●本文用写植機に三たび挑戦
ページ物の本文専用写真植字機として開発したSK-4(1957年)、SK-T1(1959年)の失敗があったといえども、写植が取って代わるであろう活版印刷による本文組版は人材不足や賃金の高騰により次第に難しくなりつつありました。
写研ではこういった背景を受け、タイプライター並みに小型軽量かつ安価な本文専用機をと開発に取り組み、1963年10月に卓上型写真植字機「SPICA-S」を発表しました。
上記を開発意図とした本機は完全に新設計で、以下のような特徴を持っていました。
・印字スピードの向上
エスケープ高速送り機構とフラッシュランプを採用しました。文字盤は「メインプレート」方式を初めて採用し、裏面のカバーガラスを省略し保護膜とすることで軽量化を図りました。文字枠も同様に軽量化されました。
・小型軽量化
鋼板製モノコック構造により60kgの軽量な筐体を実現しました。従来機のような重厚長大な印象はなくなり、取り扱いが楽になりました。
・主レンズは本文向けに特化
レンズターレットは6本分。8〜24Qの12本のうち5本を選択して固定し、1本は任意のレンズを着脱可能としました。
発売当初はフラッシュランプによる印画紙の感光がうまくいかない問題がありましたが、感材の改良によって解決されました。
以降SPICA型は本文用写真植字機の決定版となり、印刷会社へ大量に納入されたり、女性の内職用として自宅に置かれたりしました。
SPICA型の高速印字という特性から「スピカ印字スピードコンテスト」(通称スピコン)が写研主催で開かれ、オペレータの技術向上が図られました。規定の20分間で1200字(1秒に1字!)に迫る文字数を打つオペレータもいたとのことです。
●その他の機能、仕様
寸法 |
幅675×奥行580×高さ445mm |
質量 |
60kg |
所要床面積 |
|
機械内容 |
主レンズ |
12本(8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、24Q)から5本選択して固定+1本差替可 |
変形レンズ |
3種(No.1、No.2、No.3)×8形状 合計24形状 |
文字枠収容文字盤 |
メインプレート1枚、サブプレート3枚 |
収容感材寸法 |
254×305mm(印字範囲は最大250×285mm) |
ファインダー |
なし |
点示板 |
白色フィルムによる点示筒 |
電源、光源 |
ストロボフラッシュ |
環境条件 |
|
価格 |
|
→SPICA型
→写真植字機総覧〈写研編〉目次
→写植とは
→メインページ
|