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2002年後半。それは久し振りに明るい草原に辿り着いたような、清々しいものでした。それまで抱えていた重いものなんてすべて捨てて。全てのはじまりがここにありました。 今回からは、私こと桂光亮月がご案内いたします。 この年の夏、テレビコマーシャルを何気なく見ていて、気になるうたが。 ♪陽のあたる坂道を 自転車で駆けのぼる 君と誓った約束乗せて行くよ ララララ 口ずさむ くちびるを染めて行く 君と出会えたしあわせ祈るように (つじあやの/『風になる』) このときは歌っている人も曲名も知る手立てがなく、それが『猫の恩返し』というジブリ映画の主題歌だということしか分かりませんでした。映画も好みな感じっぽいし観てみようということで、友人と見に行きました。 「感動したっ!」というよりは、心にそっと沁み込んでゆくような印象でした(「物足りなかった」という人も多いかも知れませんが……)。そして主人公の“ハル”がとても自然な振る舞いで、かえって魅力的だったのです。また、「自分の時間を生きるんだ」というメッセージが心の奥に届いて、それまでの自分をぷっつり切り離しました(まあ、それだけがきっかけじゃなかったんですけどね。チクリと痛い記憶があります)。 自分って何? 自分が本当に好きなものは何? 自分の考えって? 価値観って? 大切にしているものは? しばらく忘れていたことを思い出しました。まるで心の風通しがよくなったかのようでした。それまでの2年半は、今の自分に安住し、人に自分(判断や価値観)を預け、確固としたものなんて殆どなくて、それでいて過去に向かってじくじくと悩んでいたのに。 ……そして映画のエンディングに流れたのが、上の『風になる』なのでした。爽やかなサウンドに、包み込まれるようなほんわかした声。そして真っ直ぐに澄んだ詞。 「あ〜、この人つじあやのっていうのか〜。ええうた歌うなあ〜。」とふんわり感動。そしてレコード店でこのうたのCDを買い、改めていたく気に入り、一週間は『風になる』ばかり聴いていました。 “熱病のように”つじあやのさんを好きになってしまったのです(そして今も大好き)。すべてのCDを買い込み、ウクレレも買って毎日毎日練習に励み、そのうち弾き語りもできるようになっていて、生まれて初めて美容院に行き、髪型もつじ風に(ならないときもあるが)。そして彼女のようなセルロイド眼鏡まで買ってしまいました。視力は悪くないのに。私が眼鏡をかけているのには、そういう意味があったりします。ここ2年で定着してしまったということもあるけどι 髪形と眼鏡を一度に変えたので、当時の友人知人にはたいそう驚かれました……。いや、それまでがそれまでだったからか?(かつての学生証の写真とか……。) そして、“自分の絵”(第7週・第8週辺り)も帰ってきたのがこのころです。今回は、猫の恩返しとつじあやのさんについて描いた作品を展示させて頂きます。 はじめは、猫の恩返しの台詞から(RY88)。どう頑張っても描きたい絵柄にならず、しかもポーズもうまく描けなくて愕然としました(本を見ないと描けなかった)。“人真似の絵柄”からなかなか抜け出せないでいた、過渡期の作品。だからこそ、「自分の時間を生きられないヤツが〜」と書いたのかも知れません。 鉛筆+コピック+古い画用紙のコンビは滲みやすく、それが味になりました(画面では見えませんが)。というか、偶然です。 次は、後輩に「ありがとうのきもち」を込めて贈った絵の複製です(RY89)。つじあやの嬢です。実在の人物を絵にするのは初めての試みでした。デフォルメですが。脚がおかしいような気がするのは内緒ですι あと、つじあやのを勧めまくってごめんよ、後輩。 画材が色鉛筆に変わりましたが、コピックを実家に置いてきてしまったために仕方がなかったのです(というか、妹に奪われた)。これはこれでやわらかい雰囲気になったので、しばらく色鉛筆を使うことにしました。 3枚目は、三つ編みおさげのつじ嬢と“猫ハル”が描きたくてたまらなくなり、少しずつ描いていったもの(RY90)。この時注がれた労力には恐れ入ります。とにかく丁寧に・可愛らしく描くぞと意気込んでいました。画面では再現しきれませんが、髪の毛のつやや肌の光り具合まで、愛情を注いで描きました(笑わないでください〜)。自分が楽しむために描いた絵だったはずなのですが、のちに友人へ贈りました。 ちょうどこのころ、スピッツのカバーアルバム『一期一会』につじ嬢が参加していて、『猫になりたい』といううたを歌っていたのがこのイラストを描くきっかけなのでした。 最後は2003年の年賀状から再展示(RY91)。詳しい解説は年賀状特集にあります。こちらも上の作品同様、愛情を目一杯注いで描いたものです。鉛筆で下描きしたものをコピーし、そのコピーしたものに色鉛筆で彩色・描画してさらに鉛筆で主線を描き足すというややこしいことをしていました。主線がペンの時よりも描きやすく、自分の描きたいものに近くなったような気がしました。 猫の恩返しとつじあやのさんが前向きに影響して戻ってきた明るく穏やかな日々。「自分はこういう絵が、こういうものが、こういう人が好きだったのか」と、新たな発見が始まった頃に遺された作品たちをお届けしました。 そして今でも、新たな発見を繰り返す日々です。 今回もご精読ありがとうございました☆ |
RY88 RY89 RY90 RY91 |
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