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 十年展も最終回を迎えることになりました。今回は一番最近の作品を展示し、締めくくりとさせて頂きます。描いてからの日数が経っていないものについて解説するのはちょっと照れくさいですが、今まで同様に、どんな作品であるか書かせて頂きます。

 最近第21週以降)は中間調の色合いを好んで使っています。また、主線は鉛筆で描くことが多いです。コピックを使い始めた頃(1999〜2001年頃)のように、しっかりペン入れをして鮮やかな色で塗るのもいいのですが、最近の気分は中間調なのです(はっきりしないということではない)。現在進行形ですので、「それはこういうことだった」とは言えませんが、筆者の持論は「絵は作者に似る」ですので、今置かれている境遇や環境、人間関係、好きな物事などに多くの影響を受けているのだと思います。
 同世代の友人に絵を観てもらうと「君らしい」と言われることが多く、妹は「絵の顔に大きく勘亭流*で“兄”と書いてある」と言います(笑)。でも親世代の知り合いには「女の子が描く絵みたい」と言われてしまいます。ど、どういうことですか?

*勘亭流
 歌舞伎の芝居番付などに使われる、肉太で独特な柔らかい曲線を描く筆文字。江戸中期に岡崎屋勘六(勘亭)が考案し、広まっていった。写植用には「織田勘亭流」「けんじ勘亭」、パーソナルコンピュータ用には「モリサワ勘亭流」「DFP勘亭流」「コーパス江戸文字勘亭流」
(←いったいどっちなんだろう)などがある。最近は歌舞伎以外でも頻繁に使われている。

 1枚目は第17週でも展示しましたが、何となく描いているうちに描き込んでいってしまい、ちゃんとした(?)作品に昇格したものです(RY106)。どうも集中するとどんどん細かく描いてしまう癖があるみたいでキリがなくなります。
 10年前は人間の顔を描くのが苦痛でしょうがなかったのですが、ようやく表情なども楽しんで描けるようになりました。今後は人間らしい微妙(←「細かいところに美しさや重要な意味があって、簡単に言い表せない」ということであって、最近よく使われている「ビミョ−」ではありません)な仕種や表情も描けるようになりたいです。

 2枚目は「亮月製作所」のサイトが5周年を迎えた時にトップイラストとして飾っていたものです(RY108)。写植ファンサイトらしいものをということで、創立の前日のぎりぎりまで悩み、写植機の「スピカ*を描きました。残念ながら現物を直接見たことはありませんが、オペレータと一体感がある小さな佇まいが好きで、ちょっとデフォルメして鉛筆で作画、Mac で加工・文字打ちをしました。

*スピカ(SPICA)
 写植機会社最大手の「写研」が発売していた卓上型の小さな手動写植機。1960年代には存在していたようで(未確認)、本文の組版用として普及した。1980年代には内職で使われていたのか、映画『男はつらいよ・寅次郎恋愛塾』(1985年)ではマドンナの部屋にスピカが置いてあった。現存数はかなり少ないと思われる。(※スピカの写真は「写植機探検隊」御中を参照)

 3枚目はゲーム『エリーのアトリエ』の主人公・エリーの誕生日にちなんで描いたイラスト(pa109D)。エリーだけではちょっと寂しかったので、百合の花を添えました。こんなに近づいて香りを嗅ぐと鼻をやられると思いますが……ι
 主線は鉛筆で描いておき、それをスキャンして描画ソフト「Painter」で彩色しました。実に5年ぶりのデジタル彩色で、うまく使いこなせなかった気がします。やっぱり慣れが必要のようですね〜。

 2月からの半年をかけて今までの10年に描いてきた絵を展示してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。

 とにかく好きなキャラクターを描くのが目的だった中高生時代。自分の描きたい絵柄を見い出し、写植も導入した初期の亮月製作所時代。絵に意味を込めて描き始めた大学サークル時代。描きながらも冬眠状態だった2000年。自分の気持ちを絵に託すようになった2002年以降。そして今。どんな作品ができるだろうかとまだまだ模索中です。今後ずっと模索し続けていくのかも知れません。

 こうして観てみると、いつの時代も絵が好きで、楽しんで描いていました。今観ると不本意なものもありますが、それは今の自分の価値観であって、当時いやいや描いていた絵はありません。その証拠に、すべての作品が何らかの形で手許に遺されているのですから(嫌だったら破って捨てていると思う)。下手くそな絵も、直視に耐えないイタイ絵も、気に入っている絵も、人にあげた絵も。

 それをできる限りありのままに展示し、「十年」という時間の流れを筆者とともに感じ、考えて頂きたいと思ったのが十年展開催の主旨でした。たとえばあなたが「この絵には共感できる」(と思って頂けたらとてもうれしい☆)とか「こんな絵をよくも展示するなあ」とか……と思われたなら、それもまた「十年」の一部です。この十年展を通して何かを感じて頂けたのであるなら、この展覧会は成功であります。ご意見・ご感想を頂けましたら、たいへんありがたいです。

 どんな方が観に来てくださったか知る由もありませんが、感謝の気持ちでいっぱいです。たまたま訪れた一見さんから、生身の私を知っている方まで。観客あっての展覧会です。半年間本当にありがとうございました。


 10年で色々なものが変わりましたが、絵が好きである気持ちはずっと同じです。
 これからも、自分の描きたい絵を描き続けていきたいです。

 感謝を込めて。


RY106
オリジナル
2004.5.10
F鉛筆・無地ノート

RY108
亮月製作所5周年記念
オリジナル
2004.5.26

鉛筆・はがき原稿用紙
iBook/600
Adobe Photoshop
ことり文字ふぉんと細・
ヒラギノ角ゴシック体W6・
ナールD

pa109D
エルフィール
2004.6.18

鉛筆・はがき原稿用紙
PowerMacintosh5500/225
ペンタブレット:Wacom ArtPad II
Painter の水彩ツール
生データ

(制作中)

RY110、RY111
2004年暑中見舞
オリジナル
2004.7

アナログ制作
写植書体

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