過ぎてしまった。


東海道新幹線の電光掲示板。
列車名(こだまなど)の書体が写研の「ゴナ」によく似ているという話題になった。

 10時頃東京着。迷路のような駅を彷徨い、地下鉄に乗って六本木へ。はじめはNORIさん提案の印刷博物館(飯田橋)へ行く予定だったが、筆者が夕べ見つけたJAGDA(日本グラフィックデザイナー協会:日本で唯一のグラフィックデザイナーの全国組織)のポスター展「日本のグラフィックデザイン」も興味深かったのでそちらへ行かせていただくことになった。

 会場は地下鉄六本木駅に程近い「東京ミッドタウン」。駅を出ると近未来的な世界が広がって……という訳でもなく、車と人の密度が高い道路に飲食店などがひしめき合っているというどこか安心できる風景。そこを5分程歩くと突然真新しい角張った建築物が現れ、そこが東京ミッドタウンであることが判った。そこから外苑東通りを北へ見ると美しい並木が続いていて、何となく岐阜(市)の街並みを思い起こさせた。入口に黒いドーナツ型の石像(?)があり、その穴付近に佇んで写真を撮るのが定番なのか、同じことをする人が多くいて微笑ましかった。敷地の中へ進むと巨大な鉄骨屋根と植栽という異様な組み合わせが迎えてくれ、何だか「東京に来た!」という実感が湧いてくる(筆者は田舎者である)。

東京ミッドタウンの手前に「ジャグダ」のポスター ミッドタウンの建物入口前にある鉄骨屋根と植栽
左:東京ミッドタウン敷地入口と「ジャグダ」のポスター
右:入口を奥に進むとこんな不思議な世界

「日本のグラフィックデザイン」展は5階の「デザインハブ」で催されている。目印の黄色いポスターを見付けて会場内へ。会場はとても静かで人も殆どいなかったが、その分作品をじっくり鑑賞できた。平和を訴える作品、日本についての作品、環境についての作品など、グラフィックデザイナーが担う社会的な役割とその効果について、作者ごとに全く違う作風を通じてその多彩さと力強さを観た。原寸でそれらのポスターを観るのは初めてだった。

 NORIさんがJAGDA会員ということで、隣接する事務所に立ち寄る。今後のJAGDAについて熱く議論が交わされ(筆者は観ているだけだったが)、では奥の部屋でということになった。

 暫く話が続いている時だった。白いジャケットの男性が部屋に入って来られた。ここが控え室ということを耳にし、何かの講師の方だということは判ったのだが、グラフィックデザイナーの永井一正氏だと知ってとても驚いた(心の中で)。NORIさんと共に名刺の交換までしてしまう。「写植が好きで、写植ファンのサイトを運営しております、○○(本名)と申します。」「ほお〜、写植〜。」会話はこれだけだったが、その場で倒れそうなぐらい気分が昂揚した。頂いた名刺を見ると「株式会社日本デザインセンター 最高顧問」とあって、自分がこのような方と名刺交換してもよかったのかとさえ思った。

 更に幸運なことにJAGDAのご厚意で、午後から催される講演会「グラフィックデザインの未来」(受付終了)を立ち見で聴講させていただけることになった。永井氏はこの講演会の講師だったのだ。午後にまた伺う旨を伝え、食事に出掛けることにした。会場を出た所で「すごい!」と小さく跳ねてしまった。全く予想だにしなかった展開に二人は盛り上がり、ただならぬものを感じ始めていた。

 昼食もミッドタウンでと思ったが、順番待ちの行列ができていてなおかつ高い(笑)ので諦める。道を挟んで正面にある小さなオムライスの店(?)はとても空いていて気取らず、親切なお姉さん(ということにしておく)が迎えてくれる。オムライスの他、カレーなども1000円未満で食べられて美味しいのでとてもお薦めだ。


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