2002.6.7 更新

TC-K222ESL

SONY 3ヘッドカセットデッキ 1991年製造
当時59800円 → 5000円で購入(取説・リモコン付)

主な特長

今録音された音をソース(原音)と比較出来る3ヘッド方式
ドルビーB/C NR・HX PRO搭載
クローズドループデュアルキャプスタン方式
PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッド
バイアス/レベル キャリブレーション機能
リニア電子カウンター・CDダイレクト入力端子
FL管式24セグメントレベルメーター(-40〜+10dB)

ワウ・フラッター

0.022% WRMS ±0.04% W.Peak(EIAJ)

周波数特性

ドルビーNRスイッチOFFにて TYPE IVカセット
15〜22,000Hz ±3dB(EIAJ・-20dB録音)
15〜16,000Hz ±3dB(0VU録音)    

SN比

76dB(ドルビー C NR ON/TYPE IVカセット)   
57dB(EIAJ・ドルビーNR OFF/TYPE IVカセット)

ひずみ率

315Hz 3次高調波ひずみ率0.5%(EIAJ・TYPE IVカセット)

消費電力

19W

最大外形寸法・質量

430×135×350mm・6.9kg

運命的出逢い!?

 レコードプレイヤー(YAMAHA YP-D5)を購入したはいいが、下宿生の私に巨大なステレオを置くスペースはなく、実家にやむなく置いています。そのため、下宿でレコードの曲を聴くためにはMDに録音しなければなりませんでした。

 その音質が酷かった!

 2001年当時最新の録再MDウォークマン「MZ-R900」をアンプのヘッドフォン端子(ライン出力では音が小さかったため)に接続、録音を試みたのですが、原音にないグジュグジュという雑音が混ざり、そのうえ生々しさのない音になっていました。こりゃいかん、と思い愛用のCDラジカセである「ZSX-G7000」でテープ録音。しかし……録音レベルが調整出来ないので曲がヒスノイズに埋もれて聴けたものではありませんでした。そこで一つの野望が沸々と……

 まともなカセットデッキを買うぞ!

 カセットテープをこよなく愛する私にはMDデッキを買うという選択肢はなかったのです。そのくせMDウォークマンを持っとるとは何事だ。
 2001年6月のある日、「ハードオフ◯◯店」でレコードを漁り、何となくジャンクコーナーへ。そこには古くてぼろぼろなデッキ類がごろごろと……ん? そこにはぴかぴかのカセットデッキがあったのだ!(いきなり常体へ。)

 ジャンク品 SONY TC-K222ESL 5000円 録再しました

「222ESL」?? あの高音質「ES」シリーズなのだろうか? 高校時代、ソニーのカセットデッキのカタログを眺めてはいいなぁと溜め息をついていた、あの高嶺の花の?(注・学生さんは金がない。)1995年以前のカタログも知識もなかったのでどうにも胡散臭かったが、その美しいフロントパネルのデッキは、ごみ寸前の物達の中から「買って下さい」と言わんばかりの哀愁をたたえこちらを見ていたのでした(あくまで主観だが)。……我に返ると、このTC-K222ESLは下宿にあったのです。あゝ、とうとうやってしまった……。そういえば、店のおっちゃんに「若いのにカセットデッキが好きなんですか。」と感慨深げに言われたな……。
 その時遊びに来ていたNaCl氏と動作確認。何と完動品! 大きなレベルメータ、高域まで伸びやかで滑らかな再生音、ドルビーCにHX PRO…そして3ヘッド。全てが初めてで大いに感動、氏と握手を交わしたのでした。初めて録音した「キャンディーズ」(70〜80年代の歌が好きなのだ)のCDからの、キレがよく深みのある再生音は原音と殆ど聴き分けがつかず、カセットデッキ(テープ)の真の実力を見せつけられました。台風一過の青空のような感動は今でも忘れられません(大袈裟ではない)。

 しかし罠はあった。

 以前CDラジカセで録ったテープを再生させるとNRをかけなくても音がこもっていました。逆に、222ESLで録音したテープをラジカセで再生しても同じ。しかも録音レベルが左右で2dBくらいずれている……だから前の持ち主はこのデッキを売ったのだろうか?
 11月に入った頃、事件は起こってしまったのです。20年以上前のテープを聴いていたところ、のりで繋いだ部分があり「キューッ」という音と共に停止。綺麗に清掃しても症状はなくならないどころか、録音レベルの左右バランスが前にも増してずれている! 4dBも!? 大切にしていたと思っていたにも関わらず実際はぞんざいにしていたという事です。深く反省し、修理に出しました。

 年末にデッキは帰って来ました。しかし……

 修理代もESシリーズ!(苦笑)

 高級デッキは伊達じゃない。総額は税抜きで13600円、そのうち部品代は3800円、技術料が9800円でした。10年モノなのであちこちが弱っていたようです。それにしても、技術料が高い! しかし以前あった「持病」は全快、他機との相性も良くなって文句なしです。よかったよかった。怪我の功名というやつか(ちょっと違う)。

 CDP-333ESJがなかった頃は先述のZSX-G7000やLDコンパチプレイヤー「CLD-R5」と接続してCDの音を楽しんでいました。これがまた驚きで、CDラジカセにヘッドフォンを直接挿して聴くよりもずっと音が良いという不思議な現象が起こりました。多分アンプ回路の出来が全然違うのでしょう。ライン入力にはFETが使われていると聞いた事があるのでそれも一役買っているのでしょう。


修理明細書
 購入から1年が経とうとしている(2002年5月現在)今でも、TC-K222ESLはメインデッキとして活躍中です。AMラジオの録音のような気軽な用途からレコードをメタルテープで録るという高音質が必要な用途まで、文句も言わず(故障がないという意味)頑張ってくれています。運命的出逢い(笑)と言ってもいいくらいのこのデッキはデザイン的にもとても気に入っており、初めての3ヘッドデッキという事もありおそらく一生の付き合いになると思います。世の中がどんなにデジタルに溢れようとも……アナログの実力を知ってしまったから。

音質・その他について

 とてもカセットの音とは思えません。ワウ(回転ひずみ)は全く感じられず、ドルビーC NR(ノイズリダクション=高域の雑音を弱めるシステム)を使った時の録音ではテープ特有のヒスノイズ(シャー、という音)は大音量にしても殆ど聞き取れません。ソース(原音)にかなり忠実な録音・再生が出来ます。特にレコードをメタルテープで録音した時は、女性ヴォーカルの滑らかさ・ストリングスやシンバルの透明感等がそのまま再生されるような印象です。個人的にはこのデッキの(音楽としての)再現力はMDを軽く超えていると思います。ただし、中域はどう調整しても少し弱くなる傾向があります。原音と比較しなければ判らない程度ですが……。
 デザインはシンプルかつ機能的で使いやすいと思います。FL管によるメーター類の表示が格好いい。後継機種(TC-K222ESJ や TC-KA3ES)や上位機種(TC-K333ESL や 555ESL 等)ではメカ部分が中央に配置されていますが、私としてはメカが左にあり、その分操作系やメーター類が大きいこのデッキの方が好きです。ソニーのカセットデッキの中では一番好きなデザインです。おごそかに回るリールや、音に合わせて左右に大きく振れるレベルメーターに見惚れてしまうこともしばしば(笑)。いかにも「音楽を再生しています」という感じで。


おまけ・以前使っていたラジカセ達



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