●写研/鈴木勉 | 1974年 |
●ユーモラスな肉太見出し書体 「タイポス」「ナール」といった“新書体ブーム”に湧いた昭和40年代以降、書体の既成概念を打ち破る新しい作風の書体が多数生まれました。その中でも最も斬新かつ独特な容貌を持つ書体が「スーボ」です。 この書体は、1972年4月、写研の社員だった鈴木勉氏が「第二回石井賞創作タイプフェイスコンテスト」で第一位を受賞した作品でした。その後、石井賞の応募に必要な文字以外の5300文字を制作し、1974年7月に手動写植機用の文字盤として発売されました。鈴木氏のスとボールドのボを取って「スーボ」と名付けられました。 「スーボ」の特徴は、これ以上太くしようがないぐらい極太な丸ゴシック体の画線をくい込ませた処理による可愛らしくユーモラスなデザインです。
1976年はスーボにとって大きく動いた一年でした。仮名のくい込みをさらに強調した「スーボB」や、輪郭をかたどった「スーボO」(アウトライン)が発売され、スーボのアイデンティティを強めました。
「スーボ」の発売当初は押しの強いディスプレイ書体が殆どなかったこともあって、新聞広告、レコードジャケット、児童書、おもちゃのパッケージ等に幅広く使われ、印刷物のアクセントとして大いに活躍してきました。現在ではその出番は少なくなってしまいましたが、漫画の吹き出し等で頻繁に使われました。 ●“スーボの鈴木さん” 鈴木勉氏は受賞当時23歳という若さでこの完成度の高い書体を制作して類稀な才能を発揮した訳ですが、その後20年弱に亘って写研に在籍し、「スーシャ」「ゴーシャ」といった名作書体を産み出し続けるとともに、「秀英明朝」「本蘭明朝」の仮名の制作、「ゴナ」のファミリー化、「織田特太楷書」の書体化といったまとめ役としても貢献してきました。 字游工房『鈴木勉の本』によると、鈴木氏は写研在籍当時「スーボの鈴木君だよ」と紹介され、「スーボ」の書体のイメージそのままの方だったといいます。鈴木氏は若くして亡くなりましたが、「スーボ」は氏の分身として永く生き続けることでしょう。 ●ファミリー ●は手動写植機専用書体です
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