亮月写植室

書体開発とタイポグラフィ
(「タイポグラフィ教育1」展)

2012.9.15(土)武蔵野美術大学 美術館・図書館主催
於:武蔵野美術大学美術館


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●それは突然のことだった

 見学を2週連続で引き受けて俄に活気づきながらも、SPICA-AH の突然の再起不能に意気消沈するという波瀾で明けた2012年9月の亮月写植室。SPICA 修理への道を探るため思いがけず毎日写植漬けとなった管理人のもとへ、さらに風の便りが届きました。

「9月15日に武蔵野美術大学で行われるシンポジウムでは、鳥海さんが写研での文字づくりについて話してくださる予定とのことなので、大変貴重な機会だと思います。ご興味のある方はぜひ!」

文字の食卓」の正木さんが『文字食レポート』として字游工房の鳥海修さんとの対談の様子を記事にしているのですが、その鳥海さんについて上の案内が文字食さんのブログに掲載されていたのです。(→武蔵野美術大学「タイポグラフィ教育1」展

 写研での文字作りについて……大変貴重な機会……これは行かなければ!
 恥ずかしながらこの件については全く知らず、開催の1週間前というぎりぎりのタイミングでしたが何とか宿を確保して聴講することにしました。3週連続で写植関連の活動をするのは亮月製作所・写植室を通じて始まって以来です。この流れにただならぬ何かを感じました。

 こうして9月だけで喜び・苦しみ・そして放浪(さすらい)という『写植のうた』の3拍子がとうとう揃ってしまった管理人。急なこともありこっそり取材してすぐ帰るつもりでいたのですが、何だか胸騒ぎがする。そういった心持ちで当日を迎えました。

●所縁の地

 会場である武蔵野美術大学は管理人にとって、ムサビがなかったら現在の亮月は存在しなかったと言ってもよいような所縁の地。一度は訪れてみたいと思っていました。
 西武鷹の台駅から玉川上水を歩いて散策しながら約15分。上水の流れと学校の歓声や楽器の音を BGM に進んでいくと、目印の大きなアーチが見えてきました。

武蔵野美術大学 正門

 自宅から約4時間かけて来たので、「とうとう着いた」と感慨にふけりました。

武蔵野美術大学 カーブミラー

 左右確認のためのカーブミラーにも「武蔵野美術大学」のシールが。

武蔵野美術大学 美術館

 正門から真っ直ぐ進むと優れた意匠の校舎群が迎えてくれます。美大らしい空気を満喫しつつ、1号館をくぐった正面に美術館はありました。

武蔵野美術大学 美術館入口

 入口には大きな案内看板が。「タイポグラフィ教育1」展の他、興味深い展覧会も併設されていました。
 講演が始まるまでに時間があったので、まずは取材抜きでこの3つの展覧会を楽しみました。じっくり巡回するには時間が足りませんでしたが、貴重な古い展示物や様々な表現に心が満たされました。
 私には絵心やデザイン感覚はありませんが、ここで学べるものなら学んでみたかったなぁ……と思わせるものがありました。

●タイポグラフィ教育への情熱に触れる

「タイポグラフィ教育1」展ポスター

 展示会場である展示室1の入口附近に掲げられたポスター群を目印に中へ入ります。
 この展覧会は、本学で教鞭を執られた大町尚友氏の1969年から2012年までの教育の軌跡を生徒の課題や卒業生の作品を中心に展示したものです。タイポグラフィ分野に於いて大きな成果を残された大町氏の思想と情熱を余す所なく感じ取ることができるものでした。
 写植の発展期からパーソナルコンピュータによる組版への移行とその普及に至るまでの長きに亘ってタイポグラフィとは何かを追究されてきたため課題作品の表現も多岐に亘り、図形の錯視調整や既存書体の視写といった基礎的演習を始め、和欧混植詰め組みのスペーシング調整や写植によるタイポグラフィ作品の制作、オリジナルのロゴタイプやデジタルフォントの作成等それぞれの時代や教育段階に即したカリキュラムが見て取れました。もし私が在学していたとしたら、きっと楽しみながら着実に身に付きそうな魅力的な授業だっただろうと思います。
 授業で使われていたテキストや書籍も展示されていて自由に読むことができました。やはり写植関連のものを読みふけってしまい、判明していなかったことが明らかになる等大きな収穫がありました。

 会場では何人かの知っている方に声を掛けられました。他の場所で何度もお目にかかっているお馴染みのメンバー。岐阜からでも来たいぐらいなので皆さんやっぱり来ますよね〜。こっそり来たつもりでしたがバレバレでした(笑)。それにしても、こういった興味深い催しが多く開催される関東にお住まいの方が羨ましいです。私は写植に絞って行かざるを得ません……。

 そうしているうちに時刻は15時半近くになり、シンポジウムが開かれる美術館ホールに移動しました。

→つづく


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