5 写研システムのゆるぎなさ。


 昨晩の興奮冷めやらぬ中、翌日8月6日はまず都内某社に向かった。写研の電算写植システム「Singis」の見学である。見学当時、電算写植については全くの未知だった為、非常に貴重な経験だった。あまり突っ込んだ領域までレポートできていないがご容赦いただきたい。

 早速Singisについての説明を受ける。

Singis全景
Singis全景(画像をクリックすると拡大します)

 本機の概要 組版ソフトがWindowsNT/XPマシン(日立FLORAがベース)上で動作する最新にして最後と思われる写研の「カラー対応の編集機能を持った普及型のページ編集装置」(写研カタログより)である。本体500万円。
 一般PC用の画像データ取り込みも可能で、画像処理用に PhotoshopやIllustratorもインストールされている。 通常はデータサーバ端末「IMERGE」に画像やテキストデータを蓄積しておき、それと連携して使用する。

 文字入力 一般PCで入力されたテキストデータやそれを写研独自のSKコードに変換したものを取り込んで使用する。あるいはモノクロページ編集機「GRAF」で作成・組版した「ページ16」データを使用する。勿論直接入力も可能。
 テキストデータの場合、特定の文字列を写研のファンクションとして扱う事ができ、 例えば

 ☆24□□□□□□◎☆32■■■■■■■■

 というテキストデータがあった時に「☆」をQ数、「◎」をテキスト取り込みの区切りと看做して、「□□□□□□」を24Q、「■■■■■■■■」を32Qで組む事ができるというのが概要である。

 ワークフロー Singisで新規にデータを作成する際はInDesign等と同様に、版面設定→要素取り込み→編集・修正という流れをとる。出力は先述のIMERGEを介して行われ、「SAGOMES」のような校正用プリンター、フィルム・CTPセッター「SAPLS」が用いられる。PDFや他社印刷機へのデータ出力にはRIP装置「サッミズ」が用いられる。

 Singisでのページ編集を実演していただいた。

 文字の扱い 「タショニムフォント」を使用する。写研独自の記号等はパレットから呼び出す事ができ、当然の事ながら単語登録も可能。ルビも一つの文字として扱っている。
 数式はファンクションの入力を殆ど必要とせず、人間が読む順番にキー入力すれば自動的に位置を揃えて組まれる(すばらしい!)。

 詰め 3種類を選択でき、字面詰め(手動機のつめ組み用文字盤のように字幅が規定されている。漢字は詰めない)、均等詰め(em/32とHが選択可)、手詰め(画面を見ながらキーボード操作で文字の位置を調整する)があり、併用も可能。

 画像に対するテキストの扱い 回り込みは、字が避ける範囲を自由に選択可能で、写研システムでは「抑止」と呼ばれているらしい。文字の白フチは文字に対して出ているのではなく、画像に対しての関係で処理される。例えば画像に文字が一部かかっている場合、画像に文字が載っている部分だけが白ヌキ処理され、それ以外は処理されないことになる。
 見出しに敷いた網も「けい線」の指令でできる為、テキストの増減に連動して位置が移動する。画像や図形に対しても「フローティング」の指令によって可能。

Singisのメイン画面と校正
Singisのメイン画面と校正(画像をクリックすると拡大します)

 以上、ごく簡単にレポートしたが、現在のDTPソフトのような外観をしているものの操作は独特で、1960年代から電算に取り組んでいるだけあってあらゆる機能に配慮が行き届いている印象だった。
 各工程ごとに高価な専用装置を揃えるというシステム構成は、DTPが普及しきった現在ではもはやそぐわないものになっているかもしれない。しかし、写研の組版システムの最終到達点を見た気がして胸が熱くなった。

●Singis 諸元表
 写研『Full Digital Networkポケットガイド』(2000年8月発行)から引用
ハードウェア CPU:DOS/V(WindowsNT)
メモリ:384MB、内蔵HD:10.2GB
ディスプレイ:22インチCRT、15インチTFT(ダブルモニター)
入出力:3.5インチFDD(写研データ用)、3.5インチFDD(DOS用)、3.5インチMOD、オンライン
フォント Nパック(レンタルパック)
ソフトウェア 本文組編集、素材編集、文字編集、図形編集、表組編集
インチ・ポイント対応、MS-DOS変換、EPS図形・汎用画像取込み
Adobe Photoshop5.5、Illustrator9.0
外形寸法(幅×奥行×高)・質量

1550×1120×1260mm・105kg

電源 AC100V 5A


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