PAVO-J 1969年

●従来の“機械剝き出し”を一新、大きな進化を果たした初代PAVO型。機械式ながら欧文自動字幅規定装置を搭載。

PAVO-J写真

メイン2サブ10変形レンズ4JQレンズ1〜3±99H送りQ数連動ベタ送り欧文自動送りインチ送り1/32em単位送り字づら検出送り1・2キー1/16em送りキー1/4歯送りキー割付計算座標記憶欧文ベースライン自動調整くり返し印字折り返し印字水平組円組・斜組像回転スポット罫線線長補正斜線・円・楕円点示板なしLED表示なしダイヤルインジケータ印字キーキー入力

●PAVO型の幕開け

 1960年代、写真植字機研究所(現在の写研)製の写真植字機のベストセラーになったのはSK-3RYでした。これまでの機械式写植機を集大成したような完成された機種でした。
 一方、高度経済成長と写研の技術水準の向上からこの機種に不満が出始めました。レンズの収差補正の不十分さによる大級数印字時の歪みや、機械式であるが故の操作音の大きさ、歯車などの機構が剝き出しで機械的である本体そのもののデザインが主に挙げられます。
 そこで写研では、SK-3RYの後継機のためにプロジェクトチームを結成して開発に取り組み、1969年に新型機を発表しました。それがPAVO-JとPAVO-8だったのです。
 PAVOとはラテン語で孔雀座を意味し、「写植システムに大きく羽根を広げる願いを込めてつけた」(写研『文字に生きる』より)といいます。

 新機種PAVO型が従来の写植機と比べて大きく進歩した点は多くあります。以下『文字に生きる』から引用します。(漢数字・開いたカナのみ英数字に書き換え)
1、高品質の組版ができること。
・平行光束を利用して横送りを行う新しい光学系とシャープで切れ味の良いレンズを新設計したため、大きな級数でも全く歪みのでない文字が得られる。
・7級から100級までのどのレンズを使う場合でも同一ボルトでシャッターも1回ですむため、適正な光量が得られる。
・印字ムラをなくすために、露光量を自動的に調節するプリセットスイッチ回路を採用した。
・文字盤の製造方法を改良して、大級数での文字の品質も良くした。
2、オペレーターが使いやすく、能率が上がるように設計した。
・7級から100級まで、変形文字を含むすべての文字がファインダーに映るので、直し印字やつめ組みの場合に便利である。
・PAVO-Jでは主レンズ、変形レンズが押しボタンにより自動的に変えられる。
・PAVO-Jでは欧文の字幅規定装置がつき、和欧文混植が楽にきれいに組める。
・裏点示式表示板を採用したので、印字位置の確認や清浄が簡単。
・操作音が小さい。
3、親しみやすいデザインである。
・今後ますます増えるであろう女性のオペレーターにも親しまれるデザインで、オフィス的イメージに写植作業の現場を変えられる。

 これら多数の改善点により、印字品質がオペレータの職人的な能力に依存していた従来の機種に比べ習熟が楽になり、能率が30%向上したといいます。
 また、使用する文字盤は先発のスピカ型と共通の規格とし、更に両面をガラス層とすることで(スピカ用は文字盤裏の保護膜が剝き出し)、扱いやすさと耐久性を両立させることに成功しました。文字枠への取り付けはマグネットとピンによって固定されるため事前の微調整が必要なくなり、SK型と比較して印字の精度が向上しました。
 PAVO-JとPAVO-8を源流としたこのPAVO型はたちまち人気となり、最終機種のPAVO-KY(1987年)まで長きに亘って手動写植機界を牽引しました。

【管理人のコメント】
 PAVO-JとPAVO-8が電子制御だったという話を散見しますが、両機とも機械式でした。写研の手動機で初めて電子制御を実現したのはPAVO-K(1973年)です。
 映画『男はつらいよ〜寅次郎恋愛塾』(1985年)に登場した機種にはLEDによる表示パネルがついているため、本機ではありません。

●その他の機能、仕様

寸法 幅1100×奥行800×高さ1350mm
質量 320kg
所要床面積 幅1750×奥行1300mm
機械内容 主レンズ 主レンズ24本(7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、24、28、32、38、44、50、56、62、70、80、90、100級)
変形レンズ 3種(No.1〜3)×8形状 合計24形状
文字枠収容文字盤 メインプレート2枚、サブプレート6枚
収容感材寸法 254×305mm
ファインダー 全級数(7〜100級)、全形状(正体、平体、長体、斜体)投影可能
点示板 ガラス板裏点示式
電源、光源 AC100V 50または60Hz 白熱電灯
環境条件  
価格 205万円(1974.1.1現在)

 


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