印字キー【いんじキー】
●シャッターを切るためのスイッチ
電子制御式の写真植字機に装備されている大きなレバー状のスイッチです。
写真植字機で最も使用頻度が高い箇所で、印字する際に使用します。その一連の動作は以下の通りです。
1 (半押し)採字(文字枠を固定)
2 (全押し)印字(シャッターを切る)
3 (2の直後)次の印字位置へ移動+文字枠固定を自動的に解除(後述)
●機械式の写植機では「主レバー」
従来の機械式の写植機では「主レバー」がこの役割を担っており、主レバーを押し下げると採字(文字枠が固定)され、シャッターが切れて印画紙上に文字が感光するようになっていました。これらの動作は機械的に連動しており、操作にはある程度の重さがありました。
その後SK-3系列の機種ではシャッター作動と文字枠の固定がマグネット式になり(マイクロスイッチと電磁石)、主レバーの操作が軽くなりました。
SPICA-QD の「主レバー」
(2007年5月27日、株式会社文字道主催「MOJI MOJI PARTY Vol.2 100%写植展」にて筆者撮影)
機械式の写真植字機では、レバーの丸い部分を包み込むように保持し、下へ押し下げることで機械的に文字枠を固定、シャッターを切る。
●「印字キー」への電動化で負担軽減
1969年にPAVO型が発表されてからも主レバーが搭載されていましたが、1973年発表の PAVO-K からは現在の機種と同じ「印字キー」方式になりました(PAVO-J、PAVO-8 のみが主レバー方式)。
従来の主レバーでは丸い突起を手で包むように持っていたのに対し、印字キーではその上に手の腹を軽く載せるようになっています。少し押し下げる(半押しする)と採字(文字枠固定)、更に下まで押し下げる(全押しする)とシャッターが切れて印字、文字枠固定が外れて指定された歯数が自動的に送られます。
主レバーを握るときは不意に印字動作に入らないよう腕を浮かすような感じで保持していましたが、印字キー方式では写植機に向かう際に右手を印字キーの上に軽く乗せておけばよくなり、一連の動作が全て電動で行われるのでいっそう疲れにくくなりました。
●印字キー搭載機種の文字枠固定、文字枠自動固定
印字キーが搭載された写真植字機では、印字キーを押下した際の文字枠に対する挙動もボタンにより設定しておく必要があります。
・文字枠固定スイッチ
このスイッチを押すと、文字枠が固定されます。地紋の印字等、印字キーの半押し状態を保持したい時に使用します。
・文字枠自動固定スイッチ(PAVO-KV、-KVB、-KY のみ)
このスイッチをONにしておくと、印字キーを半押しして採字した際、印字キーから手を離しても文字枠の固定が保持されます。この状態から印字キーを全押ししてシャッターを切ると、文字枠の固定が解除されます。
採字とともにディスプレイにその文字が映し出され、この状態で印字位置を移動させることができます。前後の文字の位置関係を見ながら詰め印字する時に便利です。
このスイッチがOFFの場合、上で述べたように、印字キー半押しで文字枠固定、全押しでシャッター+送り、その後すぐに文字枠固定解除の動作を行うよう設定されます。半押し状態から手を離すと、文字枠の固定が解除されます。
採字してもディスプレイに文字が映し出されず、シャッターを切った後に文字が表示されます。
【管理人のコメント】
印字キーを操作すると、「チャッ」「カポン」という小気味よい音とともに写植機の動作する振動が伝わってきてたいへん気持ちがよいです。右手が印字キーに載っている感覚が忘れられない元オペレータさんは多いのではないでしょうか。
PAVO-KYの印字感覚が「他のPAVOよりも少し重い」という話を複数のオペレータさんから聞いたことがあります。高度に電子制御化され、印画紙全面を画面用のメモリに蓄えていることから、マイコンによる制御に若干のタイムラグが生じているということでしょうか。
●本機能の搭載状況
印字キー |
下記以外のPAVO型、SPICA-AP、-APU、-AH、テロメイヤTG |
主レバー |
PAVO-8、-J、上記以外のSPICA型、SK型以前の機種 |
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