亮月写植室

鳥海修の文字塾[特別編]
2014.1.19(日)大阪DTPの勉強部屋主催
於:メビック扇町


※おことわり
 主催者様のご意向により、催しの内容は概要のみ掲載しております。そのため、本稿は会場を訪れた筆者の所感が主です。ご了承ください。

●あの方も「書体初め」!

 正木香子さんの『本を読む人のための書体入門』発売記念イベント(2014年1月9日。→写植レポート)の熱気冷めやらぬ1月中旬、風の便りが亮月写植室に舞い込みました。
 以前、亮月写植室での初めての見学会や「写植の時代展」でたいへんお世話になった大阪DTPの勉強部屋さんが、2013年10月から月1回開催してきた「鳥海修の文字塾」の特別編として、講師の書体デザイナー・鳥海修さんに加えてフォントディレクターの紺野慎一さんと正木さんをゲストとして招き、「文字へのまなざし〜書体を作る人、使う人、読む人から見た文字」と題してそれぞれの立場から書体に対するイメージや考えを語り合うというのです。
 それだけでなく、発売記念イベントで大好評だった「書体初め」をもう一度、鳥海さんも交えて行うとのこと!
 果たしてどのような事が語られ、どのような書体初めが展開されるのか……と思いを馳せるが早いか、次の瞬間には参加申込を済ませていました。

●おかえりの場所

 2014年1月19日、日曜日の正午過ぎ。
 名古屋から大阪へ向かう新幹線は滋賀県内での激しい降雪により減速運転しており、吹き荒ぶ車窓の風景を見ながら会場への到着の遅れを心配する筆者がいました。しかしそんな降雪は京都に入るとぴたっと収まり、会場の受付開始時刻から少し過ぎたものの無事に到着することができました。
 大阪DTPの勉強部屋さんの催しに参加するのは「写植の時代展2」以来約1年半振り。「いらっしゃい亮月さん」とあたたかく迎えてくださり嬉しかったです。何となくここは「帰ってきた」と思えるような、おかえりと言ってもらえた気持ちになるような場所です。

 昨年から気になっているものがありました。
 2013年8月17日から18日にかけて行われた“真夏の宴 勉強会&オフ会”で初めて披露された『花火の文字』の組継ぎ本。

『花火の文字』組継ぎ本

 えむさんに実演していただきながら組継ぎ本の仕組みを教えていただきました。「ノドまで真っ直ぐ開くし綴じるものも要らない。それに何枚でも継ぎ足せるんですよ。ページの割り付けは計算が必要だけど、計算用のサイトを作った人もいるんですよ。」組継ぎ本の利点を手に取って感じ、自分も作りたくなってきました。
 開演までの待ち時間に読ませていただきました。
 それぞれに書体を与えられた花火達。どんな思いでこの作品を書かれたのだろうかと、色々な思いが去来しました。作者である正木さんとも10日振りに再会することができました。「遠くから来ていただいてありがとうございます。」1年半前のこの会場のことをあたたかく思い出しました。

●新春書体放談!(概要)

 14時、お三方が登壇。

 講演の前の説明では正木さんの大活躍ぶりが発表され、会場からは「おおーっ」という声とともに拍手が。正木さんの活躍は我が事のように嬉しい、という気持ちはきっと正木さんを知る誰もが持っていると思います。
 この講演では、書体デザイナー、フォントディレクター、読者というそれぞれの立場から、これまでのいきさつやお三方が出会ったときのエピソード、『文字の食卓』の文章と作り手・使い手から見た書体など、書体を取り巻く出来事や思いをのびのびとお話されていました。特に鳥海さんのお話が愉快な感じで進み、度々客席から笑い声が湧き起こりました。

 鼎談は1時間半で一区切り。15時半から休憩に入りました。

『本を読む人のための書体入門』手売りコーナー

 入口附近で始まったのは、何と正木さんご本人による『本を読む人のための書体入門』の手売り! 休憩時間内に完売してしまうほどの売れ行きでした。

 休憩後はお楽しみの「書体初め」! ルールは前回のレポートをご覧ください。
 前回よりも時間に余裕があるためか会場の雰囲気は和気藹々、客席からツッコミが入るなど度々笑いに包まれながらの書体初めはとにかく面白かった。特に鳥海さんは抱負を書いた方に次々と質問を投げかけ、気持ちや背景にあるものをより深く掘り下げて相応しい書体を探っていました。そのためか鳥海さんが選んだ書体が書体初めに採用される率が高かったです。
 そうして選ばれた書体を使って当意即妙にリアルタイムで組版する紺野さん。ベタ組みのある書体で打たれたプレーンな文字列が情感溢れることばへとみるみる生まれ変わっていく様子をどきどきしながら見守っていました。
 お三方や客席でそれぞれ選ぶ書体の傾向が違っていたり、男女でも差があるなど、人間が持つ書体感のようなものの奥深さを感じました。

 最後の質疑応答では書体感を一層掘り下げたものとなり、DTP に携わる方が集まる場所ならではの濃い会話が展開されていました。

 17時半の終演後には正木さんにお話やサインを求めて長蛇の列が。いや、まあ、私も並びましたけどね!(笑)

●文字食さんに万歳三唱!

 18時の閉場後はお待ちかねの懇親会。
 参加したのは私だけが岐阜県民ゆえ多くの方が初対面でしたが、文字(私の場合は特に写植)を通じて色々とお話することができました。
 お三方とは一番遠い席になってしまいましたが、途中から紺野さんが近くに来てくださり、それだけでいっぱいいっぱいでしたが恐れ多くも私の思いを伝えることができました。紺野さん、本当にありがとうございました!

 お三方は今日中に別の場所へ移動しなければならないため懇親会は早目に終わり、鳥海さんと紺野さんは天満の雑踏へ。正木さんは新大阪駅へ向かわれるということでみんなで見送ることになりました。

 新大阪駅新幹線改札口前。
 正木さんに、一同で万歳三唱。
 改札を抜けた正木さんもこちらを何度も振り返り、手を振ってくださいました。
 どうか無事に東京へ帰れますように。
 そしてこれからもますますご活躍されますように。
 いってらっしゃい。
 別れ際に交わされる気持ちのやり取りを見ていたら鼻の奥がつんとしてきて、正木さんが見えなくなってから、少し涙が出ました。

 その後残ったメンバーで打ち上げ。ここには絶対に書けないような本音トークや秘密の話で熱く盛り上がり、解散となりました。宿まで送ってくださったえむさん、ありがとうございました。

 笑いあり涙ありで、立場を超えた文字への深い思いが伝わる半日でした。
 どうして人間は何かや誰かのために、ここまで熱くて、一生懸命で、やさしくて、あたたかくなれるのだろう。きっとそれが人間の生きる喜びだからだ。1年半振りの大阪で、その全てを感じることができました。今日大阪へ来ることができて本当によかった。宿で眠りに就く前にしみじみと思いました。
 講師の鳥海さん、ゲストの紺野さん・正木さん、主催のえむさん・大石さんをはじめ大阪DTPの勉強部屋の皆様、会場や懇親会で関わらせていただいた方々、本当にありがとうございました。

【完】


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