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◯序
2024年秋、私は酷い体調不良に襲われた。
写植に関する活動の気力を失い、更に畳み掛けるように押し寄せたストレスに耐えられなくなったのだ。
写植に関する活動はやめて、自分のやりたい事だけやろう。
気になる事は躊躇わずに全て解決し、ストレスのない生活を実現しよう。
家族や我が家、そして自分の心と向き合い、穏やかな自分を取り戻そう。
私は、私と家族の健やかな時間を取り戻すため、全力で戦うことを決意した。
◯方針
・合理化 理に適った生活様式の採用、備品等の選定・配置を行い、暮らしの作業量と金銭負担を軽減する。
・省時間化 所要時間を短縮し、限られた時間を有効活用できるようにする。
・省資源化 断熱性能を高め、暑さ寒さを軽減して健康を守り、冷暖房費を削減する。
・高規格化 想定よりも到達点を高く設定し、余裕ある生活を実現する。
・高景観化 視覚的違和感を取り除き、統一感ある落ち着いた空間を作ることで心理的負担を軽減する。
◯記録(★は効果測定)
日付 |
事業 |
工期 |
費用(税抜) |
2024.6.15〜9.13 |
写植室窓増設工事※未収録 |
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380,000 |
2024.10.14 |
時計新調(トランジスタ式時計) |
- |
9,300 |
2024.11.17 |
写植室時計新調(電磁振子式時計) |
- |
21,080 |
2024.12.21 |
トイレ時計更新 |
- |
3,490 |
2024.12.22 |
ユニットバス天井裏断熱工事 |
40分 |
3,616 |
2024.12.31 |
ユニットバス床下断熱工事
フクフォーム対策工事 |
5時間10分 |
4,708 |
2025.1.1 |
屋根裏断熱材設置工事 |
11時間 |
29,634 |
2025.1.13 |
1階廊下内窓設置工事 |
1時間35分 |
8,685 |
2025.1.13 |
居間シーリングファン設置工事 |
10分 |
16,940 |
2025.1.16 |
2階階段・自室内窓設置工事 |
4時間 |
50,080 |
2025.1.20 |
★温度調査業務 |
- |
23,769 |
2025.1.27 |
写植室暗室壁断熱材設置工事 |
5時間 |
5,506 |
2025.2.7 |
1階居間ドア自動戸締器設置工事 |
2時間 |
3,770 |
2025.2.8 |
★室内温度報告(降雪時) |
- |
- |
2025.2.9 |
掃除機コードリール修理工事 |
30分 |
0 |
2025.2.11 |
テプラ新調 |
- |
37,879 |
2025.2.13 |
居間収納区画整理事業 |
30分 |
4,580 |
2025.2.15 |
内窓設置工事(外注)開始 |
- |
- |
2025.2.24 |
引き戸自動戸締まり化工事 |
2時間 |
10,112 |
2025.3.2 |
内窓設置工事(外注)完了 |
6時間30分 |
323,420 |
2025.3.11 |
トイレ床断熱材補修工事 |
1時間20分 |
0 |
2025.3.18 |
自室連続秒針時計新調 |
- |
9,845 |
2025.3.23 |
1階階段下収納区画整理事業 |
2時間30分 |
3,171 |
2025.3.26 |
1階デッキ拡張・物干設置工事 |
2時間20分 |
42,567 |
2025.3.30 |
充電式掃除機新調 |
- |
16,970 |
2025.4.21 |
扇風機更新 |
- |
32,780 |
2025.4.27 |
食器更新 |
- |
8,139 |
2025.5.1 |
BDレコーダー修理・更新 |
1時間10分 |
77,750 |
2025.5.18 |
水筒購入・栓交換 |
- |
5,808 |
2025.5.21 |
写植室文字盤黴対策 |
4時間 |
29,000 |
2025.5.28 |
マットレス更新 |
- |
82,980 |
2025.6.5 |
作業机更新 |
1時間 |
17,900 |
2025.6.17 |
★外気温・室内温度報告 |
- |
- |
2025.7.7 |
★室温実績と断熱性能試算 |
- |
- |
2025.7.22 |
踏み台新調 |
- |
8,740 |
◯結果
以上の通り維持管理工事や備品の更新に取り組んだ。自宅を新築して以来放置してきた事や、違和感を感じながらも着手できなかった事、そもそもこういった機会がなかったら気付かなかった事など様々な課題が山積していたことが判った。
・備品更新
小額なものであっても毎日使う備品を相応しいものにすることで、日々の満足感や景観が大きく向上した。性能や意匠を我慢しながら使い続けることの不健全さを、更新後の備品の使い心地の良さから逆説的に痛感した。
上掲した備品はいずれも毎日欠かせないものであり、特に長年使用し続けたマットレスやBDレコーダー、扇風機は、使っていることで無意識のうちにストレスを溜め込んでいたのであり、更新後の製品の大きな進化と快適さを感じた。備品の金額に関わらず、毎日の暮らしの積み重ねの基になるのでもっと早く取り組むべきだった。
なお、更新後の備品は躊躇わずに要求水準よりも高規格の製品とした。性能や反応の速さ、静かさ、意匠の良さなどは生活の質に直結する。少しばかりのお金をケチったばかりに間に合わせの人生は送りたくない。
・修理・省時間化工事・収納区画整理事業
いずれも日々の生活の所要時間を短縮するものである。掃除機のコードリールを巻き直す時間、ドアを優しく手で閉める時間、混沌とした収納から必要な物を探す時間など、それぞれの所要時間は数秒など僅かなものだろう。しかし(掃除機はともかくとして)毎日何十回と繰り返される行動であり、積み重ねることで失われる時間は非常に大きい。
現在私は自宅では秒単位で行動しており、移動は基本的に駆け足である。家事育児に手一杯であり、常に処理能力の100%を超えていて余裕がない。外部と連絡を取れる時間はごく僅かである。その為「時間予算」として金銭と同じように行動に必要な時間の割り振りを行い、徹底して節約している。そのぐらい時間が惜しいのだ。時間は取り戻すことはできないので、何よりも貴重なものであると筆者は考えている。
そういった経緯からも調子が悪いものは修理し、時間短縮ができるものは積極的に採用し、区画整理を断行して無駄に時間を消費しない体制を整えた。
これらは地味だが非常に効果的で、ストレスのない毎日を影から支えてくれている。
・断熱工事
今回の自宅改修事業の最大目的である。自宅には部分的に寒くなる箇所があり、それが原因で十分に温まらないことを体感で分かっていた。今回断熱材が施されているであろう箇所に潜ったり、サーモグラフィーや計算を駆使して科学的に断熱性能を追求することができた。逆に言えば、科学的アプローチでなければ断熱はできない。市販されているプチプチや窓際に置く屏風のような冷気対策グッズは殆ど無意味であることも説明できてしまう。
本来は必要な断熱性能を確保するために断熱材を設置するだけで済んだ筈だが、新築工事の際に工務店が設置した断熱材の施工にミス(粗雑工事)があり、断熱欠損が発生していることが判明した。部分的に寒くなる原因はこれだった。断熱性能を高めるには合わせて気密性も確保しなければならないことを学んだ。またどんなに進入困難な場所でも施主自ら検査することの大切さも痛感した。
断熱工事前後の断熱性能
外皮平均熱貫流率(UA値〔W/m²K〕)
竣工時 UA=0.686 最低温度8℃(断熱等級4超5未満) (参考)最高温度33.5℃以上
断熱施工後 UA=0.556 最低温度11℃(断熱等級5超6未満) (参考)最高温度32.8℃
※土間(写植室)が無いこととした場合 UA=0.447(断熱等級6)
(参考)断熱等級毎の数値(地域区分5の場合)
断熱等級 |
平均熱貫流率 |
最低室温 |
制定年度 |
義務化 |
1 |
|
|
|
|
2 |
1.67
|
|
S55 |
|
3 |
1.54
|
|
H4 |
|
4 |
0.87 |
8 |
H11 |
R7 |
5 |
0.6 |
10 |
R4 |
R12 |
6 |
0.46 |
13 |
R4 |
|
7 |
0.26 |
15 |
R4 |
|
断熱性能は、数値上は明らかに改善した。家全体では断熱等級5を超え6未満(大雑把に言えば5.5程度)で2030年に新築で義務化されるZEH(Net Zero Energy House)水準もクリアできた。これは冬の最低温度の実測値が11℃であることからも裏付けられた。また、土間フローリングであり通常の住宅の造りよりも冷たさが伝わり易い写植室については、他の部屋に接する内壁に断熱材を設置して存在を概ね無視できるようにした。写植室がないこととした場合の断熱等級は6相当となり、十分な断熱性能を確保できたと言える。尤も、トイレなど床の断熱材が貧弱な箇所(フクフォーム2型のまま)は体感上もサーモグラフィーの計測上も他の部屋よりも温度が低い為、改善の余地はあると考えている。
夏は非常に快適になった。冷房は効き過ぎるので風量や設定温度を落としている。風量を最弱にしても昼寝など床付近に居ると寒くなってしまう。また、梅雨明けからお盆明けまでは暑過ぎてとても居られなかった2階もどんなに外が暑くても室温が32.8℃(最高気温38℃の日の18時)で頭打ちとなり、夜も冷房さえ点ければ輻射熱は感じず、2階であっても冷房1時間タイマーで就寝後朝まで寝られるようになった。目が覚めるとしたら外気温が十分に下がっていない日だが、これはどうしようもないことだろう。
我が家が断熱等級6相当と自己判定した妥当性については、断熱等級6の新築住宅に於ける夏季の室温シミュレーション(ダイワハウス、最大約33.5℃)や、身近な人が新築した断熱等級6の住宅2階で無冷房時の9月上旬の実測値(32.7℃)からも裏付けられた。
なお、断熱材を追加した屋根裏に面する天井は全体的には表面温度が最高32℃程度に抑えられるようになったが、一部断熱欠損(筆者の施工不足)があるらしく、ピンポイントに40℃を超える場所があった。位置は特定できたので作業可能な時季に屋根裏に入って対策したい。
使用電力量・電気代(★は断熱工事後)
2023 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
1 |
2 |
3 |
kWh |
221 |
170 |
130 |
151 |
203 |
220 |
169 |
169 |
242 |
384 |
393 |
321 |
円 |
6,896 |
5,238 |
4,216 |
4,752 |
5,893 |
6,054 |
5,366 |
5,327 |
7,209 |
11,197 |
11,535 |
9,586 |
2024 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
1 |
2 |
3★ |
kWh |
307 |
176 |
144 |
136 |
222 |
224 |
193 |
157 |
214 |
445 |
373 |
362 |
円 |
9,284 |
6,153 |
5,430 |
5,365 |
8,050 |
7,198 |
6,400 |
5,638 |
7,807 |
15,455 |
12,049 |
11,774 |
2025 |
4★ |
5★ |
6★ |
7★ |
8★ |
|
|
|
|
|
|
|
kWh |
269 |
200 |
157 |
196 |
257 |
|
|
|
|
|
|
|
円 |
9,298 |
7,512 |
6,081 |
7,213 |
8,507 |
|
|
|
|
|
|
|
数値上の断熱性能とは裏腹に、使用電力量と電気代は断熱工事後の方が前年よりも多い月が殆どだった。
これは、2025年は35℃以上の酷暑が6月下旬に始まってしまい、7月下旬を除いて継続し、9月に入ってもその勢いが衰えない為、冷房代が例年よりも嵩んでいるからと考えられる。事実、2階で冷房を点けて寝られるようになった為、7月から9月迄は少なくともその分の冷房代は上乗せされている。そう考えると、この程度の電力量の増加で済んだことは評価できるのかも知れない。空調費が更に嵩む冬季の統計はまだないので、引き続き効果測定を続けていきたい。
◯総括
2024年12月から2025年7月までの約8ヶ月に亘り自宅の改修に取り組んだ結果、大きな成果を得ることができた。地道な作業を少しずつ積み重ね、気になっていた事や不具合を発見した事はほぼ全て解決することができた。未解決の案件もあるが、元々優先順位が低いものだったので、時間がある時に取り組みたいと思う。
結果、日々のストレスは大きく軽減された。「方針」で掲げた考え方を自宅で実現することができたと思う。特に、力を入れた断熱工事については数値上も体感上も大きく改善し、他のシミュレーションや類似性能の建物と比較して同等の性能が確保されているであろうことも確認できた。今年の非常に過酷な気候でも使用電力量は大きく上がることはなく、大きな手間と金額をかけて断熱改修をした意義があったと思う。
今回、写植に関する活動は引退して全労力を自宅改修に投入した訳だが、これまで意識してこなかったことにより様々な問題が見過ごされて放置され、自分に不利益なこととして還ってきていたことが初めて判った。言ってみれば盲目状態に陥っていたのであり、特定の事に没頭しきってしまうのではなく常に色々な事象に関心を払い、問題意識を持って日々暮らすことがとても大切だ。そうでなかったらこんな事にはなっていなかったと思う。恐らく周りの人達はこのような問題はとうに解決してしまっていて余裕があるから、毎日活き活きと過ごしておられるのだろうと思う。
執筆現在、写植の活動に対する熱意は戻って来ていないし、自信は喪失したままだ(元々自分の活動に対し「これで良い」とは思っておらず、自己評価は極めて低かったが)。自宅改修を終えた今、長引く暑さもあって心身共に疲れ切っている。暫く休息が必要なのかも知れない。
以上、自宅改修に関することや述懐を包み隠さず書いた。
小さな事でも解決できると喜びがあるし、現実世界に働き掛けて何らかの反応があると生きる意味を感じることができる。
そんな誰でも分かることが私には分からなくなってしまっていた。その感覚をここに取り戻せたことをとても嬉しく思う。ごく私的な事ではあるが忘れてはいけない事。その掛け替えのない記録をここに残す。
2025年9月15日 桂光亮月
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