点示板・点示筒
【てんじばん・てんじつつ】
(注)「点示筒」という呼称は亮月製作所が便宜的に使用しているもので、公式なものではありません。
PAVO-JVの点示板(亮月製作所にて)
●印字位置をひと目で確認
写真植字ではその原理上、今印字している文字を直接見ることはできません。
そのため、写真植字機を試作した段階から既に、印画紙上のどこに印字しているかを示す点示板(試作第1号では点示筒)が備え付けられていました。
これは、方眼が刻まれた板または筒にインクで点を打つもので、実際の印画紙上の位置関係や送りと連動して点示器(ペン状のもの)が動くようにしてあります。シャッターと点示器も連動していて、シャッターを切ると点示器が点示板にインクの点を打つようになっています。文字のほか罫線の位置を確認できる機種もあります。
SK型の点示板(布施茂『写植教室』p.26より)
SK型までは点示器が表から点示板を打つ方式でしたが、PAVO型ではガラス製の点示板を裏から打つ方式に変更され(裏点字式表示板)、文字の位置確認がしやすくなりました。
SPICA型ではプラスチック製のロールフィルムが点示筒として用いられています。
その後点示板の代わりにディスプレイ装置を備えた写植機が登場しましたが、複雑な組みを必要としないPAVO型の廉価な機種や、画面に収まらないほどの大判の印刷物を作る必要があるビジネスフォーム専用機(PAVO-B系列)、小型のSPICA型では最終機種まで点示板が搭載され続けました。
●写研は点示板、モリサワは点示筒
写研機では主に点示板、モリサワ機では主に点示筒が用いられてきました。
経緯として次のような話があります(写研『文字に生きる』より)。
1961年、SK-4Eがモリサワの所有する特許に抵触するとして東京地裁に仮処分の申請がなされたとき、4件あった抵触する物件*のうちの一つに点示筒(円筒式表示装置)がありました。
点示筒を除く3件は石井茂吉による新しい考案だったり既に使われてきたものだったりしたためモリサワの権利を侵すものではありませんでした。円筒式表示装置は試作第1号機に既に搭載された公知のものでしたが、これについて戦後に改めてモリサワがした特許申請が「間違って受理され」ており、写研側が敗訴となったとのことです。
以来写研は円筒式表示を避けるようになったということですが、SPICAやPAVO-B系列には点示筒が搭載されており、権利関係についてははっきりしません。
*特許に抵触するとしたSK-4Eの物件(『文字に生きる』より引用)
・欧文組版のための機構
・欧文組版用の文字盤
・円筒式表示装置
・暗箱用遮光板
●本機能の搭載状況
点示板 |
PAVO-8、-9、-10、-J、-JP、-JL、-JV、-K、-K2、-K3、-K6、-KL、-KS、-U、-KU、-UP、下記以外のSK型以前の機種 |
点示筒 |
PAVO-B、-B2、-BL、SPICA全機種、SK-4、SK-4E、試作第1号機 |
非搭載 |
PAVO-KV、-KVB、-KY |
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