●過去だより651〜675
2011.7.18(月祝) 23:59 675 もえれこ!
【日録】Hi-MDの生産終了を受け、代わりにするためのリニアPCMレコーダーを購入しました。
SONYの「PCM-M10/W」です。ソニーストア限定モデルとして白があったので即断しました。録音機といえば銀色や暗めの色が多かったので、白いことに斬新さと格好良さを感じてしまうのです。
PCM-D10とカセットデンスケTC-D5M
このPCM-M10、「ICレコーダー」ではなく「リニアPCMレコーダー」の最廉価機種に位置づけられており、上位機種であるPCM-D1やPCM-D50のようにかつての“カセットデンスケ”を彷彿とさせる質実剛健な筐体デザインです。
ただし型番にはマニアックな生録音や業務用途のデンスケを表すDではなく、アマチュアミュージシャン向け(ミュージック)を表すMが与えられ、明確な差別化が図られています。よく言えば小型簡素化されていて、悪く言えばちゃちいです。
以前から「PCM-D50が欲しい」と書いてきたのでM10を買うつもりはありませんでしたが、Hi-MDの代替として使うにはD50は大袈裟すぎたのでした。Hi-MD録音機に比べ筐体がかなり大きく、気軽に録れる圧縮モード(MP3とか)が無かったのです。
M10は筐体が手に収まる小ささでMP3の録再が可能ということだったので、これまでHi-MDで使っていたように(真剣な録音にも気軽な再生にも)使えそうだと判断し、購入の決め手になりました。
大きなモノクロディスプレイを備え、テープレコーダーのように明解なボタン配列なのがまずいい。デザインに無駄がなく操作に迷いがないというのは道具にとって大切なことだと思うのです。録音と再生ならカセットしか使ったことがない人でも取扱説明書なしで直感的にできると思います。
録音レベルダイヤルと電源スイッチ
録音レベルダイヤルと各種設定切換スイッチ
録音レベルダイヤルや主要な機能の切り換えが機械式なのもいい。押しボタンの連打や画面のメニューから選ぶ方式では瞬時に録音レベルや設定を変更できず、リアルタイムで対応しなければならない生録音には向かないと思うのです。
電池室とモニタースピーカー
電源は専用充電池ではなく市販の単3乾電池2本。どこへでも持って行くポータブル録音機だからこそ斯くあってほしいものです。DC 3Vの入力端子もあり、長時間録音も可能です。
内蔵ステレオマイクと入出力端子、ピークレベルインジケータ
録音の音質は巷で言われているほど悪くなく、内蔵マイクでもそこそこの音で録音できているように思います。普段は外部マイクで録るにしても、遊びや取材等なら内蔵マイクでも十分過ぎる臨場感です! 24bit/96kHzのリニアPCM録音はCDよりも繊細で濃密な音を記録していることがよく判りました。その場に音を発するものがあるような生々しさでした。
再生音はリニアPCMによる生録音とCDから作成したMP3を聴いてみましたが、どこかの帯域に偏るようなこともなく録音の良し悪しを判断できる素直な出音でした。
なによりHi-MDよりも楽だと思ったのは、アクセスに時間がかからないことです。
Hi-MDはディスクのアクセス時間が非常に長く、再生開始まで1分ぐらい、録音して停止すれば書き込みに30秒〜1分ぐらいを費やし、全ての操作を受け付けません。なので使う度にストレスが溜まるような状態でした。M10では起動時のメモリチェックが数秒ほどで完了し、カセット程ではないにしても録りたい時にすぐ録れます。
また、M10はMac・Winを問わずUSBケーブルで繋げばデジタルカメラのように外部記憶装置として認識し、ドラッグ&ドロップでデータがやり取りできることも嬉しい。Hi-MDではBOOTCAMP上のWindowsを起動し、SonicStageからディスクのデータを吸い出してWAVデータに変換し、再起動してMacOSからBOOTCAMPのパーティション上のWAVを取り出していました。15分かかっていたことが1分で出来る……(感涙)。
ただし本機はやはり廉価版を感じさせるところがあって、入出力端子は光デジタル非対応のアナログのみ、PCM-D50には搭載されているSBM(Super Bit Mapping:16bit音声に20bit相当の情報を織り込み聴感上のダイナミックレンジを拡大する高音質化技術)は未搭載、内蔵ステレオマイクは90度に固定されています。録音機は予備や負担分散の意味でいつも2台所有することにしているので、本命のPCM-D50も導入すると思います!
今までに使ってきたポータブル録音機です。中央左から右下へと古い順に並んでいます。奥のカセットデンスケTC-D5Mは別格ですが。古い順に紹介してみます。
カセットウォークマン WM-GX655(1998頃)
初めて購入したポータブル録音機。AM/FMラジオ付き。通学のお供だった。坂本真綾や白鳥由里を繰り返し聴いたものだった。附属のマイクの音質が悪くあまり生録音には活用せず。2年程で故障し、修理代が払えずそのまま引退。今振り返れば、今まで貰ったお年玉を全額使ってTC-D5Mを買っておけば良かったのにと思うが、きっとこんなに録音機に思い入れることはなかっただろう。
MDウォークマン
MZ-R900(2001)
MDは録音データを必ず圧縮するので好きになれなかった。しかし、本機はMDLP初搭載機種ということで、カセットテープよりも長時間録音できるのを魅力に感じ購入。当時から「白い録音機」が好きだった。ラジオから録ったアニソンやつじあやのをよく聴いた。フレームが歪んで修理したりピックアップを交換したりするなどよく使った。圧縮しないリニアPCM録音が出来るHi-MDウォークマンの導入で事実上引退。今でも正常に動作する。10年経って聴く再生音はさすがMD、カサカサで長時間の鑑賞は辛い。
Hi-MDウォークマン MZ-NH1(2005)
初代Hi-MD録音機。リニアPCMと大容量メディアによる長時間録音に惹かれ、発売してすぐ購入。使い道はこれまでと殆ど同じだが、大切な演奏等を高音質のリニアPCMで残せるようになり、曲づくりのマスターディスクにもなった。長時間の取材にも重宝した。寝しなに音楽を聴くなど毎日の音楽生活を支えてくれた。本機もボタンが利かなくなる程使用し、修理して現役続行中。
Hi-MDウォークマン MZ-RH1(2007)
Hi-MD録音機の最終機種。録音中にレベル調整ができる機能がMDウォークマンとして初めて搭載され、ようやくデンスケのように本格的な生録音が出来るようになった。コンピュータへ音声データを転送し活用できる機能も最初で最後の搭載。生録音のサイトへのアップロードや曲づくりは本機がないと出来なかった。今後もHi-MDの録音データを他の媒体へ移行するために活躍予定。
リニアPCMレコーダー PCM-M10(2011)
Hi-MD生産終了を受け、代替として購入。
カセット→MD→Hi-MD→リニアPCMレコーダーと確実にポータブル録音機の歴史を辿ってきて、良さや難点をずっと感じてきました。それぞれに特徴があってどれが一番良いというものではありませんが、どれもが愛おしいじゃありませんか。そこにある音を残すというそれだけの事に対し、持ち運ぶことを前提として技術を凝縮した幾つもの方法や装置があって、それと共有した沢山の時間がある。
さながら“録音機萌え”のような想いです(笑)。『もえれこ!』(萌えるレコーダー読本)とかいう同人誌がありそうなものですが、ポータブル録音機が好きな人っているものなのでしょうか?
(BGM:東雲なの(古谷静佳)『なののネジ回しラプソディ』『なののおひるねおせんたく』/2011.7.6)
2011.7.17(日) 7:59 674 朝っぱらから!
【日録】平日が超朝型なので、体に負担をかけないため休日は5時に起きることにしました。静かで涼しくて、昼間の時間が有効に使えて意外といいかも。
亮月写植室前に植えていたゴーヤが大きな実を着けました。
Nikon D80・AiAFマイクロニッコール60mmF2.8D・絞りF2.8・AE(以下同じ)
朝と夕方では大きさの違いがはっきり判るほど成長が早いゴーヤの実。初めての収穫はお盆のお供えになりました。
天狗の団扇のような葉の形状と夏の強い日差しに透ける葉脈が美しい。
つるの先端では活発に巻きひげを伸ばし、模様のように次々と葉を拡げています。
*
一方で、近所にある凌霄花(のうぜんかずら)も見頃を迎えました。夏の花と言えば、凌霄花。大好きです。
Nikon D80・タムロンAF 17-50mmF2.8・絞りF2.8・AE(以下同じ)
空や屋根瓦の青と一緒に撮ると、色の対比が一層夏らしさを引き立てます。
ここの個体は花の密集度がすごく、遠くからでも近くからでもかなり見応えがあります。
すぐ脇には古い型式の消火栓。凌霄花も根元を見るとかなりの太さです。きっと二つとも、この街が出来た頃からずっとここにいたのでしょう。
*
某動画投稿サイトで、「HOYAが開発したVoiceTextという合成音声のHARUKAが『日常』の長野原みおの声に似ている」と知り、丁度ちゃんみお(誤字ではない)の高音が不安定気味でだみ声混じりの特徴的な声が良いなあと思っていたところだったので私も試してみました。
出来るだけ自然に喋ってもらうため下のように入力しました。
『日常(一)』p.162〜163『日常の17』より。
「どしたの?ゆっこー。朝っパラからー。あんた、また忘れたのー?。宿題って国語のプリントでしょ?。もしかしたらどっかに挟まったりしてるかもよ?。ちゃんと探してみ?」
その結果……
→20110717.mp3(192kbps、17秒、414KB)
こんなに自然に喋るとは! VOCALOID の歌声を初めて聴いたときのような不思議な気持ちになりました。パソコンとソフトだけで任意の文章を即座に流暢な言葉で話すのはすごい。合成音声ってこんなに進歩していたんだ!
ちゃんみおよりも声は低いけど、声質にそれっぽさがあります。大学のサークルの先輩にこんな声の人がいたなぁ。
動画投稿サイトと同じように、ちゃんみおの声に近付けてみました。
→20110717_1.mp3(192kbps、17秒、414KB)
感情はあまり入っていないけど、「プリントでしょ?」辺りからはゆっこへの説教っぽさが出ていて違和感なし。笑ってしまいました。
このHARUKAは今のところ企業向けで、一般発売されていないのがとても残念です。今回は実験と検証のためにサイトのデモンストレーションを使いましたが、やっぱり自由に実用したいものです。「xpNAVO」など読み上げソフトにHARUKAが搭載されたら買っちゃうかも知れません。HOYAさんお願いします!(笑)
2011.7.11(月) 19:14 673 さようなら、Hi-MD
【音のスケッチ】自宅近くに棲みついているうぐいすの鳴き声が面白いので収録してみました。
→20110711.mp3 (2分23秒、MP3/192kbps/3.4MB)
よく聴いてみてください。「ホー、なめんじゃねえよ!」と聞こえます。間違って覚えてしまったのでしょうか(笑)。
単独なのか複数なのかは判りませんが、この調子で2ヶ月以上滞在しているようで、毎日笑わせてもらっています。
さて、この録音に使っている Hi-MD録音機の最終機種「MZ-RH1」がこの9月を以て出荷終了となり、Hi-MDの1GBディスクも来年9月限りで生産終了することになったようです(→ソニーの告知ページ)。
以前から生産終了の気配を感じてリニアPCMレコーダーへの移行を検討していました(→2011.4.5の投函参照)が、「録音した媒体が最終保存状態=パソコンを通じてCD-R等に保存する手間がない」という利便性が私にとって最大の魅力で、今まで使い続けてきました。
初めからリニアPCMレコーダーを導入しておけばこのような事にはならなかったのですが、Hi-MDの初代録音機が発売された2004年1月時点で手に届く価格のまともなリニアPCMレコーダーはなく、Hi-MDを選ぶしかなかったのです。
Hi-MDには未来がないと確定したのでこれ以上ライブラリーを増やす意味はあまりありません。近いうちに「PCM-D50」辺りを購入しようかと思います。録音したデータをいちいちパソコンに移動してCD-Rに記録しなければならないのはとても面倒ですが、それしかないのであれば止むを得ません(泣)。今後はどうしても小型の本機しか持ち出せない状況でしか使わないと思います。
初代Hi-MD機購入以来7年間、録音の相棒として本当にお世話になりました。CDと同じ音質の気合いを入れた録音にも、何時間にも及ぶ講演会や取材、楽器遊びにも、どこへでも連れて行きました。気に入った曲を収録しておき、寝しなに音楽を聴くときも小さくて重宝しました。大切に使ってきましたが使い過ぎて外装には傷が目立ち、ボタンが利かなくなって修理に出すほどでした。今まで私の音のある日常を担ってくれてありがとう。そしてさようなら。
2011.7.9(土) 20:48 672 写研ブースに行ってきました。
【写真植字】という訳で、「第15回電子出版EXPO」に行ってきました。
今日は17時半から地元の活動があり、半日しか休みがないので前日まで東京行きを決めかねていましたが、twitter の「写研TL」の異様な熱気*もあり、写研ブースだけでも見ておかないと絶対に一生後悔すると思い強行しました。
*異様な熱気
friendfeed 検索ワード「写研」も参考にすべし。
今月からは超朝型の生活なのでそれを有効活用し、朝早くに家を出て10時前に会場へ着くことができました。
非常に濃い取材ができましたが、レポートする時間が取れないので、大量に撮らせていただいた写真の中から抜萃してお届けします。
写研ブース正面
左手にデモ機(Windowsマシン)、中央にその状況を映す画面、右に光る写研ロゴと石井裕子社長のメッセージ。開場直後でまだガラガラだった。
石井裕子社長のメッセージ
「本日は弊社ブースへお越しいただきまして
誠にありがとうございます。
このたび、これまでご評価いただきました
フォントを広く社会にお役立ていただくために、
写研フォント開放の試みを始めます。
今後の方向を決めさせていただきたく、
ぜひ、皆様のご意見、ご要望を
お聞かせください。
2011年7月
株式会社 写研
代表取締役社長
石井裕子」
写研ブース正面裏・奥側
「電子書籍に使いたいフォントは?」「見出し等に使いたいフォントは?」というアンケートを募集中。壁に貼られたパネルには他社書体も含まれている。
写研ブース正面裏・アンケート記載台
先述のアンケートと、「写研フォントオープン化に関するご意見をお聞かせください。」の2種類。
青いファイルには、壁に掲示してある書体と同じものの組見本が綴ってある。
写研謹製「写研式組版Q数表」
2つのアンケートに回答して噂の「Q数表」を頂きました☆
丸C表示は2005年。4Qのような小サイズや8.5Qのような手動写植機では対応していなかった中間Q数もある。
後ろの青いものは写研特製の特大クリアフォルダ。
写研ブース正面裏・手前側(画像クリックで拡大)
写研主催「文字のある風景写真コンテスト」入賞作品から。
相応しい書体を選んであるようだが、真ん中のパネルの書体はMSゴシックになっている。これでよかったのかしら?
写研ブース正面・デモご案内画面
デモは人が集まると随時開催。「InDesign、Illustratorで写研書体が他と一緒に使える」「iPhone、iPadなどでの写研書体利用実例」の2本立て。
11時、14時、16時からは書体デザイナー・中村征宏さんによる講演「ナール&ゴナ 発想と制作」。
デモ「Indesign、Illustratorで写研書体が他と一緒に使える」
Illustrator で動作する「SK ボカッシイ」!
同上。InDesign で動作する各種写研書体。
「SK ナカゴしゃれ」「SK ミンカール」のインライン入力を実演。
紙面の雰囲気がちょっと懐かしいような、すごく新鮮なような。
InDesign のスタイルシートにも対応。まとめて書体変更可能。
デモ「iPhone、iPadなどでの写研書体利用実例」
iPhone のフォント一覧に写研書体が!
同上。iPhone でMM-OKLが見られるなんて!
盛況の写研ブース
書体デザイナー・中村征宏さん講演時のタイトル画面
写研の杏橋達磨さんと共演。写研初の書体見本帳やナール着想時のラフの原本が見られるなど、写研ならではの濃密な講演だった。
ブース横の衝立には「いま、オープン化めざして shaken」
写研の営業の方にかなり突っ込んだ質問をさせていただき、丁寧な回答を頂きました(本当にありがとうございました! 質問攻めにして申し訳ありませんでした)。
・フォントフォーマットは OpenType。数年前から OpenType 化を進めていて、いつでもリリースできる態勢をとりつつあった
・タショニムフォントをベースとしたもので、OpenType 化PC用フォントとしてのリリースに当たり品質改良するかは未定
・「InDesign、Illustratorで写研書体が他と一緒に使える」というのは、他社製の書体と同じようにコンピュータ上で扱うことができるという意味。非常に多くのアプリケーションがあるので動作確認し切れないが、DTPで使われる一般的なアプリケーションでも使えますよということ
・手動写植機専用書体についても必要があれば加えたい
・新書体の開発は今後の写研書体の使用状況次第。需要があれば開発したい
・手動機のサポートは性能維持部品がないのでしていないが、電算写植機については今後もサポートを行う
・写研の組版言語「SAPCOL」の単体販売もあり得る
・買い取り方式とライセンス方式の併用については非常に多くの要望を頂いている
・twitter 等での盛り上がりや情報の一人歩きは承知している
(あとは個人的に気になったこと)
・『写植のうた』は仕事始めなど社内の催しで今も使うことがある
・最後の文字盤用書体は……折り返し回答するとのこと
・写研本社敷地に建築中のものは社屋の増築。現社屋の裏に写研の土地があり、4階ほどのものが建つ。写植の博物館ではないが、和光や川越の工場等にある古い製品をそこへ集めて保管する。今後一般公開したいという意向はあるらしい
中村征宏さんとは3年前の講演(→写植レポート「書体デザインの新潮流」)以来の再会で、今回写研が動いたことについての驚きや感想、中村さんがこれまで制作されてきた書体について伺うことができました。中村さんは私が一番好きで最も尊敬する書体デザイナーなのに、ざっくばらんに楽しくお話しさせていただけるのは夢のようでした。写研がフォントを開放するだけでも夢のようなのに!
また、今や写研の社長室マネージャーとなられた杏橋達磨さんとも初めてお目にかかりました。写植に対して並々ならぬ思いを抱いておられるのは杏橋さんも同じで、「亮月さんのサイトの文章一つ一つに写植への愛が溢れている。嬉しい」とのお言葉を戴いて感無量でした。
ブース内を廻っていたら「KKITT出版部」の雉子捏造さんともばったり出会いました。初対面にも関わらず「亮月さんですよね」とお声をかけていただき驚きました。時間が足りないかもと焦っていたのであまりお話しできずすみません(ここで私信してすみません)。今度お会いできたら『日常』における東雲なのの良さと書体のことについてじっくりお話ししたいです。
ざっとこんな感じでした。情報が生ものなのであまり時間が経ってからレポートしても意味がないかも知れませんが、亮月製作所はどちらかと言えば新鮮な情報の提供よりも「こういう出来事があったということを歴史の一部として長く遺したい」という姿勢なので、今の忙しさが終わったらレポートに取りかかりたいと思います。
(BGM:『写植のうた』)
2011.7.7(木) 21:05 671 写研書体、開放へ!!
【写真植字】東京の知人から電話やメールを頂き、その内容に非常に驚きました。
「第15回電子出版EXPO」の写研ブースにて、「写研フォント開放の試みを始めます」といった内容の石井社長のコメントが発表された模様です!
「InDesign、Illustratorで写研書体が使える」「iPhone、iPadなど電子書籍で写研書体が使える」というようなことが確認できました。
知人が写研のブースで営業の方に聞いたこととして、
・年内を目処にOpenTypeとしてリリースの方向 →2011.7.9追記:写研の営業さんによると、年内を「目処」であってリリース時期を確定するものではないそうです
・その為に必要な事についてユーザーの意見を採り入れて決定したい
・Cフォントを基本に考えている →2011.7.9追記:写研の営業さんに確認したところ、タショニムフォントだそうです
※明確にPC用フォントへの参入とは言っていない
とのことでした。
写研書体のOpenType化が進行していることは何年か前から知っていました(←後からなら何とでも言えますが、本当です)し、「石井社長は写研書体を墓場まで持って行く」という噂は根拠のない嘘八百だということも分かっていました。
それが遂に明らかになり、写研書体を愛してやまない管理人としてこの上なく嬉しく、気分が高揚しました。しかし、Singis を最後に写研独自の組版システムの開発を終了したことからも、書体の開放は広義の「写植」という組版システムの終焉を意味し、その面では非常に残念でもあります。
現時点で一つだけ言えることは、忘れ去られようとしていた写研書体が息を吹き返すということです。
「組版と書体は一体でなければならない」という写研の方針には私は賛同できるので、いい加減な組み方の写研書体は見たくないなぁというのが本音ですが、写研や組版に関わる業界ではどのように考えているのでしょうか。これまでのように割とどうでもいい組み方のままなのでしょうか。
話は変わり、写研のブースでは書体デザイナーの中村征宏さんが講演をされたようですね。何だか、写植全盛期のような写研の熱気を感じて目頭が熱くなりました。
うまく纏まりませんが……明日は3時半起床なのでこの辺りで終わりにしたいと思います。おやすみなさい。
*
【日録】ひとことだけ……東雲なのー!
2011.7.3(日) 20:27 670 書体のはなし、復活しました
【文字関係】長らく掲載を中止していた「書体のはなし」の旧い記事を復活させました。
掲載中止以降何通か「復活してほしい」というおたよりを頂き、一定の需要があった事が判ったため、見てくださっている方の意見を尊重することにしました。
旧記事の初出は1999〜2006年と非常に古く、十分な検証もせずに書いている部分があります。文章が拙く、また書体の解説として至らぬ所があると思いますので、古い随筆だと思って読んでいただけたらと思います。
*
【日録】4月から駆り出されている行事の活動が明日から、夜から早朝に変わります。
4時前に起床して7時前まで活動を行い、その後仕事、帰宅してから翌日の活動の準備、21時には就寝することになります。
これまでの連日23時を超える活動で体から疲れが抜けず、何事にもやる気が起きず仕事に影響が出ています。一言で云えば「疲弊しきっている」。平日に心と体を休め明日の活力を培う自分の時間は15分足らず。私には足りません。
長い期間継続的に負担になることを行うのであれば、当然持続できるよう拘束時間や負担の大きさを事前に考え計画を立てるべきですし、活動の中で効率の向上を目指す必要があるのですが、帰宅時間は遅くなる一方でした。
心身が回復しないほど疲らせ、仕事を犠牲にしてまでやらなければならない事って、何なんでしょう? 私には解りません。
2011年は写植室が完成・設立し大きく動ける重要な一年になる筈でしたが、もう半年が終わってしまいました。
残りあと1ヶ月、長くなりそうです。
2011.6.29(水) 23:14 669 非日常と日常と
【亮月写植室】
「大阪DTPの勉強部屋」さん主催の勉強会+亮月写植室見学のお知らせです!
以下大阪DTPの勉強部屋さんのブログ記事から引用・一部加筆して掲載します。
【大阪DTPの勉強部屋】サマースクール
●開催内容
8月20日 土曜日12時 開催場所の岐阜県 JR土岐市駅集合
午後から亮月製作所の「亮月写植室」を見学。
その後20時まで土岐市産業文化振興センター・セラトピア土岐の会議室で勉強会開催。
20時から懇親会。
21日 日曜日 9時から12時 セラトピア土岐の会議室で勉強会開催。
午後からは自由解散で土岐市観光。
●参加定員
「亮月写植室」は定員10名。宿泊で参加の方優先です。
勉強会は定員15名。
勉強会のみ参加、懇親会のみ参加でもかまいません。
●参加費
1,000円(20・21日共参加は1,500円)
交通費・宿泊費・懇親会費等は各自負担。
●宿泊
ホテルルートイン土岐がお勧めです。 |
お問い合わせおよび参加をご希望の場合は、大阪DTPの勉強部屋のブログ上部にある「ご意見・お問い合せ」からタイトルを「サマースクール」として送ってください、とのことです。亮月写植室へ直接お問い合わせ・申し込みを頂いても対応することができません。
ちなみに1日目の勉強会の中で私がお話しさせていただくことになりました!
実は亮月写植室の設立直前にこの勉強会+見学のお話を頂きました。このこと自体も驚きでしたが、私が登壇するというちょっと今迄にない展開なので、お迎えする側としてもとても楽しみにしています。
亮月写植室には扇風機しかありません。隣市の多治見と同じく暑さが半端ではないので、それなりの覚悟はしておいてくださいね。ホントに暑いですから!
定員が少なめですので、岐阜の山奥まで行って写植機を見たいという奇特な方はお早めに申し込んでいただけたらと思います。もちろん勉強会・懇親会だけでも大丈夫ですよ。
*
【日録】今日は週4回、時にはそれ以上駆り出される行事のない日でした。
平日の夜の雰囲気を久し振りに満喫した気がします。家に帰る前にあちこち店に寄って、帰宅して暮れてゆく外の風景を感じ、テレビを見ながら家族とゆっくり夕食し、入浴後は自分の時間を過ごす……それだけの、どこにでもあるような日常の出来事なのにとても豊潤な時間のように感じられました。
誰しも、当たり前にあると思っているものほど恋しくなるものはありません。だから生まれてから死ぬまで日常を繰り返すことができるのです。
あまり関係ないですが友人宅で見せてもらった『日常』というアニメがじわじわと気に入ってきて、コミックスを買い揃えることにしました。Helvetica Standard って何やねん?
まだ梅雨は明けていませんが酷暑が始まってしまいました。
亮月製作所でも22時に室内温度30℃を記録し、暑さ対策の為に扇風機を出しました。
学生時代に買った新しいタッチスイッチ式の扇風機もあるのですが作業机の照明スイッチを入り切りすると誤動作して勝手に回ったり止まったりしてしまうので、機械スイッチ式のものを使っています。
シャープ扇風機 PJ-307ZS
これぞ日本の扇風機! というデザインで、実はちょっと気に入っていたりします(笑)。
青を基調とした濃いめで力強い色遣いはいかにも当時的な「涼しさ」を感じさせ、金属フレームと厚めの樹脂による外装はとても頑丈です。ボタンやダイヤルによる操作も滑らかかつ確実でがたつきがなく、日本が元気だった頃にきちんと作られた製品だと使ってすぐに分かります。高級機でもない(と思われる)こういう機種でもこの操作感という所がいい。スイッチ等の操作感が良い事は重要だと思うのですが、最近の製品だとコストダウンばかりで疎かにされがちですよねぇ。
PJ-307ZS の操作部。
リモコン式なんていう過剰装備の機種がある今でも、バチンバチンとスイッチを切り換えて手廻しでタイマー時間を変えられる方式が私は好きだ。
タイマーの表示が緑と水色の二重になっているのは、電源周波数によって回転速度が違うから。50Hzの方がゆっくり廻る。
シャープのサイト(→長年ご使用の扇風機についてのお知らせとお願い)で型番から製造年を調べると、この PJ-307ZS は1977年製でした。両親が結婚した年で、今や亮月家の全てを知っている唯一の電化製品です。
私より長く生きている扇風機のこと、この夏も、この先も長く活躍してくれると思います。「古くなった扇風機は危険だから捨てよ」等と喧伝されることもありますが、むしろ昔の機種の方が造りが良く単純で壊れにくい。少しでも具合が悪くなったら分解清掃を頼んで長く使っていきたいです。
扇風機でも耐えられないくらい暑くなったら氷を食べて体の中から冷やし、アイスノンを抱いて過ごすことになります。これで何とかなるのでエアコンは今年も取り付けないだろうな〜。
2011.6.26(日) 22:32 668 引き寄せられる、とは
【日録】18日の深夜にRさんと話をした中でとても印象に残る言葉を思い出した。
「心の底から欲するものしか見付からない」というような内容だったと思う(違ってたらごめんなさい)。
私達は人生の大きな局面について考えなければならない世代なのだが、なかなか辿り着かないのは何故か。それは興味関心があまりそちらへ向かず、幾らでもあるものの筈なのに見逃しているのではないかということ。
自分の場合、例えば写植がそうだ。写植はかつてありふれていたものだったが多くの人は興味がないから存在も知らない。私は写植に関することが知りたくて手に入れたくて堪らずに十数年動いてきた。そのとき普通の(?)人が見逃すことでも引き寄せられるような感覚で出会うことができた。とうとう写植機までやって来てしまった。
引き寄せられるというよりは、心から関心があるが為に情報収集や行動を精力的に行った結果なのだろう。それが「まるで引き寄せられるような」感覚の強い繋がりとなり、行動に見合った結果が導かれる。
だからRさん曰く「今の自分を決定づけているのは運命じゃなくて自分の行動の結果」なのだという。今の自分が置かれている境遇や性質は与えられたものではなく、これまでの自分が選択を重ねた結果が今の自分なのだ。端的に言えば「最も相応しい状態」。自分の意思ではどうしようもなかった先天的なもの以外は潔く引き受けられる筈なのだ。
現状に不平を言わず受け止め、視野を広くして興味を持ち、これからどうする事が最善かを考え実行できるような、潔く建設的な生き様でありたい。局面に立ち向かう(?)為の心構えを互いに確認したような思いだった。
2011.6.19(日) 23:59 667 やり残した青春
【亮月写植室】「写植室日報」、更新しました。→亮月写植室
【日録】18日、所属の写真サークルの展示会に向けて顔合わせ会に参加。
4月から猛烈に忙しく土日も度々その用事に奪われる状態なので、サークルの人達と会うのは久し振りだった。ようやくテナーリコーダー(5月8日付参照)をお披露目できた。持ち物が何か違う気がしないでもなかったけど。
初顔合わせのYちゃんは40年前に母上が買ったというハーモニカを演奏するということで、主宰のRさんと共に「歌しりとり」で盛り上がった。写真サークルなのに出会う人は楽器が上手いとはどういうことだ。
夕方にはYちゃんが時間ということで残念そうに退席、代わりに数人がやって来た。
夕食後はすぐさま合奏大会に。さっきの歌しりとりに突入。しりとりで答える人は順番だが、突然楽譜もなく追従できる皆は凄い。ただ2〜3時間も演奏すると引き出しを使い果たしたような感覚だった。
リコーダーはハモると最高に心地いい。歌しりとり終了後、湯川潮音の『ツバメの唄』が流れてきたな〜と気付いた時には何も言わなくともそれに合わせて吹いていた。潮音譲の曲を合奏できる日が来ようとは。一人でマルチトラックレコーダーに各パートを弾いて吹き込もうと思いながらいつの間にか忘れていたことを思い出した。
いつの間にか零時を回っていた。今回もR邸に宿泊させていただいた。空が青く明るくなってくるまで語らった。ここの所の忙しさもあり、誰かとこれだけ長く話をしたのは本当に久し振りで、詰まっていたものが取れたような思いだった。
翌朝の重たい体を電車に預けて帰宅するとき、やり残した青春なのかも知れないな、と、朦朧とした意識の中で思った。
2011.6.15(水) 21:53 666 亮月写植室、設立しました
【写真植字】かねてから取り組んできた自家印字に向けた準備について建物や資材が調い、今後継続して活動できる目処が立ったので「亮月写植室」という写植専門の個人サークルを新たに設立しました。同時にサイトも開設しました。
昨年からその準備を進めていました。自動車を買い替える代わりにその費用で写植の為の部屋を建てればいいと思い立ち、秋から冬にかけて離れを建築、手動写植機を広く募集して状態の良いものを譲り受け、その整備と環境づくりをしてきました。
離れは建ったものの写植機が手に入らないとか、印字できない写植機を譲り受けてしまうとか色々と想定しうる危険があったと思いますが障壁は何もなく、とても幸運だったとしか言いようがありません。
4月からは殆ど時間が取れない状態が続いていて、その中で少しずつ少しずつ歩みを進めてきました。当初は亮月製作所のサイト開設日に亮月写植室を創立したかったのですが忙しすぎて成らず、キリのいい6月1日に遅らせても間に合わず、こんな半端な日になってしまいました。
長かったです。
それでも無事に形にすることが出来てほっとしています。
建物にもサイトにも写植しかありませんが、よろしければご覧くださいませ。
*
亮月写植室設立に伴い、サイトのコーナーが移動しました。
・個人サークルとしては、写植関連は「亮月写植室」、それ以外は「亮月製作所」で取り扱います。
・「写植とは」「写植レポート」「写植のうた」「写植のキャンバス」ほか、写植関係の記事は全て亮月写植室サイト内に移動しました。但し「写植とは」のみ亮月製作所サイトからのリンクを残します。
・作品づくりに関する「イラスト制作部」「音楽制作部」「書体制作部」は引き続き亮月製作所で取り扱います。
・「書体のはなし」は当分の間亮月製作所で取り扱います。
・写植関連の管理人日記は亮月写植室内「写植室日報」に記録します。それ以外のものは従来通り「亮月だより」に記録します。
・サイト構成上、亮月写植室は亮月製作所のいちコーナーであるため、既存のサイトの名称は今後も引き続き「写植ファンサイト『亮月製作所』」とします。
サイトの階層構造やファイル名は変えていませんので、従来の記事や画像等にもこれまで通りアクセスしていただけると思います。
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ともあれ、私とて写植機の操作はまだまだ見習いの初歩レベル、写植に関する見識もこの通りで実[じつ]が伴っていませんが、建物や写植機といった実体があるものを拠り所にできるのは亮月製作所時代とは最も異なるところで、亮月写植室最大の特徴だと思っています。
亮月製作所がそうであったように、亮月写植室も写植を愛する人達によって作られていく場所でありたいと考えています。一人でも多くの人に写植を知ってもらい、懐かしんでもらい、できる限り残るものとして留められるようにしたいです。
亮月写植室、はじまります! どうぞよろしくお願いします。
2011.6.12(日) 23:44 665 文字の食卓
【文字関係】亮月製作所には珍しく、文字関係の新サイトの紹介です。
「文字の食卓」http://www.mojisyoku.jp/
写植や活版の書体の味わいを、読み手の視点から豊かな言葉で綴ったサイトです。
サイト名から判るように、書体の美味しさを引き出した文章が使用例とともに纏められ、これまであった書体解説とはひと味違う読み物としての魅力があります。
管理人の正木さんも幼少の頃から書体を強く意識されてきた方。こういった方がいるのだと分かる度にとても嬉しく、心強く思います。
2011.6.4(土) 22:30 664 情熱の結晶
【文字関係】という訳で、「大阪DTPの勉強部屋」から帰ってまいりました。
皆さんはまだ懇親会をされているのでしょうか。明日の用事さえなければ必ず参加していたと思うのでとても心残りです。私の分も楽しんでください!
私としての一番の目玉だったフォントワークスの藤田重信氏による「筑紫書体」の講演、非常に良かったです。
藤田氏がタイプフェイスデザインの道を志すに至った経緯から始まり、写研でのこと、フォントワークス移籍後、そして筑紫書体の設計についてかなり詳しく話されました。藤田氏はたいへんな情熱家で、過去の出来事や現在の想いを聴くにつれすっかり惹き込まれていました。
筑紫明朝が何故あのような独特な形状をしているのかについては他書体と比較しながらエレメントの細かな部分まで理由を説明され、それまでこの書体に偏見を持っていた(以前、酷評したことがある)自分にとって目から鱗が落ちるようで衝撃的でさえありました。強い信念とそれに裏付けられた確固たる設計によって生まれた書体だったのです。
私としては、以前はフォントワークスというと「写研を真似しきれてない」ような印象を抱いていて、その独特なデザインがどうしても受け容れられませんでしたが、それはよく知らなかったから言えたことで(若気の至りでは許されないだろう)、藤田氏のように入念な設計の下で制作されている書体が同社には確かにある。そういう事がいつの間にか分からなくなっていた……あるいは初めから分かっていなかった自分を強く恥じます。
知らないが故に好き勝手言えたのも面白かったですが、印象だけで批判するのでは前進することができません。タイプフェイスデザインもやはり歴史となるものなので、「今」から生まれたものから目を背けてはならないのです。設計の経緯や理由まで検証し、今後を展望する事が大切なのではないかと思いました。
今回は興味深くて分かりやすい講演ばかりだったので、藤田さんを始め講師の方と懇親会でお話しできなかったのはとても残念です。関西という土地柄か、大阪DTPの勉強部屋は溶け込みやすそうな良い雰囲気でした。東京の見知った方も何人か見えたので、今回は遠方からでも参加した価値が大いにあるものだったのだと思いました。
とてもいい講演だったので、「写植レポート」に筑紫書体の件だけでも載せられるといいなぁ。2011.6.5追記:レポートを掲載しました。推敲が十分ではありませんが雰囲気は感じていただけると思います。
2011.6.1(水) 20:27 663 位置に着いて、用意、
今日から6月、既に梅雨の季節に入りましたが、今晩は肌寒くて家では石油ストーブを焚きました。夕食は鍋料理でぽかぽかに。6月に冬のような過ごし方をしたのは初めてでした。
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【写真植字】自家印字を継続的に続けるために必要なPAVOの光源ランプは幸運に恵まれ新品を3本入手でき、残るは印画紙を確保するのみとなっていました。
5月15日の投函で書いたように現在でも富士フイルムからの供給は続いていて、岐阜県内に取次業者があるということだったので直接連絡を取り、富士から取り寄せてもらったものを送って頂きました。
写植ペーパー「PL100WP」の23×27cm。丈夫な厚手のボール紙で出来た函です。中に黒いビニール袋に入れられた印画紙が100枚入っています。
使用期限は2013年12月です。私の使い方だとよほど贅沢に使ってもまだ余りそう。推奨セーフライトは「富士フィルターNo.2A(黄緑色)」とのこと。写植屋さんの見学の記憶から赤色を買ってしまったけど大丈夫だろうか?
代金は送料込みで9240円。1枚92.4円で写植が打てると思えば安いものですが、無駄にしないようにしていきたいです。
これで自家印字態勢が調いました! 商売で写植を始める訳ではありませんが、建物を含め形のあるものが構築できたので、新しい活動の場として動き始めようと思います。
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相変わらず息の詰まる日々ですが、4日の土曜日が空いたので「大阪DTPの勉強部屋」に参加申し込みしてみました。フォントワークス・元写研の藤田氏が筑紫書体について語られるということで興味津々! 急に予定が入らずちゃんと行けるといいにゃ〜。
(最近のBGM:榊原郁恵『私の先生』『ラブリー・ポップ』/1977年作品、ZABADAK『遠い音楽』『私は羊』『桜』/1990・1991・1993年作品、堀江由衣『PRESENTER』/2011.5.25)
2011.5.22(日) 22:55 662 どんなに困難でも
【写真植字】前回心配していた光源ランプについて、以前稼働する手動写植機を募集した時に連絡をくださった方のご厚意で譲って頂くことができました!
PAVO用の未使用光源ランプを3本も! 他にも写植機の取扱説明書や書体見本帳、Q数スケール、ヒューズ等の交換部品もくださいました。(本当にありがとうございました!)
仕事で使う訳ではないので1日当たりの点灯時間は短いため、3本あれば当分の間使っていけそうです。写植機をこの時代に維持する場合に直面する一番の問題がこの光源ランプだと思うのでほっとしました。といっても他の部品が故障する可能性はある訳で、全く気を抜ける訳ではありませんが!
光源ランプをじっくり見てみました。
ソケット側です。位置決め用の軸を持つ4端子。定格は20V、4Aのようです。底面をよく見ると赤色で「や3」の印字があります。
先端側には「Sha-ken」という写研の旧ロゴが刻印されています。やはり汎用品ではない模様?
フィラメントはタングステンの針金を細かく折り返す平面的な形状です。写植機にはこの平面状のフィラメントの面積を活かす位置関係で装着します。この写真では画面の奥から手前が光軸です。
光源ランプは幾つあっても困るものではないので、引き続き譲ってくださる方を募集します。引き出しの奥に眠っているランプをお持ちの元オペレータさん、ぜひご連絡ください。
【日録】自宅の玄関に小さなパンジーが咲きました。
玄関に置いてある鉢植えなのではなく、本当に「玄関から咲いている」のです。
タイルとコンクリートの隙間に根を張り芽を出した時には雑草かと思っていましたが、このように花を咲かせたのでその逞しさに驚きました。恐らくは鉢植えのパンジーから種が飛んできたのでしょう。
数センチメートルの中に紫と緑、藤色と黄、そして黒い筋の差し色の対比と調和。
こんな困難な場所にも美しい花を咲かせることができるのです。
2011.5.15(日) 23:45 661 少しずつ前進
4月から4ヶ月間に亘り、「体力気力とも大きな負担を強いられる状況」に置かれていますが、いよいよ土日にも入り込んできました。
亮月製作所としては写植機による自家印字が可能になったばかりなので、その態勢を確実なものにしようとしても思うように動けないのはとても残念ですが、僅かな時間を見付けて少しずつでも前進させるようにしています。
【和文タイプライター】度々話題にしている“イワタ特細明朝体”と呼ばれている書体について、直接イワタに問い合わせてみました。
回答はこのようなものでした。
・イワタでデザイン、制作された
・名称は「四TL」と言い、タイプライターに使用されていた活字書体
・今後のデジタルフォントとしての開発、発売は未定
ますます謎が深まってしまった感がありますが、確かにイワタが制作した書体で「四TL」という名称であることが分かっただけでも大きな収穫でした。制作された経緯とかはイワタの狩野さんに訊かなかんかなぁ。
【写真植字】今後手動写植機による印字を続けていく為に必要な消耗品が幾つかあります。
現像液等の写真用品は白黒写真が廃れない限り入手できるでしょうけど、問題は写植用の印画紙と光源ランプです。
先日、大手家電量販店に行き、写植用の印画紙を取り寄せてもらえるか尋ねたところ、「業務用品なので当店では取り扱っていない、個人には販売していない」というような回答でした。
そこで今回、写植用の印画紙を唯一製造しているとみられる富士フイルムに入手方法を問い合わせてみました。「富士写植ペーパー PL100WP」と高感度タイプの「富士レーザーペーパー PR-H100WP」です(→富士フイルムのサイト)。
富士フイルムの回答によると、岐阜県では岐阜市内に取り次ぎ販売店があるとのこと!(株式会社光文堂 岐阜営業所)
・PL100WP 23×27cm 100枚入り 8,740円/箱(税抜き)
・PL100WP 25.4×30.5cm 100枚入り 10,860円/箱(税抜き)
・PR-H100WPは感度波長粋がパンクロ*の為、お勧めできない
これで印画紙については確保の目処が立ちました。数年前の印画紙でも充分使用できることを自家印字で確認しているので、買い置きしておけば安心です。
あとは光源ランプですが……予備が手に入れられるまでは気が抜けません!
*パンクロマチック〈panchromatic〉
可視光線の全ての波長に感光する感材の性質のこと。
手動写植機による印字に用いる印画紙は通常赤色に感光しない為、暗室のセーフライトに赤色を使用している。この場合、パンクロマチックの印画紙をセーフライトに晒すと感光し、現像すると黒くなってしまうことになる。
(BGM:後藤沙緒里『オヤシロのムスメ』/2006年)
2011.5.8(日) 23:59 660 テナーリコーダーあらわる
【音楽制作部】楽器屋さんに注文していたリコーダーを引き取ってきました。
上からテナー、アルト、ソプラノリコーダー
今回は音の低いテナーリコーダーを購入しました。合奏する機会が多くなり必ずリコーダーを持ち出すのですが、ソプラノもアルトも持っている人がいるというのでテナーに挑戦してみたくなったのです。
上の写真でも分かるようにテナーリコーダーは非常に大きいです。全長約65cm。
まずは小学校で誰もが演奏したであろうソプラノリコーダーを持ってみました。
大きくも小さくもなく程良いバランスです。
しかし、テナーリコーダーを持ってみると……
でか!!
写真も意図的に大きいサイズで載せましたが、それにしても手に余る大きさです! 運搬袋から頭部管だけ出した瞬間、あまりに大きいので吹き出してしまいました(笑)。ソプラノやアルトしか見たことがなかった自分には演奏する姿も何だか変でした。
愛用の携帯電話 N600i と比較。この電話機は購入当時“FOMA最小”で長辺は9.2cmですが、ソプラノリコーダーとの大きさの比はお分かりいただけるかと。
N600i を画像内で同じ大きさにしてテナーリコーダーと比べてみました。リコーダーをソプラノだと思ってこの写真を見ると、電話機がものすごく小さく思えてきます。
テナーリコーダーはソプラノの1オクターブ低い音が出る、つまりト音記号の譜面でいう下のドの音が最低音です。運指はソプラノと同じで、バロック式であることを除けば改めて覚える必要はなく楽です。
ドの指穴にはキーが付いている
指穴の間隔が広いため、低いドの穴はキーを使って塞ぎます。指穴自体も大きく、ファ以下の音を出すにはしっかり穴を塞がなければならず、演奏は容易ではありません。「その日のうちに他のリコーダーと多重録音するのも楽勝やら〜」と思っていましたが、ドレミファソラシドがやっとでした……。
ヤマハの一番安い機種でしたが9000円ちょっとでした。次のグレードは木製ですが、木製になると値段が一気に10倍近くに跳ね上がります。音楽制作部で一番長くて2番目に高い楽器。退けないところまで来てしまったので頑張ってマスターしたいです。
2011.5.6(金) 23:59 659 連休写真日記
【日録】いくら好きでも写植だけで休日を過ごすのは息が詰まるので、この連休はあちこちに出掛けたり買い物をしたりました。写真で振り返ってみます。
Nikon D80・タムロンAF17-50mmF2.8・絞りF2.8・絞り優先AE(以下5枚同じ)
5月3日、焼き物の街のお祭りにて。無数の陶器に蝋燭が点され、灯りの絨毯のようでした。冬のように寒い晩でしたが、琥珀色の光に心がぬくもりました。
*
5月4〜5日、泊まりがけで友人達とバーベキューへ。いい肉を奮発し、海の幸や野菜も沢山。快晴の下での食事は格別でした!
*
5月5日、前々から気になっていた物が亮月製作所に届きました。
Nikon D80・AiAFマイクロニッコール60mmF2.8D・絞りF5.6・絞り優先AE(以下同じ)
「ねんどろいど 黒猫」。作品の放映は中途半端にしか見ていませんが、“花澤キャラ”で可愛らしい造形だったら買うしかないでしょう!
“花澤キャラ”と言えば、以前購入した遠子先輩(ねんどろいど 天野遠子)。愛くるしすぎてどうしようもないくらいなのですが、
ジャンルは違えど似たものを持つ二人、案外仲良く語らったりするんじゃないかと(妄想)。
けどこの表情、イヤミとか言ってそうだ……。それを笑顔でさらりと受け流す先輩。
ねんどろいど黒猫は店頭で品切れ続出、Amazonでは定価を超える値段で出回っている模様です。人気なのでしょうけど、ヤフオクにいくらでも出品されているのでそちらで買えば良いのでは……。
こうして歯止めが利いているのか分からない筆者はどうなのというところですが、買わずに後悔するよりも買って後悔すべしということで、ひとつ宜しくお願いいたします。
2011.5.3(火祝) 21:02 658 自家印字への道・SPICA編
【写真植字】PAVO-JVに続いてSPICA-QDの自家印字に挑戦しました。
譲り受けたSPICAは1972年製。光源のフラッシュランプは点灯し動作にも異常がないとはいえ、製造後40年を経過しようとしている機械式の写植機がそのまま使えるとは到底思えません。マガジンに張ってある遮光用の布は動かすとガサガサと嫌な音がし、パッキンに使ってあるモルトは溶けている部分があります。光線漏れが起こるだろうな、と思いながら印画紙をマガジンに収め、印字に取りかかりました。
例によってデステップ文字盤を使用し光源の明るさを変えて印字しておきます。本機には24Qまでの主レンズが装着されているので、このQ数で書体も変えて印字してみました。本機はメインプレートが1枚しか装着できないので書体の頻繁な変更はなかなか厄介ですが、文字盤を8年も押し入れの肥やしにしていたので使いたくなるのが人情というものです。
機械式のSPICAはQ数の変更と送りの変更が連動しないので、主レンズを変えたことを忘れて今までの字送りのまま印字してしまった箇所がいくつか出来てしまいました。スピカさんは進言することなく、あくまで主の意思に忠実に従う姿勢なのです。
こうして打ち終えた印画紙を現像します。印字は多分無理、だけど僅かな希望に懸けたいと思いながら。
20℃の現像液に浸して2分。
なんと!
黒々とした文字が印字できていました! 予想外です!
今回もやや光量不足でしたが(コンデンサ:Bマイクロ、光量:10ノッチ)、光線漏れはなくきちんと印字できました。ゴカールやオクギといった新書体も印字できています。SPICAはPAVOと文字盤の規格が共通なので当たり前ですが、とても古い機種で印字できるのは不思議な気持ちになります。
仔細に見てみると、文字の中心辺りの光量が不足して白っぽくなっています。大きなQ数ならスキャンした画像を補正すれば対応できる濃度ですが、15Qのデステップでは白く飛んでしまっています。光路上に障害物があるか、フラッシュランプの寿命かのどちらかだと思われます。後者だったらどうしようもありません。
出来る限りの手当てはしようと、本体のカバーを開けてフラッシュランプ周りの清掃をしました。ランプも反射鏡も減光用のNDフィルターもノーメンテだったようで埃にまみれていました。綺麗に拭き取ったので多少は良くなるでしょう。
せっかくなのでSPICAの光源ランプをじっくり見てみました。
写研謹製のフラッシュランプ。元写研のサービスの方によると汎用品での代替はできないとのこと。上部が黒ずんでかなりお疲れのようです。労って大切に使わなきゃ。
ソケットは8端子のもの。うち3端子を使用して発光を制御しているようです。
ついでに採字用の螢光管も綺麗にしました。三菱製のFL6W型。これは現在市販しているもので代替できます。
という訳でSPICAでも自家印字に成功しました。但し光源が弱っているように見受けられるので、フラッシュランプの替えが見付かるまでは(あるんかいな)なるべくPAVO-JVを使うようにしていこうと思います。
それにしても、SPICAも印字ができる状態だったとは。前の持ち主様が手厚い保守をしていたとはいえ、40年前の写植機が現役で使えることには驚くほかありません。
2機とも印字可能であることが確認できたので、あとは継続して使っていくことを考えていきます。頂き物に頼っている印画紙を取り寄せ、将来に亘って使い続けられる態勢を調えたいと思います。
2011.4.30(土) 23:59 657 自家印字成功しました!
【写真植字】昨日買い揃えた道具を使って試し印字をしてみました。
今回導入した中古の手動写植機PAVO-JVは目玉機能である5型画面以外は全て機能する状態であることが確認できているので安心して操作することができました。ブラウン管が生きていれば最善でしたが寿命は他の機構より短いことが予想されたので、点示板付きの機種を選んでおいてよかったです。
現像液「パピトール」の条件は20℃2分間に固定しておき、光源の明るさを任意に変えて適正な光量を探りました。「デステップ」という文字盤には10段階の透過率を持つ四角形が収録されていて、これを光量ごとに印字します。5番目がはっきり識別できる状態が適正光量です。
デステップ文字盤
透過率が異なる10段階の四角形の他、現像時の条件などをメモできるように数字とアルファベットの一部、及び必要な漢字が収録されています。
余白ができたので、Q数や書体を変えたり好きな記号を印字したりして遊んでみました(笑)。点示板の動きを見る限りは送りが乱れることなく印字できている筈……。
さあ、現像してみましょう。
PAVO-JVに装着されているマガジン
完全に遮光できる金属の箱で、この中のドラムに印画紙が巻かれています。
暗室に現像液と定着液を張ったバットを用意しておき、印字が終わった印画紙をマガジンごと持ち込んでセーフライトを点灯、暗室のドアを閉めて遮光します。
マガジンを開いて印画紙を取り出します。セーフライトの光が強すぎたり暗室が遮光できていなかったりしていたらここでお釈迦です。
取り出した印画紙を現像液入りのバットに浸します。印画紙に液が満遍なく行き渡るように竹トングで印画紙を動かします。これを2分続けます。
さて、うまく感光しているでしょうか……。
出たーっ!
前回の投函で心配した光線漏れなどの光学的な問題はなく、写植機も正常に動作しているようで、私が操作した通りに印字されているようです。文字の重なりは写植機特有の“センター・センター方式”(座標が文字の中心にある)に不慣れな筆者の不手際によるものです。
明るい所で印画紙を見たいとはやる気持ちを抑えながら、停止液の代わりに水洗い、定着液に2分浸し、最後に水洗いして写植として完成させました。液さえ予め用意しておけば、あとは温度と時間を守って印画紙を浸すだけ。暗室作業は思っていたよりも簡単でした。
生まれて初めて、自分の写植機で、自力で、印字した写植。
光源の光量不足と現像液の温度低下のため文字は薄く、デステップも3段階目までしか見えませんが、それ以外の問題はありません。初めての自家印字はおおよそ成功でした。
昼から外出したので、夜に再度印字の薄さを解消すべく挑戦しました。光量を多目に設定し、現像液は湯煎をして20℃を保ちました。印画紙を現像液に浸してからは祈るのみです。これで真っ黒な文字が印字できますように……。
私が知っている「写植」が出来上がりました!
真っ黒で滑らかな写植の文字。
中学生の時に初めて写植機を見てから十数年。写植ファンサイトを開いて12年。長い長い道のりを歩き続けてやっと辿り着くことができました。とても感慨深いです。
喜びに浸るのは後にして、印字されたものを細かく検証してみます。
1行目の文末「PAVO-JV」は字づら検出機能によって欧文自動字幅規定装置が作動し、プロポーショナル組みが行われています。但し、字づら検出は文字盤の種類を「E欧文」ではなく「つめ組み用かな文字盤」に設定したままだったので詰め過ぎになっています。
2行目はデステップの印字結果。4番目がごく薄く印字されているので若干光量不足ですが、3行目のナール(一番細く、手動機専用のもの)も飛ぶことなく綺麗に印字できています。
4行目の黒い横線はスポット罫線です。罫線に挟まれた文字列が半角左へ飛び出しているのは、センター・センター方式である事を忘れて印字してしまったからです。
次の行は100Qの記号BA-90とBA-88。ぼけ足(滲み)は殆ど見られません。「亮月製作所」と重なってしまい残念。脳内に印字状態が思い浮かべられるようになるまで精進します(笑)。
「ひかりをあびて とろけるみたい」は石井中明朝体OKL(MM-OKL)のつめ組み用文字盤と字づら検出によるプロポーショナル印字(つめS)です。ディスプレイを備えた機種による手詰めと比べると不自然な部分がありますが、試し印字をして送り量を加減すれば対応可能です。「『プリコグ』より」も石井太ゴシック体のつめ組み用文字盤。12Qの小さな文字でも仮名が綺麗に詰まります。花澤さんの「澤」はメインプレートにないので正字が収録されたサブプレートから採字しました。
と、これだけ打つだけでも写植機の操作についてかなり勉強になりました。
8年間出番を待っていた文字盤たち(一部)
文字盤は数年前に廃業した写植屋さんから丸ごと譲り受けたものをこの日を見越して保管していたので和文が30書体ぐらいあります。印画紙は写真用のものでも使うことは可能(研究中)だし、現像液や定着液も写真用としてありふれた安価なものです。しかも液は疲労するまで繰り返し使えます。
写植機さえ動いてくれれば殆どタダで写研の書体が打ち放題……いやいや、しっかり組版するとなると習熟が必要なので、込み入ったものは今後も写植屋さんに発注するつもりです。ただ、写植屋さんがいつまでもいてくれる訳ではないので、いつかは自分で組むことになるのでしょうけど。
今日に至るまでにはとても多くの人のお世話になりました。いくら感謝しても感謝しきれません。そういった方々の写植への想いが亮月製作所を作っていると私は思っています。
今迄は写植の実体験が殆どないまま写植と関わらざるを得ず、根無し草のようで我ながら説得力がないなあと思いながら活動していました。しかしこれでようやくスタートラインに立てた感があります。
自家印字に先立って、プロスタディオの駒井さんから「最後の写植職人でいてください。」とのお言葉を戴きました。今後写植を維持することは更に困難になり、印字できなくなることも考えられますが、お言葉に恥じないよう前進していきたいです。
2011.4.29(金祝) 23:59 656 自家印字への道
【写真植字】写植の印字に必要な道具を買いに行ってきました。
写植オペレータの方にどのように現像しているかを詳しく尋ね、同じものを揃えることにしました(プロスタディオの駒井さん、ありがとうございました!)。
現像液「パピトール」、定着液「スーパーフジフィックス-L」、液の保存用のポリ瓶2本、現像・停止・定着・水洗に必要なプラスチック製バット4枚、竹製のトング3本、暗室用のセーフライトです。合計約15000円也。
現像するには液に浸す時間と温度を厳密に管理する必要がありますが、温度計と時計は手持ちのものを活用することにしました。停止には本来酢酸やクエン酸を用いますが、流水でも差し支えないとのことだったので購入しませんでした。暗室には水道を引いて流し台を用意したのでこれだけあれば写植機で感光させた印画紙を写植にすることができる筈です。
この形式のセーフライトは感材から1メートル以上離して設置する必要があります。それでも手元や文字が見える程度には明るさが確保されています。
こんな感じに見えます。この灯りの中で印画紙をマガジンに装填する練習もしました(笑)。
パピトールの粉末を水に溶いて現像液を完成。印画紙は数年前にある文字好きの方から頂いたものを保存していたのでこれを活用。
あとはマガジンに印画紙を装填して実際に写植機を使って文字を打ってみるだけです。
多分これからの光学的・化学的な要素が一番難しい問題だと思います。光源ランプが弱すぎて感光できない・光路が写植機内のどこかで遮断されている・レンズが印画紙に像を結ばない・マガジンが光線漏れしている/送りが写植機の動作に連動しない(多重露光)・印画紙が既に感光している/古すぎて現像できない……等いくらでも思い付きます。はてさて、どうなることやら。
*
今日は天気が良かったので、この買い出しには名古屋駅周辺の量販店まで高速道路を使って行きました。
3月に東名阪高速道路が「名二環」に名称変更したため緑色の案内標識の架け替えが目立ち、「公団ゴシック」に変わり採用されたヒラギノ角ゴシック体W5+Vialogを見ることができました。
ここからは言い尽くされた話題に対する私個人の所感なのですが……
新しい書体とレイアウトを用いた案内標識は一瞬で判別しにくくなったように感じました。日本語はぐちゃっと書いてあるような感じ、英数字は縦横画の幅の違いばかりが目立ち太すぎる印象でした(私は乱視気味なので尚更)。
ヒラギノ角ゴシック体はモダンゴシック体よりも懐を狭く取り、“角立て”を付けた情報量の多い書体です。ヒラギノが美しく読みやすい書体であることに異議はありませんが、公団ゴシックのように一瞬で文字を判別する必要がある(字面いっぱいに文字を取って省略も可とするような)用途とは異なる設計がされています。
中日本高速道路の「第6回新東名夢ロード懇談会」の資料PDFが公開されています。
http://www.c-nexco.co.jp/corp/construction/project/dr_pdf/06_100602.pdf
このPDFの57ページに新標識の実証実験に関する報告が掲載されています。これによれば従来の標識の文字サイズは和文が500mm、欧文が250mm。新標識は和文が550mm、欧文が300mmとあり、これを比較しています。
結果「和文の判読距離が、210mから243mに向上した(+16%)」とありますが、白抜き文字に従来より少し太い書体を使い字面が1割大きくなれば当然相応に見易くなるのは明らかじゃないでしょうか。何故公団ゴシックを使って1割大きくしたものを比較しなかったのでしょう? 結論ありきの実験だったのではないかと勘ぐってしまいます。
公団ゴシックの開発上の不都合を解消するために市販のデジタルフォントに解決を求めたものなのでどちらにしても受け容れなければなりませんが、私には従来のものの方が見易く、レイアウトも上手(纏まっている)と感じてしまいます。新標識は余白が少なく息苦しくてどこを初めに見るべきか迷ってしまう。
“UD書体”でもそうですが、読みやすさを追及する場合に書体さえ変えればいいってものじゃない。組み方にも大きくされるものだと思います。
2011.4.16(土) 22:22 655 メンテナンス日和
【和文タイプライター】菅沼タイプライターのメンテナンスをしました。
ほぼ完動品とはいえ1975年に作られた本機はさすがに寄る年波には抗えず、動作の度に悲鳴のような摩擦音が聞こえ、動きが渋る状態でした。
これまでは寒かったこともあり動作確認程度しかしていませんでしたが、今後本格的に実用する為に、今日は充分に時間を取って手当てすることにしました。
悲鳴が出るということはどこかが擦れているということです。先日購入した手動写植機には潤滑用のシリコンオイルが大量に付属していたので、これをタイプライターの送りギアや盤面活字のボールゲージ等、摺動部分に使いました。又、見出し板の裏に金属板が敷いてあり、これがやや折れ曲がっていてカーソルの移動が引っ掛かる感じだったので平らにしました。
これで物が擦れるような音がすることなく滑らかに動作するようになりました。機械式はこうした保守が不可欠ですが、使い手が目や耳で症状の原因を突き止めて手当てできるところがいい。電子制御のタイプライターだったらお手上げで業者のお世話にならなければならないので、敢えて機械式を選んでよかったです。
ついでに、使い方が判らず放置してあったインクリボンも掛け方を試行錯誤して復旧しました。カーボン紙を紙の上に挟めば印字できる状態ではありますが、印字したものが見えず、やや文字がぼやける為、やはりインクリボンを使いたくなるのです。
本体に付属していたインクリボンは使いかけで、巻き戻すとタイピングの痕跡が残っていました。どうやら札幌の司法書士事務所で使われていたようで、建物の登記に関すると思われる文字が並んでいました(登記情報は法務局等で誰でも閲覧できるとはいえ、そこまで判るインクリボンを処分せずに売却するとはいい加減な事務所だなあ)。
最後の仕事は平成16年7月2日だったようです。約30年間お疲れ様でした。
かなり最近まで現役だったことが判りちょっと嬉しくなりました。1月19日付の投函で書いた「事務所で大切に使われていたのだろう」という読みは間違ってはいなかったようです。
又、書体の確保の為にネットオークションで落札した盤面活字が届きました。
「モジテック」という機種の手動機用です。以前「日本タイプライター社製の活字には2種類あり、片方は菅沼タイプライターでも使える」と書いた規格のものです。オークションで活字の寸法と形状を教えてもらえたので完璧でした。
盤面は見るからに古く、活字は多少錆びて赤茶けています。配列通りに並んでいない活字が多く、欠落もあります。但し平仮名・片仮名はほぼ無事でした。これはオークションでも確認でき、入札の決め手でした。仮名が欲しかったのでちょうど良かったのです。これが配列通りに全文字並んでいたら入札を躊躇ったと思います。完全品はモジテック使いの人に使ってもらうのが一番だと思うので。
活字によっては文字が潰れてテカテカに光っているものもあります。相当に長い期間使用されたものと思われます。旧字体ではないので戦後生まれでしょうけど、枠の造作や劣化の仕方から昭和40年代以前と推測します。
菅沼タイプライターにモジテックの平仮名活字を装填してみました。その部分だけ活字が赤茶けているのが判ると思います。先のインクリボンも準備完了。
そう、その書体というのは……
上:岩田細明朝体? 下:“イワタ特細明朝体”
例の “イワタ特細明朝体”と呼ばれている書体です。遂に手に入れることができました! 和文タイプを使う動機の一つにこの書体があったのでとても嬉しいです。
五十音を試しに印字してみました。このうねるような仮名に惚れ込んでしまったのです。途切れていない脈絡も、文字の外側へ回り込むような長い払いも、尖った「の」も素敵☆ 句読点や中黒「・」も大きいです。因みに片仮名は元々持っていた盤面活字と同じデザインのものでした。
活字は埃にまみれしばらく使われていなかったようなので印字品質はそれなりですが、せっかく他機種から頂いた書体なので、これから再度現役で活躍してもらいたいと思います。
和文タイプライターという全く未知の領域の中を進む中で、未知である分“ものを見る目”を養うことができたと思います。本体は2台とも状態がとても良いものを手に入れることができたし、必要な活字もこうして揃えることができました。
中古品のネット取引に当たっては、写真やそのものが置かれた状況(付属品が全部揃っている、等)から筋道を立てて判断を導く必要がありますが、これは難しく綱渡りのような面もあります。しかし慎重に選択を重ねたお陰でこれまでについては大きな失敗もなく順調に和文タイプライターによるシステムを充実させることができ、当面の目標(書体の入手)も達成できてほっとしています。
というわけで、“イワタ特細明朝体”を使うために和文タイプライターを買ってもいいんじゃない? というお話でした。
2011.4.10(日) 23:59 654 満開桜に偲ぶ
【日録】日曜日の朝、亮月製作所の窓を開けると並木の桜が満開でした。
Nikon D80・タムロンAF17-50mmF2.8(42mmで撮影)・ISO 100・
プログラムAE(絞りF6.3・1/160秒)※この写真のみ4月13日に撮影
Nikon D80・Aiズームニッコール80-200mmF4.5・ISO 100・
絞りF5.6・1/250秒
Nikon D80・Aiズームニッコール80-200mmF4.5・ISO 400・
絞りF4.5開放・1/500秒
窓と同じ高さに桜の花が見えるので、部屋に居ながらにしてお花見ができます。 どこよりも混雑しない桜の名所なのです。静かに桜を堪能しました。
Nikon D80・Aiズームニッコール80-200mmF4.5・ISO 100・
絞りF11・1/250秒
今日は祖母の1周忌でした。満開の桜を見て「今生の別れ」と一句詠み、桜の季節の終わりと共に旅立って行った祖母。お寺も墓地も山も街も桜色に染まり、かの時を偲ばせてくれました。
*
撮影に使ったレンズは望遠で唯一持っている古いズームタイプのものでした。マニュアルの「Aiニッコール」なのでD80では露出計が作動しません。これがD7000を購入したい一番の理由です。
D80では試し撮りをしては画像を見て露出を決めることになりますが、慣れてしまえば勘で露出を設定できるようになります。今回もそのようにして撮影しましたが、ちょっと面倒なだけで意外とテンポよく撮れました。
AiニッコールでAE(自動露出)が使えないことを我慢すればD80でもそんなに不自由はなく、出来上がる写真に影響はない(つまり、写真の出来は機材よりも撮影者によるものが大きい)ので、D7000はしばらく見送ることにしようと思います。……と言いつつ買っちゃうかも知れませんが!(笑)
BGM:『榊原郁恵シングルコレクション』……溌溂としていて聴いてて気持ちいい!
2011.4.5(火) 23:40 653 花澤病発症?
【日録】桜が咲き始め、寒くて長かった冬が終わったという気持ちにようやくなれました。
気分がどこか浮ついてふわふわするというか、未知のものに期待する感覚というか、心が何となく落ち着かない。昼間の陽気からか、弱い花粉症によるものか、それとも……。
*
花澤香菜さんの活躍が気になる今日この頃。
以前からその声に惹かれて『いばらの王』→『文学少女』→『アイマスDS』→『俺妹』『海月姫』と程々にその様子をチェックしていたのですが、2日の新聞ラジオ欄で彼女の名前をたまたま見付け、NHK第一放送の「渋谷アニメランド」を聴いてみました。(あの晩早く帰ったのはこの為でした。申し訳ない!←私信)
花澤さんの喋りは初めて聴きましたが、声で聴き手を温かく包み込む真摯な人で、声の持ち主に相応しいお人柄でした。
今期は『もしドラ』や『変ゼミ』が楽しみ。……いけませんねぇ、“花澤病”じゃないですか。いや、ファンサイトを作りかねないような嵌まりっぷりではなくて、小さな生き甲斐のうちの一つなので大丈夫です(←大丈夫じゃない気がする)。
*
【音楽制作部】生録音や音楽制作のマスターに6年使ってきた初代Hi-MD録音機「MZ-NH1」が録音操作を受け付けなくなってしまったので修理に出しました。
録音はスライド式のボタンを押しながらずらす操作なので、頻繁な使用に耐えかねてずらしにくくなり、更には誤消去防止状態ではないのに「PROTECTED」と表示されて全く録音できなくなってしまいました。
予備でもう1台「MZ-RH1」という生録音とパソコンへの転送に特化した最終機種も持っているので不便はないのですが、NH1に増して華奢な造りなのでいつまで動いてくれるか心配です。
そこでICレコーダーの類が頭にちらつくのですが、マニアックに嵌まりがちな私のこと、安い普通の機種を買うときっと後悔すると思います。しかも使用頻度がかなり高いので頑丈でなければならない。
そうなるとSONYのリニアPCMレコーダー「PCM-D50」辺りかなと思うのですが、付属品も揃えると結構な出費になる訳で。RH1が2台買えそう。
修理に出しながら上位機種に手を出してしまうことは私にはよくありますが、大きな出費を終えたばかりで金銭的に厳しい状況なので、当分は修理から戻ってきたものを主力で使っていこうと思います。
2011.4.3(日) 23:59 652 音楽は青春だ!
【日録】写真サークルのメンバー4人で岐阜市内のある音楽会に参加した。というよりは、ギターをやっているKちゃん・Mちゃんが参加する音楽会に私とRさんとの組で乗り込んだような形だ。
カラオケ店で練習。景気付けに何曲か歌ってから演奏に取り組む。気分が高まったからかこの時即興で合奏したものが上手くいった気がし、本番でもそのように演奏する事に。
4人で会場へ。20組ほどが持ち歌を1曲ずつ演奏していく。もの凄い緊張感が会場全体を覆っていて、いつも弾きに行く場所とは違うな、危ないなと感じた。同席したドラムソロのおじさんもKちゃんもただならぬ緊張ぶりだったが、私はそれを言葉に出さないだけで自分の鼓動ばかりが気になっていた。
KちゃんとMちゃんが恙なく完成度の高い弾き語りを見せてくれた直後が私達の出番だ。Rさんがウクレレ、私がピアノとリコーダーという編成で『枯葉』を演奏。
しかし、先の練習で決めた段取りもフレーズも全て飛んでしまい見事に失敗した(私が)。独自の味わいを出すのには成功したが演奏はどうだったろう。私の実力不足だ。心底反省した。この忸怩たる思いを忘れないようにしたい。
終演後、夕食にはまだ時間があるということで岐阜の小観光。かつて岐阜に住んだことがあるのでとても懐かしい。変わらない景色も変わった景色もあの頃を思い出させてくれる。
長良公園へ出掛けてみた。ここで4人おもむろに楽器を取り出して弾き始めた。他の人がいるのもお構いなし、最近のCMソングから唱歌まで、思い浮かんだ曲は何でも弾いてみた。なんかすごく青春だ!
合わせるのが初めての曲でもうまく合奏できたり、行き過ぎてお互いがハモりのパートを(相手が主旋律を弾くだろうと思って)弾いてしまったり。この楽しさってうまく言葉に表せない! ポポポポ〜ン!(謎)
日が傾いてきて、気持ちが高まったとはいえ幾ら何でも寒いということで大型店で輸入品店や雑貨店を冷やかして物のデザインや食べ物について語らう。
夕食は市内にあるカフェ「Energy cafe Open Sesame」で。調度品が好きな感じのもので統一されていてとても居心地がいい場所だった。
時間を帯びた物たちによる調和した空間
和の要素を採り入れた料理は眼にも美味しい色遣い
スープのお碗で暖をとる
身も心もあたたまりました。おつかれさまでした……
とても楽しい一日でした。みんなありがとう。また岐阜でやりましょうね。
2011.4.2(土) 23:59 651 新曲公開しました
【音楽制作部】新曲を公開しました!(→音楽制作部)
前回の投函でお知らせした通り活動が思うように出来なくなるので、フルコーラスの形だけでも作っておきたいと思い31日と1日に公開できる段階まで完成度を高めました。未完成で編曲が充分に煮詰めてありませんが、詞とメロディー、全体の曲調はこれ以上変わらないと思います。
以前「湿っぽい曲を作りたい」と書いたように、詞の世界観も曲調も真夜中をイメージしたものになっています。メジャー調の明るい曲にもマイナーコードを意識的に挟みたくなるような作者にとってはカタルシス溢れる作品になりました(笑)。
詞はすんなり出ましたが、曲は思い付いた部分同士をうまく繋げない状態が半年ぐらい続いて1年がかりになってしまいました。“4度進行”を前提に作曲した部分と思い付いたメロディーをそのまま使った部分とは色が少し異なるようです。
編曲はフレンチポップに対して抱くイメージを音にしたつもりですが、まだまだ歌謡曲色が強いかな。2番が終わった後の間奏はこの曲で一番“濃い”部分で、作者が一番好きな部分でもあります。ぱんぱんぱやっぱ♪
手を抜いているつもりはありませんが、市販の音楽や名の知れた同人音楽とはいまだ洗練度に歴とした差があるような気がするので、その差は何なのかをじっくり探求していきたいです。 |