●過去だより901〜925
2015.1.18(日) 925 4人の「21」面相
【文字関係】データの整理をしていたら、一昨年に和文タイプライター「パンライター」について調べた時の記録が残っていました。
パンライターはかつて日本タイプライター株式会社(現:キヤノンセミコンダクターエクィップメント株式会社)が製造していた簡易型の和文タイプライターで、1984年から1985年にかけて発生した「グリコ・森永事件」では脅迫状等の印字に使われました。
「どくいり きけん たべたら 死ぬで かい人21面相」と打たれた紙が商品に貼ってあったということですが……
(管理人による再現)
それに使われた書体は「細丸ゴジック体横打用」*。写研の「石井細ゴシック体KS」に酷似した書体です。どのような経緯でこの書体が生まれたかは、私は知りません。私が所有する「PLUS」社のパンライターと同じ活字でした。
*細丸ゴジック体横打用 日本タイプライター株式会社『文字索引—2376標準配列—』(1983年)よる名称。「細丸ゴジック体横打」という表記もある。この書体を「岩井活字センター」製としている人もいるが、岩井活字センターとは日本タイプライターの岩井工場にあった部門のことである。間違いではないが、日本タイプライター株式会社製と言えば足りる。
この「かい人21面相」に使われている「21」ですが、4通りの打ち方があります。
パンライターには盤面活字の配列通りに記載された文字盤が取り付けられています。
盤面の中央奥に、上から半角数字、全角珠算数字、全角数字の活字があります。これらを「2」「1」と打ちます。
もう一つは、盤面の左右両側に用意された予備活字用のスペースに差し込まれた二桁数字の活字です。予備活字が差し込まれていなければ、ここに「21」の活字があります。
細丸ゴジック体横打用の場合、実際に印字してみるとこうなります。
以上により、グリコ・森永事件で使われたのは、予備活字用スペースの穴埋めに差し込まれている二桁数字の活字「21」であると分かります。パンライターの使い手は予備活字をあまり買っていなかったと見ることができます。
事件の真相解明には何の役にも立たないでしょうけど、「どくいり きけん〜」を和文タイプライターで完全に再現したい方は参考にしてみてください。
*
こういう事は、現物がないと分からないのです。
印字の手段を変えながら書体さえ生き残っていけばいい(印字するための機械を生き長らえさせることは必要ない・大切にしなくても差し支えない)という考えは、書体を道具として捉えた場合は理に適っていると言えますが、それでは印字された時代を考証することは出来なくなります。
書体が生まれた時代に使われた以上、当時の印字の手段を生きた状態で遺していくことが重要なのです。業として写植に携わられる方の他に、生きた写植機に触れられる機会は、大阪DTPの勉強部屋さんの催しや株式会社文字道さんの「moji moji Party」ぐらいしかありません。
書体さえデジタル化されれば、写植機や和文タイプライターは要らない、それでいいのでしょうか。こんな些細な事でさえ分からなくなってしまうのに。
2015.1.16(金) 924 一歩踏み出してみろ!
【日録】「(その事をよく分かっている)人のアドヴァイスに対して口答えしているようじゃ、何も変わらない。そういう考え方もあると受け止めてやってみればいいじゃないか。それで上手くいけば御の字だし、自分には合わないと思えば今後やめればいい。何もやらないうちにつべこべ言うな! 一歩踏み出してみろ! 自分の殻に閉じ籠っていないで、違う世界の人の話を聞いて、視野を広げろ! 自分から何もしなければずっと平行線のままだ。お前はそれでいいのか? 嫌ならやってみろ! これだと思った事をどうしても叶えたいなら努力しろ! 上手くいかない事もあるかもしれんが、努力しなきゃ上手くいくものもいかんぞ。いつまで経ってもそのまんまだぞ!」
……ある方の言葉が反復できるほど強く心に残った。折に触れて参照したい。
2015.1.12(月祝) 923 先達の灯り
【日録】お世話になっている人達と、喫茶店で小会議というか、話をさせていただく。
先をゆく人達が生み出してきた智慧や経験談は実感が込もっていて説得力と即効性がある。不安になりがちなこの前途を「大丈夫だよ」と明るく照らしてくれる。
恐らく先達も同じような気持ちで前進してきたに違いない。その中で漫然と進まず、一つ一つのことを意識しながら解決し、その過程を残してきたことを有難く思うし、ただただ尊敬するばかりだ。
意識的に生きていくことは難しいことだが、それが何かを成し遂げるための唯一の方法だと、私は思う。
話を聞いてくださったお二方、本当にありがとうございました。
2015.1.10(土) 922 D800、シャッター不調
【日録】愛用の「Nikon D800」、またしても不調。
10月にローパスフィルター清掃に出した後から、撮影後パネルにエラーが表示されて絞り値とシャッター速度が変えられなくなる症状がたまに出ていました。
年末には毎回その症状が出るようになり、更にライブビューをしようとした時もボタンを押すとミラーアップを一瞬してすぐミラーダウンするので、ライブビュー撮影ができなくなってしまいました。
ローパスフィルターに頻繁に黒い油が飛び散るだけでも不審ですが、20万回のレリーズに耐える筈のシャッターが不調とは、何のための上位機種なのか分かりません。8年前に買った「D80」はローパス清掃の必要も機械的な不調も全くないのに……。大量生産の工業製品である以上、ある程度不調が出ることは仕方がないことなのかもしれませんが。
恐らくはシャッターユニットの交換が必要だろうとのこと。これでどちらの症状も治まることを祈るしかありません。
2015.1.4(日) 921 同じ時代を生きてきた
【日録】高校時代の部活の同窓会兼新年会に行ってきた。
十数年経った今でもこうして毎年集まっている。私は事情によりあまり積極的に参加してこなかったので、再会する度に仲間の変化が大きく感じられる。
仲間からも「痩せたというか、引き締まった」とか、色々と感想を貰った。自分では全くその自覚はないが、こんな人間でも少しずつ変化しているということなのだろう。
お互いに「変わらない」と言っているが、確実に年齢の影響は出ている。その度合いは違うけれども。だけど、学生時代に発揮されていたそれぞれの人柄は変わらない。「変わらない」というのは、その本質を見ているからこそ言える言葉なのだ。
今迄ははっきりとした理由があって参加しにくさを感じていたけれども、久し振りに顔を合わせてみたら、同じ時代を生きて一緒に年を重ねていくことの醍醐味を感じていた。自分の中にそれを感じ取ることのできるものが生まれ、“分かった”のだ。ここ数年にあった出来事や出会ったものから本当に大切なことを学び、ようやく自分を許せたのだと思う。
2015.1.3(土) 920 特別でない 明日のために
本年もよろしくお願いいたします。
昨年は、写植ファンサイト管理人としては安定期とも言える活動状況でした。写植の催しで写植の説明員もどきをすることにも慣れました。また、書体デザイナーの今田欣一さんにご縁があり、色々とお世話になりました。誠にありがとうございました。
音楽制作部でも写研関連の歌を4曲復刻し、写植の催しで披露させていただきました。権利の関係で私のサイト上では公開できませんが、忘れ去られようとしていた音楽が再び人々の耳に届くことになり、光栄でした。短期間で4曲仕上げるというハードルの高いものでしたが、良い経験をさせていただきました。
イラストは作品と呼べるものは2015年用年賀状の1枚のみでした。年賀状にはあのキャラ(謎)を使いたいと思っていたので悔いは残りましたが、2014年は“非亮月”の面で一年通して多忙だったため、致し方ありません。
さて、ここから「日録」までは管理人自身の為の記録目的が9割です。抽象的かつやや重い話ですので、どうしても興味のある方だけお付き合いくださいませ……。
「本当はこれなのです」と確信した方向へ、1年間かけて確実に歩みを進め、その先にあるであろうと思っていた領域を体感している……というのが現状だと思っています。
やり遂げられて本当によかった。自力でできたとか運が良かったというよりは、周りの人達が強力に助けてくださって、その人達から受け取ったものを糧にきちんと実行できたから、今の自分の境遇がある、という感じです。
2014年は日当たりの良い難所を歩き続けるような、穏やかさと険しさを併せ持った一年でした。そしてそれは年を越えても続いています。全てが真剣勝負で、亮月としての活動に注ぐべき時間と熱意をそちらへ振り向けていることは確かです。けれども、どうしてもこの難所は越えなければならないのです。
2015年を展望できる場所にはまだ来ていません。しかし、展望するものがどうあってほしいか、その為にどうしたら良いかははっきりしています。2014年は本当に短かった。一日一日を大切に、少しずつ積み重ねて、丁寧に生きていきたいです。
特別でない 明日のために。
(北白川たまこ『ともろう』より)
*
【日録】少し遠い街へ初詣に出掛けた。昨年と同じ場所だった。
前日に降った雪が残っていて、穏やかな日差しに少しずつ解けていた。
三が日ということもあって、出店が沢山あり大勢の人が来ている。手水鉢に行列が出来ている。田舎住まいの自分にとってこんな初詣は初めてで、子供の頃のように新鮮な気持ちだった。
おみくじは大吉だった。自分の今の境遇を見通しているような、そっと後押ししてくれるようなことが書いてあった。きちんと足を進めていきたいと、身が引き締まった。
今日は荷物が多かったので主力の一眼レフ「D800」にはお休みいただき、昨年秋に外装を修理した「D80」に、明るい広角レンズ「AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED」を装着してお供にした。APS-C フォーマットの D80 では画角が35mmフルサイズフォーマットの30mm相当の画角となる。背景をぼかして広めに写し込みながら主要被写体を写せるので、周囲の状況を捉えながら立体感を出せる。その場に居るかのような写真が撮れるのがいい。
また、アクリル画のように濃厚な D800 とは違い、D80 は水彩画のように澄んだ写真が撮れる。D80 しかデジタルカメラがなかった頃には気付かなかった、このカメラの良さが分かった。
天気が良かったとはいえとても寒かった。帰り道に喫茶店へ飛び込む。温かいコーヒーを飲みながら、同行人氏と「もう一年経ったのか……。」と時の流れの速さを分かち合った。ここを読んでいるかは分かりませんが、一日ありがとうございました。
2014.12.30(月) 919 前向きな気持ちで繋がる場所
【日録】(後日記録)所属サークルの忘年会に参加した。
この場所に来るといつも、人との繋がりの不思議さを感じる。今回は、新しい世界を探索したいと言っている後輩と一緒に行った。知らなかった人と料理を作ったり、ゲームをしたり、話をしたりしているうちに打ち解ける場所。後輩も全く心配なく馴染んでいて嬉しかった。
人が前向きに繋がるのに、年齢も性別も関係ない。これは写植研究の活動をしていて強く感じることだ。そしてこの場所では、それぞれの生き方や考え方を強いるでも否定するでもなく、お互いが何か言うでもなく全てを受け止めている。ここに来た人達に一つ共通しているのは、それを当たり前のこととして生きているということだろう。仕事の話や愚痴も一切出てこない。だからこの場所は、色々な人が集まっているのに無理なく居られる。
楽しい時間は早く過ぎる。帰ろうと思っていた時刻をとうに過ぎていて、帰宅した時には日付が変わっていた。一年の最後にとても楽しい気持ちを持ち帰ることができた。
主催者さん、サークル内外の皆さん、本当にありがとうございました!
2014.12.27(土) 918 変化への抵抗
【日録】(後日記録)友人宅で恒例の忘年会。
お金を出し合って普段食べられないものを頂きながら、一年を振り返る。この場所に来ると、一年が終わるという実感が湧いてくる。
私にとっては目まぐるしくもとても充実した一年だった。その様子を友人達は見守ってきたし、私も友人達を見守ってきた。その率直な感想や意見をぶつけ合った。おそらくは“変わらないもの”であり続けてほしい物事が変わろうとしていることに、大きな抵抗があるのだろう。それは私も持っている感情だ。だから、反論せずに受け止めた。
年を重ねる毎にあまり飲めなくなってきた。体が対応できなくなってきただけでなく、飲酒を意思疎通の手段にしたくない気持ちが強まってきたのだ。無理して飲酒した結果人様に迷惑をかけたことがあるので、付き合いで飲むような手合いはもういいと思っている。これ以上は危ないと思う二歩手前でお酒を断った。それからも飲み続けた友人は、案の定悪酔いして苦しんでいた。
変化の度合いが大きかった私に毒づきながらも、寝床を貸してくれた長い友人。性格も考え方もまるで違うのに、付かず離れずでずっと変わらずうまくやってきた。翌日の別れ際に「良いお年を」と手を振ってくれた。いつもありがとう。玄関から出ると、暖かかった友人宅の中とは違い、午前の街は冷えきっていた。
2014.12.27(土) 917 エリザベス!
【日録】
買ってしまいました。
フェンダージャパンのジャズベース「JB62」の 3TS(スリートーン・サンバースト)です。
ずっと借り物のベースを使ってきましたが、ベースを弾きこなせそうだという見通しが立ち、ぜひ自前のベースを使いたいような機会が近い将来あるため、購入に踏み切りました。
全く弾けなくて苦しんでいた頃から「ベースを買うんだったらこの機種にしよう」と決めていたので、とうとう叶ってとても嬉しいです。
機種選びの動機はヘッドフォン「AKG K701」の時(→2012.1.19の記事参照)と同じような事情がありまして……その辺りはまあ、いいじゃないですか。良いものを長く使いたいと思った時に選択のきっかけになり、使う際の気持ちに良い影響を与えるならば、それでいいと思います。
浮気はしません。一生大切にします!(←なんか楽器に言う台詞ではありませんが・笑)
2014.12.26(金) 916 容量いっぱいのひと月
【日録】怒濤の如き12月でした。
だよりを後追いで書き、やっと追い付きました。
どうしても最優先に進行しなければならない案件があり、他の全てをストップして取り組んできました。荒波に揉まれながらも楽しく前向きに渡り切った感があります。現在進行形です。こんなに過密スケジュールで容量いっぱいの月はなかったように思います。
年賀状はまだ案すら出せていません。今年は投函できないか、とても遅れると思います。ネットでも繋がっている方にはこの場を借りて事前にお知らせしておきます。そしてお詫び申し上げます。
先日の誕生日にお祝いの言葉や贈り物をくださった方、本当にありがとうございました! 自分のことを忘れないでいてくれる人がいるということがとても心強く、あたたかい気持ちでいます。恩返しができるよう、日々大切に生きていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
2014.12.20(土) 915 ベースで初合奏
【日録】友人宅にて数人集まり、近い将来に演奏する機会のために楽器の練習と打ち合わせをした。
私以外は音楽がメインの趣味の人ということもあり、手慣れたもので、パート分けや演奏順序等、さくさくと決まっていった。それに基づいて合奏してみたら、もう大まかな形は見えていて、あとは磨き上げるだけだと感じた。
私は主に、前々から挑戦していたベースを演奏しながら歌うことにした。演奏だけでもかなり難儀していたので無謀だと思っていたが、割と皆の演奏についていくことができていると感じた。以前はあまりにも弾けなくて「ベース大正琴」に逃げることも本気で考えていたが、地道に少しずつ練習してきたことを発揮できてよかった。楽譜を読みながら演奏することができないのでいつも暗譜しているが、それも良い訓練になっていたのかもしれない。
とは言っても初心者であることには変わりないので、少しでも他のパートの完成度に近付くよう、本番の日までしっかり練習していきたい。
メンバーの皆さん、本当にありがとうございました。
2014.12.17(水) 914 真っ白け!
【日録】電車で帰宅中、「真っ白け!」という声で目が覚めた。
窓を見ると大雪。停車した途中駅のプラットホームには粉雪が積もり、開いた電車のドアから雪が降り込んでいた。降りる駅まではまだ40分ぐらいある。無事帰れるのか不安になった。
次に目が覚めたのは降りる駅のひとつ前。自分の膝に誰かが座ったと思ったら、以前お世話になった人達だった。全く思いがけない再会だった。電車の中はがらがらになっていた。
外の景色は40分前よりも深そうな雪景色。駅から車で帰らなければならないのに……。
話を聞くと、タクシー会社に電話をかけても車が出払っているので行けないというので困っているとのことだった。
降りる駅に到着し、吹雪の中を駐車場へ。全員送り届けることにした。この雪では外へ出る人はいないのだろう、車が殆ど走っていないのが救いだった。1時間ほどかけて全員を無事に送り届けることができた。
車のタイヤをスタッドレスに履き替えたのはつい昨日だった。突然の大雪には困惑したが、思いがけない出来事に何だか気持ちは温まっていた。
2014.12.15(月) 913 書体買い取り派に戻ります。
【日録】使いたかった書体をまとめて購入しました。
これだけではありませんが……。
これまでフォントワークスの LETS に加入してきたのですが、今回の契約限りで脱退しようと思っています。そもそも紙面をデザインして印字する機会が少ないこと、どうしても使いたい書体は写植を打ってでも使うこと、全書体一括契約でも使いたい書体が限られているので多書体を選べる意義が私にとって(鑑賞する以外に)あまりないこと、そのため買い取りで書体の使用権を持っている方が結果として安く済むこと等が理由で、使いたい書体だけを所有することにしたのです。LETS 専用の書体が使えなくなるのは割り切って、代替となるものを探して購入しました。
若い頃だったらもっとディスプレイ書体を充実させただろうと思いますが、今の私には基本に忠実なこういった書体があれば全く不足はありません。年間契約方式は新書体が追加投資なしで使えるので悔しい思いをするかもしれませんが、自分で印刷原稿やウェブ上の素材を作るときは新しさや派手さを求めないし、写植があるので、今のところ Mac で使う書体はこんな感じでまあいいかなと思っています。
2014.12.12(金) 912 カメラ沼からの脱出?
【日録】カメラ修理店に見積もりに出していた昔のコンパクトフィルムカメラを返還していただきました。2年前に譲り受けた「オリンパスペンS3.5」(→2012.12.17の記事参照)と先月入手した「ミノルタハイマチックF」の2台です。
外装の状態は良かったのですが、ASA感度ダイヤルが欠品でした。
小文字の minolta のロゴが素敵。原子核と電子のマークも素敵。距離計連動のピントリングも、赤いランプも……。
しかし、修理代は2台合計でかなりのものでした。それに、撮影可能なフィルムコンパクトカメラは「KONICA C35」を既に持っています(→2009.9.8の記事参照)。どちらもいいカメラなのですが、死蔵はしない主義なので、使わないものにお金はかけられません。ということで、修理をせずに引き取り、亮月製作所の備品としないことにしました。物に愛着が湧き過ぎる嫌いがあるので、管理人苦渋の決断です。
ただしカメラ店によると、修理は可能とのことだったので、処分せずにしばらく保管することにしました。何かの機会に放出したいと思います。
2014.12.7(日) 911 さよならというフィルター
【日録】「さよなら運転」や閉店間近という話や記事を目にするだけで感情移入し、涙ぐんでしまうことがある。
今日行った店で会計をしたとき、貼り紙を見て「今年いっぱいで閉店なんですね」という話をした。「近いもので。残念です。」と私。「サービス券、よろしければ。」
……同行人氏は貰わなかった。
「近いけど、それほど頻繁には来ませんよ」という意思表示もまた、正直な思いであると解釈できる。終わってしまうからといって特別扱いせず、あるがままに対峙することは実に難しいことで、このようにいつでもフィルターを通さず客観的に見られることは、いつでも感情移入し過ぎる私にはとても新鮮だった。
2014.12.3(水) 910 新たな道を行く人へ
【日録】友人から、音楽活動を無期限で休止するという連絡があった。
一緒に音楽を出来なくなることは、とても寂しい。
しかし、その人にとって生きることそのもののように見えた音楽を手放すという決断に、新たな道を選ぶことへの覚悟の強さを感じ取った。
どうかどうか、友人に幸あれ。
2014.12.2(火) 909 直球だけでいい
【日録】嘘をつき通そうと思っていたら、その相手から痛みを伴って還ってきたと感じたことがあった。間違った印象を与えたことが歪みを作り、自分にとって耐えられない反応となって現れたのだ。
自分が原因でそういう気持ちにさせたり、なったりすることは許せない。だから白状して謝った。私には体のいい嘘なんて絶対につけない。ついたとしたら必ず還ってくる。そんな思いを周りや自分がするぐらいだったら、不器用でも直球だけ投げて生きていく方がずっといい。
嘘をつき通そうとした自分が、眠れなくなるほど悔しかった。
2014.12.1(月) 908 身辺整理の波
【日録】たまに身辺の整理をゼロからしたくてたまらなくなる。
その波がまた来てしまった。
自分に対して効果がないものを手放したいと思った。全然使っていないのに登録しているもの、費用(または時間)対効果が低いことが判り代替案がはっきりしているもの、修理したとしても使う見込みがないもの……などなど。
そういったことに時間や労力、気持ちを取られるぐらいなら、その分を自分が本当に使いたいことに振り向けたいのだ。余裕がないのではなく、単純に勿体ないと思う。
年齢を無駄に重ねてきてしまったので、このごろは切にそう思うし、時間の流れはあまりにも速過ぎるとしばしば感じる。その中で相手にしていられるものはとても限られている。だからこそ、自分自身をよく点検し、積み上げ直し、軽快に動き易くする必要がある。
整理したからといって何かが変わる訳ではないことは、整理のことをここに記録する度に書いている。ただ、整理によって出来た隙間は、切り捨てたものが費やしていたのであって、自分自身で作り出したものなのだ。その時、自分の振る舞い方が整理の前の自分と違うことは、明らかだ。
使うものしか持たない。効果があるものしか相手にしない。人生はきっと短いのだから。
2014.11.24(月振) 907 冬を越したら
【日録】果てしなく続く名曲発掘の旅。
ザ・リリーズ『恋に木枯し』(1976年作品)。
リリーズと言えば『好きよキャプテン』のイメージが強すぎて、しみじみとした青春歌謡ばかり歌っているのではないかと思っていました(※筆者は当時生まれていない)。それでも気になり、シングルA面を大まかに網羅した『ゴールデンベスト』を購入したものの、幼少の頃から何度も耳にした『好きよ〜』のイメージが刷り込まれ過ぎており、それに合わないと思った後年の楽曲は敬遠気味でした。
今回偶然このアルバムを見付け、ジャケットの印象の良さと某通販サイトの試聴で「間違いない!」と直感し、購入に至りました。
作詞を伊藤アキラと森雪之丞、作編曲を森岡賢一郎と萩田光雄で固めた渾身の一枚。1970年代後半の作品ということで、当時流行したディスコミュージックの要素が散りばめられ、跳ねるようなリズムと丁寧で垢抜けた編曲が心地良く、地声寄りの歌声もあって『好きよ〜』に感じた暗さのようなものは全く感じませんでした。王道のアイドル歌謡曲とディスコ的な要素を強め洋楽を意識したより濃い楽曲が交互に納められている印象です。『恋人通り』『雪山キャッホー』『冬日記』『KNOCK OUT』『恋は魔法』は特にディスコ的で気持ちいい。個人的には『恋人通り』の歯切れが良いリズム感と東洋的なストリングスが最高です。
直感通り、間違いなく名盤です! 歌謡曲好きは定価を超えてても買うべし!
全曲伴奏を再現しながら歌いたくなるような完成度の高いものばかりですが、中でも心を捉えてやまなかったのは、1曲目の表題曲『恋に木枯し』でした。「♪カゼをひいたら大変/恋もできない」と風邪薬のコマーシャルにもってこいのキャッチーな歌詞と曲で始まります。そして、春は、夏は、秋は……と振り返り、あぁ冬を越したら……という感慨深く強い想いが伝わってくるのもいい。
詞曲とも素直で屈託のない歌は私にとって直球ど真ん中で、どうしようもなく惹かれました。コマーシャルに使われたという記録はありませんが、この季節、街やテレビなどから流れていたらいいなと思うのは私だけではない筈です。
あまりにも良いのでほぼ毎日聴いています。このアルバムを聴くと、例によって2014年の冬の出来事や心境をはっきりと思い出すことになるでしょう。
(BGM:ザ・リリーズ『恋に木枯し』アルバム/1976年作品)
2014.11.21(金) 906 台湾からの贈り物
【亮月写植室】昨年8月に写植室をご見学いただいた(→レポート)台湾のタイポグラファー・柯 志杰さん(twitter:@buttaiwan)から、執筆・出版された御本を頂きました。
『字型散歩』(柯 志杰・蘇 煒翔/臉符出版)です。
ご本人によると、「台湾の町中の書体について、中国・日本から受けた影響や書体・フォントの基礎知識など、 中国語書籍にまだない啓蒙的な本になっています。」とのこと。
図版が豊富で、言わんとしていることは漢字を読めば何となく分かります。台湾の書体事情について、興味深く、楽しく読み進めることができました。戦後に日本の書体が台湾へ輸入され、以来かなり強い影響を受けています。そのため、日本の書体好きにとっても読んでおきたい内容です。
また、この本には、昨年来訪いただいた際に撮影された当室の写植機や文字盤の写真も掲載いただきました。
昨年のご訪問は、柯さんの大きなプロジェクトの中のひとつだったのです。こうしてお役に立つことができてたいへん光栄です。
巻末の「特別感謝」には、モノタイプやモリサワの名に並んで亮月写植室の文字が……。このような欄に載せていただくなんて、感涙であります。
台湾で出版された本ということで入手はやや難しいかもしれませんが、ぜひ手に取ってみてください。
2014.11.15(土) 905 バトンタッチ
【日録】8年半愛用してきた携帯電話「N600i」が寿命を迎えようとしていました。
小ささ、デザイン、電池の持ち、機能の少なさを重視して選んだ機種で、修理不能になるまで大切に使うつもりでいました(→2006.6.18 購入当時の記事)。
2年ほど前に充電池を交換、その後カメラ機能が動作しなくなりながらもそのまま使ってきましたが、今週に入ってからとうとうヒンジがぐらぐらになり、開ききると液晶画面に何も表示しない状態に陥りました。
ドコモで確認するとこの機種の修理対応は終了しているとのこと。小ささとシンプルさは唯一無二だったのでとても残念です。止むなく機種変更をすることになりました。
もちろん、スマートフォンにはしません。
普通の携帯電話の選択肢はごく限られていたので、今回はある程度妥協せざるを得ませんでしたが、動作が軽快であること、常時ポケットに入れて持ち歩いても嵩張らないこと、外観がシンプルであることを基準に選びました。
画面と本体がすごく大きい! 今までが小さすぎたのか。
キーの書体も重要な決め手でした。検討していたもう一つの機種は仮名がMSゴシックだったので却下。日常的に見る文字こそ無意識のうちに使い手の心理に影響するので、疎かにできない要素です。ん!? このひらがなは……?
N600i には自分の人生の最も重要な時期を支えてもらいました。時には土にまみれ、雨に降られ、それでも傷めないようにと大切に使ってきました。限界までお世話になり、本当にありがとうございました。長い間お疲れ様でした。
N600i は特殊な機種なのかデータ移行が電話帳しかできなかったので、メールは写真に撮って保存しました。画面が全く映らなくなる前に撮っておくことができてよかったです。
新しい電話機は半日かけて詳細設定を終わらせ、ようやく本格運用となりました。これからまた長い期間、良き相棒となりますよう。
2014.11.8(土) 904 時間は粛々と次の出来事を連れてくる。
【日録】街へ出ると、年末の装いでした。
Nikon D80・AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED・絞り開放・AE(以下同じ)
15階の展望室から外を眺めると、2代目の大名古屋ビルヂングが伸びんとしていました。
まだあと2ヶ月ある。もうあと2ヶ月しかない。
時間は淡々と流れ、粛々と次の出来事を連れてくるのです。
2014.11.3(月祝) 903 心強さの欠片を集め
【日録】昨日から今日にかけ、何人かの友人達と時間をかけて話をするため、立て続けに会った。
それぞれ半日かけて悩みを聞いて意見したり、お互いの近況を話したり、相談に乗ってもらったり。
相手によって自分の立場は変わる。その様子を相手は見ることができない。自分の一部だけを見てもらっていることになる。それは、自分から見た相手の姿にも同じことが言える。相手には、自分の知らない姿が必ずどこかにある。
ひとつだけ共通していることは、会った誰もが前へ進もうとしていて、あるいは前進した結果を見せているということだ。自分の身ひとつで長い時間語り合えるということは、感覚やものの考え方の根幹に相通ずるものがあるということなのだろう。それぞれの立場で見聞きし感じてきたことがこうして共有され、役に立っているであろうことは、相手に自分の一部を託しているようで、有難くて心強く思う。
2014.11.1(土) 902 降られても健気に
【日録】雨が止むのを待って、県内のコスモスの名所へ行ってみました。
Nikon D80・AF-S DX VR Zoom-Nikkor 16-85mm f/3.5-5.6G ED・絞り優先AE(以下同じ)
何百メートル四方が一面のコスモス畑でした。
雨上がりということもあって見物客は殆どおらず、この景色をゆっくりと独占できました。
晩秋の冷たい雨にも負けず健気に咲く、鮮やかなコスモス。
明後日には全て刈り取られてしまうといいます。この花の見納めでした。
今日の外出の裏テーマは、先日復活させた Nikon D80 の現役復帰でした。
8年前の機種ですが、低感度での透明感と青や緑の発色は今でも心惹かれるものがあります。発色が派手で白飛びと黒潰れをしやすい機種なので、「仕上がり設定」は「ポートレート」を基に階調補正を−1に設定し、軟調気味にしてあります。
高感度撮影では年式相応にノイズが出ますが、嫌らしい出方ではないので、ノイズ低減は弱めにして粒子を活かすことにしています。
レンズは発売されたばかりの頃に買った「AF-S DX VR Zoom-Nikkor 16-85mm f/3.5-5.6G ED」。今でもキレキレの画を出し、10分の1秒程度でも殆ど手ぶれのない写真が撮れます。
そして、D800 に比べて小さくて軽く、シャッター音も小さい。荷物にならず、大袈裟にならないのがいい。
D80 を購入した頃はこのカメラしかデジタルカメラを持っておらず、プログラムAEで闇雲に撮るばかりでしたが、写真やカメラのことをある程度知った今だからこそ、このカメラの良さや活かし方がよく分かったのでした。
2014.10.26(日) 901 Nikon D80 長寿命化計画
【日録】8年前の冬、初めてのデジタル一眼レフカメラとして買った、Nikon D80。
D800 と COOLPIX S01 を購入した2012年の秋までは唯一のデジタルカメラとして使ってきました。遊びから写植の取材までどこへでも連れて行き、持ち運びはケースに入れないで直接鞄にしまっていたこともあって外装はぼろぼろ、グリップ等のポリウレタン部分は加水分解でねちゃねちゃになっていました。
ねちゃねちゃを除去しようとして拭くと、繊維が付いて取れなくなってしまうのです。握るとぬるぬるが手に残る感じで、使う気になれません。
液晶モニターカバー BM-7 は傷だらけです。
傷んだモードダイヤル。実物はもっと傷々でした。
「D80」のバッヂ。
初心者にも拘らず思い切って中級機を買った筈だったのにどうして大切にしてやれなかったのかと、見る度に心が痛みました。
所有の Mac に接続してSDカードリーダーとして認識できる唯一の機械として、余生を過ごしてきました。
しかし、写真機としての本質が失われた訳ではありません。ファインダーの大きさ・見易さや動作の速さは現行機種と比べても遜色なく、全ての機能が問題なく動作し、CCD ならではの透明感がある写真を撮ることができます。本来の使い方をしないのは勿体ないことです。D80 の 修理部品保有期間は生産終了から7年間ということで、今のうちに“長寿命化”を図ることにしました。
ニコンのサービスセンターへ修理に出して数日後、D80 が帰ってきました。
グリップ等のポリウレタン部分は新品に交換され、真っ黒でさらさらになっていました。先日のヘッドフォン「MDR-Z900」(→2014.8.27の記事参照)のように、直接触れる部分が綺麗になると使い心地が大きく変わります。
モードダイヤルも綺麗に。
バッヂも新品に。
部品を交換しなかった部分も隅々まで綺麗に清掃されていて、伝票によればローパスフィルターの清掃と動作・精度の点検もしていただいたようです。
修理中に買っておいた液晶カバーに交換し、画面も見易くなりました。
修理前。
修理後。
使い込んで黄色いロゴが色褪せた黒い純正ストラップは「クリアレザーストラップ」に交換しました。写真では背景に溶け込んでしまっていますが、明るい茶色の革がいい雰囲気です。
持ち運びや保管時に傷めないようにセミソフトケース「CF-DC3」も用意しました。
写真やカメラの基礎も知らなかった頃からお世話になってきた D80。あれからもう8年が経ってしまいました。時の流れの速さに驚くばかりです。そして、「少し上級のものを買っておけば長く使える」という当時の自分の考えが正しかったことも証明されました。
割合上、このサイトに掲載されている写真の大半はこのカメラで撮っています。これからは第一線で活躍することはないかもしれませんが、道具として敬意を払いつつ、大切に使っていきたいです。
(BGM:竹達彩奈『齧りかけの林檎』/筒美京平作曲/2014.10.15) |