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前回に引き続き、筆者の心境が変わり始めた頃に遺された作品を展示させて頂く。今回は、比較的大判のものを抜粋した。 まずは、サークル提供作品から2点。 お見せできるような品質(?)のものではなかったが、内容上避けて通れないものだったため、若干修整して展示していることをご了承頂きたい(公開できないのがあまりにも勿体ないと思いまして。2枚目については、誰も描かないだろうと思われるテーマだっただけに、修整してでも展示したかったのです。一生懸命描いた当時の自分には申し訳ないですが、2000年の影響が色濃い絵柄は見るのが辛いのです)。 はじめの作品(RY74)は、第13週で取り上げたオリジナル漫画『ナール』の最終回から。実は写植がテーマだったことが窺える。登場人物はすべて書体から命名した。ちなみにこのイラストのキャラクターは“ナール”ではなく“瑞穂”である。 お世話になっている写植屋さんの中がこんな雰囲気で(わからんかι)、写植の用事がなくても話をしによく立ち寄ったものだ。 使われている書体も賑やか。「ゴカール」(「ナール」の文字)や「イナミン」(英語の部分)、そしてお気に入りの「記号BA-90」(例の、笑顔マークです)。小さな文字盤をとっかえひっかえ印字するのは大変だったが、とても楽しかった。 次の作品(RY78)は、私の好きな写真植字機そのもの。写植機のある記念写真風。未だかつて、写植をテーマにイラストを描いた人を見たことがない(「描いたことがある!」という方はこっそり教えてください・笑)。修整したため、絵に違和感があることをお許し頂きたい。 下段の文章は実話を若干脚色したもの(すみません、熱く語っちゃったんです……ι)。照れくさいが、敢えてそのまま展示させて頂いた。 この作品に使われている写植は「石井特太明朝体」。「文」という文字の4画目始筆にある“点”がとても好きだが、最近の明朝体では省略されていることが多く残念。この“点”も、写植や活字の書体の味わいのひとつだと思っている。 その後サークルは自主的に引退した。就職活動と勉強が忙しくなったこともあるが、楽しく描くことが難しくなってきたのだ。引退後は締め切りなどの制約にとらわれず、自由奔放に描くことになる。ただし、突然絵柄が変わるようなことはなかったが。 就職活動や勉強はかなり辛かったが、数少ない楽しみは漫画等の本と、好きな音楽と、イラストと、アルバイトだった。アルバイト先について、「普段彷徨っている砂漠から抜け出してオアシスに立ち寄ったかのようだ」と日記に書かれていた。一緒に働いていたパートのおばちゃんも、可愛がっていた後輩も、本当にいい人ばかりだったのだ。元サークルの友人とも頻繁に遊ぶようになり……かつて失われたことによって得たものは非常に大きかった。(ちなみに、「亮月製作所」のサイトは積極的な更新もせず、ほったらかしていましたι) 3枚目(RY83〜85)は、サークルの自己紹介誌に寄稿する予定だったものを再利用。A4見開きサイズ。これをカラー化して複製し、暑中見舞とともに友人に送った。当時の好きなものが描(書)かれている。先週の絵葉書たちと思うと配色が派手派手しい気がするのは、元々カラーイラストにすることを意識して描かなかったからだろうか。 このときの文字は写植と Mac の混在で、タイトルや主要な文は写植、好きなものは Mac で組み、原稿に貼り込んでいる。なお、本名や住所等は画像処理させて頂いた。大きいサイズで展示してあるので、よろしければ印刷してご利用頂きたい(←そんな人、いるのか〜?)。 右上のパンダは「パンダキング」の10年来の自画像。桂光亮月の自画像は特に決めていない。左下のカセットデッキは、現在愛用の「TC-K222ESL」(SONY・1991年製)。デザイン・性能ともにとても気に入っている。 描かれているキャラクターは、右側3人は白泉社の漫画から。左はゲーム『テイルズオブファンタジア』の“アーチェ”で、五本の指に入る好きなキャラ。ポーズは変だが、この絵のアーチェは今でも好き。 最後は、2002年の暑中見舞から再展示(RY87)。構図やキャラクター選びには苦労しなかった(何も考えてなかった?)が、描かれるものに苦労した。ハイビスカスやパイナップルの資料集めに走り回った。(植物はたまに作品に登場するにも関わらず、殆ど資料を持ってないのでいつもこんなんです……ι カラーで手頃な植物図鑑、ないものかなあ?) 当時の日記には、この暑中見舞について、「『好き』が原動力になっている。だからどんなに忙しくても辛くてもその時の全力と気持ちを作品に織り込んでいる。だから自ら暑中見舞や年賀状を送る相手は、『好き』と言いたい人だけ……。」と書かれていた(友人とか、写植屋さんとか、そういう人へ。)。 余談だが、“自分の絵柄”に戻す前の最後のイラストで、結果として3枚目とこの絵がこの時代(2000〜2002前半)の集大成的なものになった。 そして2002年夏、筆者の暮らしや価値観を大きく変えた、あの人が。 |
RY74+RY107-1 RY78+RY107-2 RY83〜85 RY87 |
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