PAVO-KY 1987年

●「図形機能」で版下作成が可能に。
 あらゆる機能を備えた写研写真植字機の集大成。

PAVO-KY

メイン2サブ10変形レンズ4JQレンズ1〜3±99H送りQ数連動ベタ送り欧文自動送りインチ送り1/32em単位送り字づら検出送り1・2キー1/16em送りキー1/4歯送りキー割付計算空1〜3座標記憶欧文ベースライン自動調整くり返し印字折り返し印字水平組円組・斜組像回転スポット罫線線長補正斜線・円・楕円15型CRT点示板なしLED表示なし印字キーキー入力

●ディスプレイ装置をフル活用

 印画紙全体を画面に表示できるPAVO-KV-KVBが登場してから4年、さらに進化した写真植字機が登場しました。
 “写植機の王様”PAVO-Kの系譜であるPAVO-KY。電子制御式手動写植機で考えうる全ての機能を持ち、その上で画期的な「作図機能」が搭載されました。
 写植機には従来からスポット罫線機能が搭載されてきましたが、あくまで縦・横の直線を引く為のものでした。しかしPAVO-KYの作図機能を用いると、縦・横の罫線だけでなく斜線・円・楕円・円弧・楕円弧も引けるのです。
 自由なレイアウトは罫線だけでなく文字も同様に可能で、PAVO-KYでは従来面倒な操作が必要だった像回転斜め組み・円(円弧)組みをボタン操作だけで自動的に実現できるようになりました。また、変形レンズは5°刻みで駆動し、極めて豊かな文字表現を可能としました。
 従来からの機能にも磨きがかかり、字づら検出をメインプレートも含む全文字枠に拡大、コメント情報の2ページ化、記憶できる座標の大幅な増加(16箇所×6ページ化)、像回転の最小単位が1°等、様々な改良が為されました。
 こうして版下作業を写植機上で完結させることもできるようになり、高性能さが重宝されて大手出版社から個人企業まで様々な分野で活躍してきました。

●写研最後の手動写植機

 写研の組版システム開発はこれ以降電算写植に全て移行し、PAVO-KYが写研最後の手動写植機となりました。しかし手動機が開発されなくなってからも暫くは版下を必要とする印刷の需要が依然としてあり、DTPにシェアを奪われる1990年代中盤までこの機種が生産されていたと言われています(未確認)。製造期間が長く、手動写植機としては最も知られた機種です。
 現在でも写植オペレータによる美しい印字と写植書体が必要とされており、本の装丁等にはしばしば手動写植機による印字が用いられています。

【管理人のコメント】
 私が写植というものを知ったのは中学生の時に初めて見たPAVO-KYからでした。写植機には画面がついていて、ある程度自由に文字を組めるものなのだと思い込んでいましたが、こうして写植機の歴史を振り返るとそれは最近になってのことであって、数十年をかけて少しずつ機能を備えていったことが分かります。
 PAVO-KYは最高の性能にして最後の手動写植機となりましたが、組み込まれている一つ一つの機能がどういう経緯で採用されていったかを考えてみると、写植がどういう時代を生きてきたのかがよく分かると思います。「手動機で出来る事は全てやった」という写研の回答が本機だと思っています。

●その他の機能、仕様

寸法 幅1200×奥行800×高さ1280mm
質量 330kg
所要床面積 幅1950×奥行1300mm
機械内容 主レンズ 主レンズ24本(7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、24、28、32、38、44、50、56、62、70、80、90、100級)×JQレンズ(3種)
変形レンズ (長体、平体、斜体5°おき34種)×4種(No.1〜4) 合計144形状
文字枠収容文字盤 メインプレート2枚、サブプレート10枚
収容感材寸法 305×305mm
(印字範囲は300×300mmで、感材のセットは縦・横自由)
ファインダー 全級数(7〜100級)、全形状(正体、平体、長体、斜体)投影可能
文字ディスプレイ ブラウン管 15インチ 白地に黒文字(反転可能)
電源、光源 AC100V±10% 50または60Hz 消費電力800VA 白熱電灯
環境条件 動作温度範囲5〜35℃ 動作湿度範囲20〜80%
価格 600万円(1988年、写研『写真植字機価格表』)
700万円(1989年、取材による)

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