Q(級)・H(歯)【きゅう・は】


●Q:写植文字の大きさの単位

 活版印刷やパーソナルコンピュータでは、文字の大きさを主に「ポイント」という単位で表しますが、写植では「Q」(級)という単位を使用します。

 1Q=0.25ミリメートルです。

「級」とも書きますが、これはメートル法を基にした単位で、1ミリの4分の1(quarter)ということに由来するため、表記としてはアルファベットで「Q」とするのが本来です。
 1938(昭和13)年に出荷された写植機から縦組みとともに横組みの最小送り単位が4分の1ミリとなり、同時に文字の大きさの単位としてQが誕生しました。それまではレンズ番号(1、2、3……)や活字の号数による近似値で呼称していました。

●H:写植における長さの単位

 Qは文字の大きさを表すのに使われますが、字間や行送りなどの長さを表すのには「H」(歯)という単位を使用します。

 1H=1Q=0.25ミリメートルです。

 写植機の歯車が1歯分動くと印字位置が0.25ミリ動くという仕組みに由来します。語源から言えば「歯」が本来と言えますが、画数が多いためしばしばアルファベットで「H」と表記されます。亮月写植室では表記を統一するためアルファベットで「Q」「H」としています。

 写真植字は戦前に発明されたものですが、発明者の石井茂吉氏は、日本古来の尺貫法や活字の大きさの単位として使用されていた号数ではなく、将来を見越して国際単位であるメートル法を採用しました。事実、戦後日本は1951年に計量法施行によってメートル法への全面切り換えを行い、版下(印刷物の原稿)もそれに則って作られるようになりました。
 1925年に製作された試作第1号機から既にメートル法に基づく送り量が採用されており、当時の最小単位は0.5ミリでした。1935年には縦送りが0.25ミリ、1938年には横送りも0.25ミリとなりました。

●QとHの実際

 写植の指定の一例を挙げると、QとHは

「MM-A-OKL 12Q 字送りベタ(12H) 行送り20H」

というように使われますが、これは

「『石井中明朝体オールドスタイル大がな』の大きさ12Q、文字の基準位置から次の文字の基準位置まで12H、文字の基準位置から次の行の文字の基準位置まで20H」

という意味です。

●もう一つの「級」

 写植用の文字盤は、文字の使用頻度別に一級から四級までに区分されています。

 一・二級はメインプレートに収録されている主要な2862文字です(詳しくはメインプレートの記事を参照のこと)。
 三級は例えば「琥珀」「琵琶」「碇」「雫」などのそれほど日常的には使わない漢字がNo.1〜7の7枚のサブプレートに収録されています。
 四級は読むこともできないような特殊な漢字が多く、No.19〜33の15枚のサブプレートに収められていますが、見出し用書体等には四級漢字の文字盤が存在しないものもあります。また、殆ど使わない割に購入や保管の負担が大きいため、一級から四級までの全ての文字盤を持っていることはあまり多くなかったようです。


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