●その2
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●階段の教え
1階側の手摺終端には、『うさぎとかめ』の寓話と同じように位置に着いた1羽と1匹のブロンズ像がいます。75年間触られ続けて黄金色に輝いています。
見上げると、手摺の中腹には……
一生懸命手摺を登る亀さんの像が。
これってまさか、手摺を滑って遊ばないようにという実用的な面も兼ねているのでは? 滑り降りている途中で像に当たったら物凄く痛そうです。
2階に到着しました。
滑らかに折り返す踊り場の壁面と手摺。腰壁はクロス張り+ペンキで仕上げられています。西と南を向いた採光窓が高く明るい雰囲気です。
写真を撮り忘れてしまいましたが、踊り場と2階の手摺の折り返しには兎のブロンズ像が寝ています。そんな中亀さんは3階に向けてせっせと手摺を登ります。
●時間が止まった学校
2階の廊下を歩きます。
現在は使用されていない教室も丁寧に修復され、まるで落成当時で時間が止まったかのような佇まいです。
一般に現存する古い建物を「時間が止まっているかのようだ」と比喩する場合、損傷が激しかったり後年の改築により醜く変貌したりしていることがありますが、この建物は文字通り「時間が止まっている」ような若々しい状態が復元されているのです。筆者にとって朽ち果てるまま立ち尽くす建物は屍を晒し続けるようで無惨でしかなく、この建物のように大切に手入れされてこその旧建築だと思うのです。
今でも掛かる学級の表示。さり気なく段違いになっている天井も美しい。
ドアの回転半径が黄色く示された廊下。番組の映像でこれを見た時、「どこかがモデルになっているのではないか」と直感したものでした。また、番組ではドアの窓ガラスに格子と色ガラスが嵌め込まれていましたが、実物はガラス1枚であり非常にシンプルです。
授業の開始終了を知らせたと思われる電鈴。頑丈な造りのようで、錆び付きながらもバチも健在。南側の階段附近に取り付けられていますがベルの径が大きく、きっとよく聞こえたことでしょう。
(KONICA C35・KODAK Ektar 100 で撮影。以下注釈のあるもののみ同じ)
人造石研ぎ出し(人研ぎ、テラゾー)による流し。最近の建築ではすっかり見掛けなくなってしまいました。
階段の手摺に開けられた丸窓を観察。円(弧)と直線を組み合わせた鉄による、まさに建築当時開花したアール・デコ的な意匠です。壁面のクロスペンキ仕上げの目地もお判りいただけるかと思います。
次回、この建物に於いてある意味核心である3階をレポートします。
その3へつづく→
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