写植機おもいで40年

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●写植が使えない苦しみ

H Mさんからね、ちょっと聞いた時に、怒らないでね。「写植の事に興味持ってる奴なんて……」ってね、僕らから見ると嬉しいんだけど、変わってるねぇ〜(笑)。どうして? って。
亮 よく言われるんです。今更って思いますよね。終わってるものを好きだって言って研究してるっていうのは。
H どうして〜? って。

 明解なご返事は頂いてないんですけどね、関わり合ってきた者からするとね、もう今は写植をしたくても出来ない。実際……
的 今印刷はCTPになってきたりとかすると、フィルムだとか版下ももう使ってないですもんね。フィルムさえ使ってないですもんね。
H そうです。大手さんとかね、そういう所は昔の版下関係が沢山残っておる訳です。いわゆるデザインですとか表立って動いてる所は今はデータでやり取りしてるんですが、現場の、その下ですよね、会社じゃなくて下請けさんとか外注さんですね、っていうのはまだ版下で動いてるんですよ。
的 ありますよね、パッケージだとか。
H この間もね、話をしたらデータ化せいと言われて。版下が沢山あると、ほんのちょっと直すならそんな事はないんですけど、データに直してあげたいですけどね。データに変わってきてるから、きちんと筋道を通してね。そういう所でいいよと仰っていただければ私は直してもいい。だけど、写植で直すことは出来ませんと。それは、一つの相手の責任問題がありますから。
的 版下があってそれをデータ化しつつ直すように、というようなお仕事なんですか?
H ならいいんですけど、データ化をしちゃいけないんです。勿体ないから。二度三度使い回すから、版下の修正というレベルでやって欲しいんです。で今困ってるんです。一応ルールとして、会社の然る所に持って行って、こういう風にしたいからっていう相談事をしてくれと。そこでOKが出れば……
的 半分相手さんのものだからってことですかね、版下は。
H そうですね。大元の所に何か事があった時に「勝手に直した」ってことになっちゃうし。
的 商業印刷だと割と勝手に直しちゃうとか変換してしまうというのはあるようなんですけど、出版……本とか何百ページとかあるものを考えると、それをやってしまうと取り返しがつかない事になるので、
H 特にね、我々の所は機械の銘盤ですとかね、そういうものなんですよ。ある年代まではこれだったんだけど、それが途中でずれたのに変わっちゃうと、並べた時におかしいですよね。きちんとした説明が出来ればいいと思うんですよ。こういう事情でこうしたんだからと。それは御社の、メーカーとしてと。だけどそれはしたくないんですよね。ヤミでコチョコチョと直すというレベルなんですよ。お金かかるから。で、本社へ持ってくと、データ化せいと。こっちへ持って来るとチョコチョコ直してくれみたいな事でね、色々話はしてたんですけど、今写植でね、直せないんですね。今の話じゃないですけど、受けましたは今の話で、あとで外しますよという訳にはいかんですし、デザインとかでね、色々やればいいと思うんですけど、社外持ち出し禁止のようなものですと出来んですよね。自分達も写植の機械がないですし、印画紙の供給も殆どないじゃないですか、フジさんとか。
的 印画紙はまだちょっと作ってますね。でも版下が残ってればまだいいですよね。フィルムしかないとストリップ訂正が出来なくなってきてるので。
H うちの所自身も出来なくなってきてるんですね。設備がね……。
的 フィルムにする職人さんもいなくなってきてますよね。資材……フィルムですとか印画紙の価格も上がってるので、全盛期の価格でというような事で思ってる方も。
H 取り敢えずは話の最後に「検討してください」って言うんですけどね。

→つづく


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