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 1996年が後半に差しかかったころ、“絵柄を一新する”として、新しいペンネームで描くことにした。実際には殆ど一新されていないような気がするが。今までのペンネームが恥ずかしいもの(チャチャダンス……)だったので、これからは長く使えるような漢字のものにしようと思い立った。「月」が好きなので、月がつく熟語を漢和辞典で探し回った。そこで見付けたのが……「亮月」。意味は「明るい月光」。これだ! と直感で思った。これだけでもよかったのだが、やはり“苗字”がないとサビシイということで、再び悩むことになった。

 上は引き出しから見つかったメモ(部分)で、苗字の案が書かれている(とても汚い字で恐縮です)。「光耀亮月」(こうようりょうげつ)と「桂林亮月」(けいりんりょうげつ)。前者は仰々しすぎるし、後者は中国の地名だったような気がするのでイメージとちょっと違う。そして行き詰まってしまった。……1週間くらい悩み、再びこのメモを見た時にぱっと思い付いた。「“桂光”だ!」つまりは、二つの案の折衷だったのだが。漢和辞典にも載っていないので、自分だけの苗字だ、と喜んだ(独特なものが好きなので、なおさらです)。やはり「月が光る」という意味である(と、勝手に熟語を作ってしまったのです)。ちなみに「桂」はかつら科の落葉高木で、月に生えているという想像上の木でもある。転じて、月そのものを表すようになったらしい。
 かくして、桂光亮月が誕生した。読みは決まっていなかったが、のちに「けいこうりょうげつ」とそのまま音読みすることにし、新しいスタートを切った。

 1枚目の作品(旧亮月1)は、旧桂光亮月としては最初のイラスト。描いた当時はペンネームが決まっていなかったが。なぜセーラー服(しかも母校の!)を着ているのかは、今となっては分からない。断じてそういう趣味があったわけではないが(苦笑)。……絵の内容について追求するのはこのあたりでやめておこう。シャープペンシルにノートというお馴染みの布陣だが、グラデーションが描けるようになるなど、多少は思うような絵が表現できるようになったようだ。

 次の作品(旧亮月7)は、年賀状など以外で初めて描いた“言いたいことを伝えるための絵”である。一目瞭然だが、これは友人の誕生日を記念して贈ったものだ。もらってくれた友人はとても喜んでくれたので、思いを込めて人のために絵を描く喜びを知ったのであった。(それまでは自分しか見ない、自分のためだけの絵だったのです。誰に見せるわけでもなかった絵をこうして展示するから、恥ずかしいのかも知れません……。)余談だが、プレゼントの箱を持った手が描けなかったので、紙の端を利用してごまかした。
 この7年近く後に、同じ「プレゼント」という内容でこの絵(pa98・『9000ばんおめでとう』)が描かれている。考えることは7年経っても同じなのか……?
 なお、“さじペン”(つけペン、鏑ペンとも。墨やインクをつけて描く/書くペンのことです)を使った最も初期の作品で、しゃきっとした主線を見て「漫画家みたいやな〜」と新鮮な感動を味わったのだった。これ以降のイラストの主線の大半はさじペンで描かれることになる。

 後半2枚(旧亮月13・20)も版権もののイラストである。前者の「コルネット」(出典:『ハーメルンのバイオリン弾き』)のイラストは、旧亮月時代で一番好きな作品で、当時としては一番思った通りに描けたものだ。絵に右下にあるように、一週間かけて少しずつ深夜に描いていた。それでも翌日眠くならなかったのは、やはり若かったからだろうか(ボカッ!)
 後者は旧亮月では晩期のもの。やはり自分向けの絵ということで、この辺りのイラストのキャラは殆どがカメラ目線で笑顔だ(カメラ目線になるように描くだけでも大変でした)。相変わらず手を描くのが苦手で、しかも小さく描いてしまう癖があった。出典は『スレイヤーズ』から。しかしスレイヤーズへの興味も次第に薄れ、翌年には“運命的な出会い”だと思っているあの作品に巡り逢うことになる。


★次回は10年を縦断して、「年賀状特集」をしたいと思います。次次回は旧亮月で一番特徴的な“ある物”を使った作品を集めて展示する予定です。 


旧亮月1
リナ・インバース
1996.9.22
シャープペンシル・ノート



旧亮月7
誕生日おめでとう
リナ/ガウリイ
1997.2.6
さじペン・色鉛筆・上質紙


旧亮月13
コルネット
1997.3.16
さじペン・色鉛筆・上質紙


旧亮月20
フィリア
1997.11.26
さじペン・色鉛筆・上質紙

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