連続ドキュメンタリー
さようなら写植。


第3回 5月24日・『思いを馳せる』

 写植との別れが迫っているのとは対照的に、「亮月製作所」の“電算部”(というMac・デジタル関係を管轄する部署がある)はにわかに活気づいた(と言っても、「亮月製作所」のメンバーは一人だけだが)。ネットオークションで新しいMacを、しかも憧れの iBook を落札したのだ。Mac を初めて買って以来、かなり長くの念願だったカラーのノート型で、新しい入出力規格(USB 等)で、MacOS X 付きで、デザインが格好いい(むしろ可愛い)!!  仕事中もこの iBook にどんな名前をつけようかと色々考えていた(※MacOS ではコンピュータに名前をつける事になっている)。あやの・ひよの・りお・りく・ウィズ・ゆき……。熟考の結果、ひよのやりくもイイがやはりイメージ的にりおだ !! という訳でりおに決定(名前の由来が分かる人なんて、いないですよね……?・笑)。
 仕事から帰ってから、届いたiBookを見る。新しくて真っ白な筺体とデザイン、素晴らしい性能に感激した。外見は女の子が好みそうな可愛さなのに、一人前の実用機だ。InDesign(印刷物のレイアウトソフト)とヒラギノフォント(質の高さで定評ある書体)を組み込み、早速使ってみる。今まで書体と文字組にさんざん苦労していたので、文字関係がようやくほぼ納得いく完成度になったのが嬉しい。手動写植が使えなくなったとしても、何とかやっていけそうだと思ってしまった。DTP(コンピュータ上で出版すること)もここまできたか、と感心するとともに、時代を感じた。今の自分は、写植とフルDTP化のちょうど間にいる……。

▲写植の後継機として購入したiBook/600・“りお”(筆者命名)。
その可愛らしいデザインからは想像できない程処理能力は高く、
ネットからデザインまで難なくこなす。ちなみにこのサイトや
機関誌『アルケミスト』も“りお”で制作している。
Adobe InDesignとヒラギノフォントのおかげで、
ようやく電算写植に近い品質の組版ができるようになった。

→第4回 6月1日・『遺されたもの…“写研の字を忘れんうちに”』


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