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 今回は“月頭(つきあたま)特集”として、暑中見舞や残暑見舞を集めて展示しました。ご案内は先月の特集同様、桂光亮月です。
 私の場合、暑中見舞というと大抵涼を感じるようなものを描いています(まあ、普通ですが)。今後どうなるかは分かりませんが、なるべく背景も描くようにしています。人物だけだと、どんな意味があるのかわからない絵になってしまいますので……。
 その年ごとに違う、当時の私の夏の感じ方を楽しんで頂けたら嬉しいです。


 はじめは、1997年用のもので、初めて暑中見舞を描いた時のデータです(旧亮月14D)。以前は印刷したものを展示しましたが、はがきに印刷するためのデータが遺っていました。昼の絵を描いておき、色の補正を行って、「花火を見ている二人」の絵にしたつもりです。もうちょっと工夫して描かないと、誰にも判らないだろうに。なお、文字を書く部分が明るくされ、レイヤーも統合してあったため、完全には修復できませんでした。写植等の印刷文字は一切使われておらず、私が全て手書きするようになっていたのです。それはそれで趣がありますね(誰に話しているのだ)。

 1998年は受験にさしかかっていたため、暑中見舞を描くことができませんでした。そのため展示されていません。ご了承くださいませ。その割に年賀状はしっかり描いてたなあ……。夏より忙しかった筈なのに。

 1999年のもの(RY10)は、はがきものでは初のオリジナルイラスト。写実的な(?)背景がある絵にも初挑戦。ものすごく面倒くさかった覚えがあります。大学では絵を描く関係のサークル(←婉曲表現)に入っていたのですが、横向きに座る人を描くのでもこの有り様でした……。
 余談ですが、当時は長くさらさらな髪とバンダナが好きだったようです。「絵は作者に似る」というのは正しいと思います(笑)。知り合いが見ると、異口同音に「性格が表れてる」と言うんです(言わない人もいますが)。私はそんなことはないと思うのですが……。でもだからこそ、展示できない絵があるわけです。イヤな自分が表れている作品も結構あります。

 2000年には“イヤな自分”が具現化したような絵が多かったのですが、この残暑見舞は辛うじてお見せできる作品です(pa40)。人が見ることを多少でも意識して描いたからでしょうか。キャラクターは当時好きだったゲーム『サイキックフォース』のエミリオで、見ての通りかき氷を食べているというものです。直球です。
 その頃は人付き合いで手いっぱいで、絵までなかなか力を入れられませんでした。私としては、歴代の暑中見舞の中で唯一手を抜いた作品だと思っています。しかしこの作品は、直筆したものを送ってしまいました……。喜んでくれたのがせめてもの救いです。

 2001年。わけあって、ごく親しい何人にしか送っていないのですが、その分心を込めて描くことができた1枚です(RY66B)。涼しい感じのものが描きたいということで、ゲーム『テイルズオブファンタジア』の“ユミルの森”(分かる人にしか分からなくてすみません)を選びました。背景は見た目以上に時間がかかっていて、塗っても塗ってもまだ白いという苦しみを味わいました。そして真夏の暑さも手伝って。(地元は日本有数の暑さを誇ります。誇らんでええ!)
 二人がべったりじゃ暑いじゃないか、と思う人もいるかも知れませんが、その頃流行っていた「癒し」だと思って頂ければよいのではないかと思います(?)。絵的に好きな“アーチェ”がどうしても描きたくて、でも一人だけだと寂しいという理由もあったのですが。

 2002年の残暑見舞は『夏色のきみへ』と題して、夏の原色的な明るさを表したものになりました。同じ時期、『夏色の君』という歌も作詞作曲していました。このイラストも歌も、2000年の影響が抜けきって自分の心境や価値観が変わっていく時期に作られたもので、今見たり聴いたりするとちょっと恥ずかしいです。本作(RY78)は今の絵柄になる前の最後の作品です。
 手動写植機の操作にも慣れ、円を描いたり、円/斜め組みをしたり、均等割り付けにしたりしていました。書体は、一度は使ってみたかった「スーボ」*をメインに。自分では満足のいく仕上がりになりました。送り先の人が、私の写植好きっぷりを知っているから出来たことなのですが。

*スーボ
 1974年に写植会社「写研」から発売された書体で、デザインは「字游工房」の創始者としても有名な鈴木勉氏。書体コンテストで受賞した当時、23歳だった。くい込みを強調した極太の丸ゴシック体で、見出しに使える書体が少なかった当時爆発的にヒットした。その雰囲気から(少女)漫画や雑誌などで多用される。

 最後は2003年のものです(pa97)。雨が長く続き、夏だというのに寒く、肉まん等の温かい食べ物が好まれたという異常気象でした。そんな“病んだ”夏の空を、ツボ押しで治したいという気持ちで描いたものです。出典は「花とゆめ」の連載作品『親指からロマンス』から。
 漫画雑誌の雰囲気を出すために、敢えてザラザラの紙に単色印刷をしました。台詞も「石井太ゴシック体」+「アンチック体」にしたり、作者のコメントやあて先を載せたりと、写植を効果的に使うことができたと思います。ただ、写植機で印字したものを使ったイラストはこれが最後でした。
 絵としては、描く機会のなかった角度と姿勢に挑み(空にツボ押しする人なんていません!)、何度も何度も描き直して丁寧に仕上げたつもりです。結果、思いが通じたのか、秋は真夏のような暑さに見舞われたのでした……。


 私の場合は毎年暑中見舞を作ることにしているのですが、送ってくださる方もやはりいます。送ってくださった方の暑中見舞を鑑賞するのは楽しいことです(私は)。自分では感じられない夏を感じることができるから。そして見える世界が広がる。そのためではないですが、たくさんの人と出会えたらと思っています。出会えた結果、送ってくださるような人ができたらとても嬉しいです。
 今回も、ご精読ありがとうございました。

 



旧亮月14D
リナ+ガウリイ
1997.6.22〜7.15
さじペン・上質紙
Macintosh Performa630
Photoshop3.0J
生データ

RY10
オリジナル
1999.8.3
さじペン・色鉛筆
PowerMacintosh5500/225
ヒラギノ明朝体7+
石井太明朝体OKL

pa40
エミリオ
2000.8.23
ハイテック-C・色鉛筆
官製はがき
PowerMacintosh5500/225
ナールD・アニトL

RY66B
みどりの声が聴きたくて。
チェスター・アーチェ
2001.7.11〜25(背景)
7.25〜2001.8.1(キャラ)
2001.8.3(合成)
さじペン・コピック・色鉛筆・
漫画原稿用紙
PowerMacintosh5500/225
石井太丸ゴシック体

RY78
夏色のきみへ
ルーティ
2002.7.28
さじペン・コピック・
漫画原稿用紙
PowerMacintosh5500/225
スーボ・ゴナU/E・ロゴラインE・
石井中ゴシック体

pa97
今夏の空に、ツボ押し!!
東宮千愛
2003.8.23
さじペン・丸ペン・
コピックマルチライナー・
筆ペン・スクリーントーン・
漫画原稿用紙
iBook/600
出力:PM-770Cでクラフト紙に
ゴナU・ナールM/D・
ロゴライン・ファン蘭E・
石井太ゴシック体+アンチック

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