欧文自動送り欧文自動字幅規定装置
【おうぶんじどうじはばきていそうち】


●欧文や詰め組みも自動字送り

 写植は和文活字が正方形(字送り量が一定)であることをヒントとして日本語の文章を組むために日本で成長してきた技術ですが、当然和文だけでなく欧文を組む機会も多くあります。
 初期の写植組版に於いてどのような操作によって欧文が組まれていたかは手元に資料がなくはっきりしませんが、「R欧文」のサブプレート発売後は文字盤に記された送りem量を印字Q数で換算して字送り量を出し、手動で字送り量を加減しながら組んでいたものかと思われます。

 文献に残る初の「欧文自動字幅規定装置」が搭載された機種は1958年に発売されたSK-4Eです。
 欧文の字幅を13段階のグループに分けて文字盤*に配列し(E欧文)、写植機側の装置でこのグループを検出して自動的に適正な字送り量を与えるという仕組みです。

E欧文文字盤写真
写研の「E欧文」サブプレート(部分・再掲)
アルファベットは文字毎に幅が異なる為、同じ幅を持つ文字をグループ化して文字盤に配列してあります。赤い数字は1/16em(全角の16分の1)単位で、横1列がそのem数に対応した文字です。
「E欧文」の書体は、プロポーショナル送り(欧文自動字幅規定装置)に対応した写植機では自動的にその送り量が与えられるようになっていますが、非対応の機種ではQ数×em/16の換算をした歯数を手動で送ります。

 これによって欧文の組版、特に和欧混植が格段にしやすくなり、オペレータの負担を軽減した上「諸外国にも多数輸出」(SK-4Eパンフレットより)されるなど写植機の活躍の幅を大きく広げました。
 この機能を実現するために、SK-4Eでは段カムと爪金、歯送り規定板による機械式連動を行っていました。近年の電子制御機では穴の開いた検出板を文字枠に取り付け、フォトダイオード等で読み取ってマイコンが所定の送り量を与えていました。

SK-4Eの欧文字幅規定装置の段カム
SK-4Eの欧文字幅規定段カム装置(布施茂『写植教室』p.88より)

SPICA-AHの字づら検出板
SPICA-AHの字づら検出板(亮月写植室にて筆者撮影)

●仮名の詰め組みにも応用

 その後、1970年代以降に広告等で需要が急増した和文の詰め組みにこの欧文自動字幅規定装置が応用されました。
 1975年に発表された「つめ組み用文字盤」では仮名の字面(全角幅の正方形に対し文字が占める範囲)に合わせて縦横別各9段階で文字盤に配列し、これらの文字盤と本装置との組み合わせによって仮名の詰め組みの自動化を実現しました。またこの文字盤を使えば、オペレータによって詰め具合が変わることがないので、詰め組みの品質の平準化もされました(つめ組み用文字盤の設計通り詰める場合「つめS」と指定する。Sはスタンダードの略)。

つめ組み用文字盤
「石井中明朝体OKL」のつめ組み用文字盤(平仮名横組用)
 8/16emから16/16emまでの字幅ごとに文字が配列されています。これを字づら検出対応の写植機で使用すると、自動的に所定の送り量が適用され、画面を使用しなくても詰め印字が可能となります。

 当時は現在のようにディスプレイ装置のついた手動写植機はなく、詰め組みを行うには印画紙の切り貼りや長年の勘と経験に基づく見当による字送りをする必要があり、大変な手間をかけていましたから、この装置とつめ組み用文字盤によって版下作成の労力を大幅に低減することができました。

「つめS」と任意歯送りとの併用も可能で、特に近年の1/32em送りができる手動写植機・電算写植機では主に1/32em詰め・2/32em詰めが用いられます(それぞれ31/32em・30/32em送りと同値)。そうすることで「つめS」よりも更にきつく詰まった詰め組みを自動的に行うことができます(ただし、大級数や見出し等は目でバランスを確認して手で詰めることが望ましいと考える)。

*対応する文字盤(サブプレート)
 1 E欧文文字盤(2/16〜14/16em、13段階)
 2 E欧文文字盤(4/16〜16/16em、13段階)
 3 つめ組み用文字盤(8/16〜16/16em、9段階)

●本装置の搭載状況
搭載

PAVO-10、-J、-JP、-JL、-JV、-K、-K2、-K3、-K6、-KL、-KS、-KV、-KVB、-KY、-B2、-BL、SPICA-AH、SK-4E
※ただしPAVO-Jは横組みのみ、PAVO-Kはオプション

非搭載 PAVO-8、-9、上記以外のSPICA型、上記以外のSK型、SK型より前の機種
不明 PAVO-B、-U、-UP、-KU


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