●過去だより626〜650
2011.3.29(火) 23:15 650 もうすぐで
【日録】こちらでは桜の花が咲く直前に放たれる香りに街が包まれています。
あと1週間ほどで亮月製作所からもお花見ができるようになるでしょう。
私が住む地域では、桜は頃合いを見計らったように、別れの切なさや新しいことへの期待感、出会いの喜びを香りや開花で彩ってくれるのです。
さて 不肖私ですが、4月から8月までの4ヶ月余り、自分の時間が8割方奪われ、体力気力とも大きな負担を強いられる状況に身を置くことになりました。
「亮月だより」は管理人の日記も兼ねているので、投函はなるべくしようと思います。しかし写植関連の記事の作成や作品作りといった集中できる時間が必要な事については大幅に滞ると思います。毎年作ってきた暑中見舞いも、ここ2〜3年力を入れてきた動画投稿もできないと思います。進行中だった新曲作りはあと3割を残して止まってしまいました。
そう言いつつ案外活動できるかも知れませんが、管理人としてはかなりの痛手であるのでお知らせしておきます。自分に言い聞かせる為何度でも書きますが、時間を大切に生きていきたいと思います。
2011.3.28(月) 23:59 649 移りゆくもの
【イラスト制作部+日録】好きなイラストレーター・鍋島テツヒロ氏の同人画集『東方落描帖9.5』を購入しました。
彼が2005年から刊行している『東方落描帖』シリーズの総集編なのですが、当初と現在とでは全く作風が異なるため興味深く読み進めました(→サンプル画像)。同一人物が描いたか判らないくらい絵が変化するのはよくあることなのですが。
失礼を承知で書くと、本書では典型的な“萌え絵”である初期の絵柄がどのようにして現在のように独自性を高め、洗練されていったかを追うことができます(2008年の変化が劇的)。初期の絵を同じ構図で今描き直したものも掲載されており、絵描きにとっての数年はかなりの長い期間であることを感じさせます。
……しかし、数年前の彼の絵の足下にも及ばないような自分の画力の情けなさよ。しかも数年前の自分と比べて画力が向上している気がしない(泣)。
という絵描きの端くれの端くれの嘆きは置いておいて、物事の「変遷」が好きなのです。
変化しているものの履歴を鑑賞することに悦びを感じてしまいます。
上記の誰かの絵は勿論、航空写真や地図、道路等の交通(旧道とバイパスの関係)、製品や印刷物のデザイン、流行歌の編曲の傾向、特定の人の容姿や内面、時代が判る映像……等々、変化するものなら何でも。それらの変化の様子を時系列的に追い、どうしてそのように変化したかを考察するのです。
このサイトでも特に作品については古いものも可能な限り掲載していますが、自分の変遷についても面白がって(興味深く)見たいと思っている節があります。何に影響を受けて、どういう心境で、どんな道具を導入して作ったか。掲載する目的の半分は未来になってから自分の変遷を鑑賞することであると言ってもよいかも知れません。
そこで考察したものから今後の方向性を見出すのが斯くありたい姿ですが、なかなか出来ていないように自分では感じています。
イラストに関しては技術的な不足が多くて描く事自体に精一杯という現状もありますが、これまで十数年間「どういう世界観をどのように描きたいか」という方向性を自らに示すことなく闇雲に描いてしまっていた気がしています。これでは洗練される筈がない。
一方曲作りについては、VOCALOID導入をきっかけにある程度の世界観を表現出来つつあるのではないか、と感じています。他人の評価ではなく、自分で自分の曲を主観的に聴いてみてですが。対して2007年以前の曲は実際に、思い浮かんだものをそのまま出していました。
この実力のなさというのは、周りの“上手い人”に追従できていない悔しさともどかしさが常に付き纏うものですが、いまだ変遷の直中にあるというのは私にとっては愉しみの一つで、世界観が確定して完成されないのも面白いかなと思っています。
でもやっぱり、人並みには上手くなりたいですよ、はい。
2011.3.24(木) 18:36 648 初めてのお客さん!
【写真植字】前回「SPICA-QD」を譲って頂いたと書きましたが、昨日もう一台の写植機が届きました。
5型画面搭載の手動写植機「PAVO-JV」です。
PAVO-JV全景(亮月製作所別棟にて)
機械が組み上がった頃には夜遅くになっていました。柱の時計「KS474M」に注目。
昨日の夕方に到着し夜中までかけて仮組み立てと簡単な清掃を行ったところで、通電と主要な機能のみ動作確認を行いました。
1988年製で型式の割に新しいのですが、動作しなかったり不安定だったりする機能がある模様です。本機については今後少しずつレポートしていこうと思います。
これで別棟への備品搬入は全て終わりました。しかしこれからが肝腎なのです。自家印字が最大の難関であり目的です。印字が不可能だとしてもできる限り整備・清掃して、動作する写植機と資料を擁した小さな写植資料館のようなものとしてやっていきたいと思います。
きちんと公開できる状態になりましたらお知らせします。
*
日付の順は逆ですが、友人2人が19日から20日に泊まりがけで別棟の新築祝いに駆けつけてくれました!
前日にSPICA-QDの清掃が隅々まで終わり、部屋も片付いたばかりで綺麗な状態を見学してもらうことができました。この友人達は長い付き合いで私が写植好きだということはよく知っているのですが、動作する写植機を使って説明できるのは説明する側もされる側も意思疎通が楽でした。例えば「パソコンのフォントに当たるものが文字盤だよ」というのは言葉を並べるよりも実物を見てもらった方が仕組みを理解し易いのです。
新築祝いということで、この部屋で飛騨牛のしゃぶしゃぶを振る舞ってくれました。
新しい建物で好きなものと友人に囲まれて美味しいものを食べる。私は幸せ者です(涙)。初めてのお客さん、本当にありがとう!
2011.3.17(木) 23:59 647 「ゆずってください」経過報告
【写真植字】写植の話題を投函するのは随分久し振りなような気がしますが、ようやくお知らせできる日が訪れました。
3月に入り、ある印刷所から卓上型手動写植機「SPICA-QD」を譲って頂きました。
写研「SPICA-QD」(譲渡元にて筆者撮影)
1972年5月に新調したという本機はあまり活躍することなく印刷所の片隅に眠っていたとのこと、交換レンズや点示板の予備インク、貴重なイロハ配列の文字盤、本体カバーに至るまで殆どの付属品も現存していました。電源を入れると採字用の蛍光灯が灯り、縦横送りも正常に動作しているようでした。
本体だけで60kgあるため家人の協力を得て搬出、亮月製作所へやって来るに至ったのです。この印刷所をはじめ関わってくださった方々にはたいへん親切にしていただき、感謝に堪えません。
主レンズと操作部
写真植字機を導入する為に昨年から色々と準備をしてきました。
木造家屋の2階にある亮月製作所に機械を入れることは事実上不可能だった(床が抜ける)ため、写植機の設置と資料の集約の為別棟を建て、重量物が床に載る事や暗室も含め施工し、写植機による自家印字が出来る態勢を調えていたのです。
点示板と点示器
SPICA-QDは物凄い埃にまみれていたので40年分の汚れを落として磨き上げ、取扱説明書に従って一連の動作確認を行いました。
縦横任意H送り・1H送り可、点示器動作、主レバー縦横とも印字可、電源ランプ・採字用蛍光灯・電圧計動作、光源調整ダイヤル動作、カウンター動作、縦横復帰可、ルビ用採字マスクペダル動作、文字枠ストッパーボタン動作、フラッシュランプ点灯(!)。
フラッシュランプが生きていることにとても驚きました。他の機構も完動で、あとはレンズや遮光に問題がなければ印字も可能かも知れません。
光源と文字盤、主レンズターレット(24Qを選択)
この光学系から現像までが一番厄介で、場合によっては自家印字に至らないかも知れません。しかし、写真植字機としてほぼ完動の機体であり、「生きた写植機がある」ことは何よりも貴重な資料であると思います。
また、この印刷所からは廃棄予定だった1960〜1980年代の写植や和文タイプライターに関する資料も多数頂き、詳細な研究ができそうです。
写研が本社をどうにかするらしいという話を目にしたという話題は以前しましたが、仮に亮月製作所で自家印字ができなかったとしても、岐阜の田舎にも小さな写植の資料館のようなものがあっても良いかなと思っています。
現在のところ別棟には写植に関する書籍や資料を集めた書架と和文タイプライター2台、SPICA-QDがあることになります。写植を経験された方や文字好きの方等に公開できるよう更に準備を進めてまいります。
2011.3.15(火) 23:59 646 毎日を大切に
東北地方太平洋沖地震で被災されました方に心からお見舞い申し上げます。
犠牲となられた方のご冥福を深くお祈り申し上げます。
11日の地震発生当時、私が居た場所では目眩かと思うような揺れが数分間続き、自宅のある街は震度3で特段の被害はありませんでしたが、震源地近くの状況が明らかになるにつれたいへん重大な事態であることが判り心が痛んでいます。
遠方の友人知人の無事は殆ど確認できましたが、以前写植に関する貴重な資料を譲ってくださった方の住所付近が津波の被害に遭っているように見受けられ(被災後の航空写真による)、言葉に出来ぬ思いでいます。
ここ最近は非常に多忙でここへの投函もままなりませんでした。
先程静岡で震度6強の大きな地震があり、11日以来こちらへ近付いているように見える震源に危機感を持っています。
今回の投函では「被災しなかった者は過度に自粛せず、今ある日常を送ることが長い目で見て日本の体力の温存と被災地の復興に繋がるのではないか」という旨の事を書くつもりでしたが、私が住む東海地方にもいつかは地震がやって来るでしょう。自分にできる最適な事を考え、充分に気を引き締めて、毎日を大切に、生きていきます。
当サイトも従来通り更新や掲載をしていくつもりです。それが私にとっての日常であり、心を潤し活力とする場所でもあるのですから。
2011.3.2(水) 23:50 645 イメージを音にすること
通勤途中の池が結氷しなくなったのに気付いたり、日中ぽかぽかしたり、白い息を吐く事が少なくなったりと、少しずつ春めいてきました。夜中にあまりの寒さで目が覚める事もなくなりました。訳もなく期待感が膨らんできます。
【音楽制作部】新しく作っている歌の形が見えてきて、多分完成させられるだろう、という段階まで来ました。
1番と2番の作詞作曲が完成し、特定の4小節と間奏の繋ぎ方と後奏以外の編曲もおおよそ纏まったところです。
コードをあまり理解できていないので意識的に曲を組み立てることはできない代わりに、いつもメロディーと完成形に近い編曲が同時に「降りて」きます。けれども曲の流れ順に思い付くのではないので、それぞれの繋ぎ方にいつも困ります。
思い付きで出来た作編曲を音楽として成立させるにはある程度引き出し(音楽表現の語彙)やルール(コード進行や奏法、経験則など)に基づいた補正が必要で、それらの知識をあまり持っていない私にはこれからが一番の難関です。前作『みくみく☆ダイアリー』のように何ヶ月もかかるかも。
歌詞は具体的な事象をつらつら書くと、時間的にも組み合わせ的にも制約があるメロディーに対して言葉が冗長になります。そうすると最近巷で耳にするような平坦でパターンが読めるつまらない(と自分が思う)メロディーになるので、出来るだけ簡潔で美しくなるように言葉を選んでいます。メロディーと歌詞とが引き立て合わない歌は作らないようにしているつもりです。
持っているイメージをどれだけ音として描く事ができるかが曲の(主観的な)完成度に最も影響すると思っています。その点では第1作『青空の向こうへ』はイメージにかなり近いものができたと思うし、逆に『みくみく☆ダイアリー』は旧作のように無難な伴奏を付けて“流して”しまった部分があるように思います。今回は描きたい雰囲気ありきで始め、それに相応しい編曲の定石を活用する事にしました。
メロディーへ安易な伴奏を付けたり、思うまま詞を書いたりするだけでは洗練されていないものが闇雲に出来上がるだけで、本当に表現したいものが適切に描けている訳ではないという事に最近気付きました。旧作の歌詞の公開を止めたり没作品としたりしたものはそういう理由からです。
などと分かったような事を書く割に作詞作曲編曲とも碌に出来ている訳ではありませんが、目指す状態だけでも高い場所に置いておきたいと思います。
(BGM:制作中の新曲)
2011.2.26(土) 23:59 644 けいおん!?
【日録】26日夜、ライヴハウス「K-onn」[けいおん]にて催された演奏会に参加した。
2週間前、写真サークルのメンバーでカラオケに行った後、気分が盛り上がって「K-onnで合奏しよう!」と意気投合した4人(No.641参照)。その時決めた曲目は The LOVE の『ひまわりの観覧車』(→YouTube)とアニメ『それいけ!アンパンマン』のエンディングテーマ『勇気りんりん』(→YouTube)。これを各自で聴き込んで練習した。パートはそれぞれウクレレ、ギター、リコーダー、そして私はカホン担当に決定し、この4人でにわかバンド(?)「月猫楽団」が結成。ライヴハウスと同じ読みのアニメを連想したのは、メンバーの中できっと私だけだ。
『勇気りんりん』は誰でも知っているような歌なので伴奏もハモりもすっと出るような感じだったが、『ひまわりの観覧車』は聴いたことがなかった上ドラムスが凝っていて手こずった。覚えられなかったので耳コピで楽譜にしておいた。
今日の午後に初めて4人で合わせた。1時間カラオケボックスに籠り、時間ギリギリまで演奏の流れを煮詰めた。私は楽譜を見ながらカホンを叩くぐらいだったが、みんな歌いながら演奏したり楽器を持ち替えたりしていてレベルが高く恐れ入った。
K-onnに行くと席はかなり埋まっていた。舞台に向かって最前列の席で出番を待つ。ピアノ、ギター、三味線と様々な楽器の弾き語りが続く。本気・本職の人ばかりで緊張感が高まってきた。
演奏会の半ば辺りで私達「月猫楽団」の出番が来た。舞台に立てば緊張しないのはいつもの事だが、演奏するのが精一杯だった。それでも周りの楽しそうな雰囲気が分かり気分が高揚した。カホンを叩きながら歌うとリズムが狂い易いのを分かっていてもついハモりを入れてしまうほど。
演奏を終えると力が抜けた。手を見ると指の関節が痣のようになっていた。全力で叩いていたのか。やりきった充実感で食事が美味しかった。帰りがけにも寒空の下で暫く話し込んでいた。次回の課題曲が1曲決まり、自分が出る筈じゃなかった別の演奏会にも参加する事になった。何だか“にわか”じゃなくなってきたし、私達は本当に写真サークルなのか……?(笑)
帰宅して録音を聴く。カセットデンスケTC-D5Mによる録音は、「これは」と思って録音した三味線の人の演奏で電池が力尽きていて自分達の演奏が録れていなかった。予備で回しておいたHi-MDの録音が役に立った。今後は録音機2台態勢で臨もうと思う。
自分の演奏が“走って”いて恥ずかしかった。タイコはオカズ(フィルイン)を沢山入れる事よりも一定の速さで刻む事の方が大切だ。ゴハン(基本のリズム)あってこそのオカズなのだ。深く反省した。
しかし演奏を楽しむという点では満点に近い感覚だったので、今後もこの気持ちを忘れずに続けていけたらと思う。
2011.2.21(月) 21:41 643 和文タイプで文書作成
【和文タイプライター】トップページの写真にパンライターを使うため、初めて長い文章を印字しました。
12ポイント細丸ゴジック体横打、字送り4mm(固定)、行送り4段階(8mm)
本来なら原稿を書いて割付までしてから印字するものなのでしょうけど、打ちながら言葉を選んで“箱組”にしてみました。印字時間は30分強でした。
今回は見出し盤にある文字だけを使ったので「無だ」「きょう体」と交ぜ書きになっていますが、別途用意されている「貯蔵庫」の活字を使えば、日常的な文章なら殆ど漢字に困ることはないようです。
私のパンライターには日本タイプライターの活字「細丸ゴジック体横打」の12ポイントが装着されていて、基になったであろう写研の「石井細ゴシック体」のようにクラシカルな雰囲気の文書が作成できます。
この書体、「グリコ・森永事件」の脅迫文に使われたのですよね……。あちらは9ポイントだったようですが。「どくいり きけん」云々と打ってみるのは止めておきました。
手持ちのパンライターはインクリボンが使える状態で入手できたので、印字した文字は紙の上ですぐ確認できるのですが、菅沼タイプライターはカーボン紙を挟んで使っているので印字した文字を見ることができず、印字位置をよく失敗します。手動写植機に画面や点示板が装備されている有難味がよく分かります。
2011.2.13(月) 20:47 642 日本タイプライター用盤面活字詳細レポート
【和文タイプライター】先週の日曜日の話ですが……。
日本タイプライター用の未使用盤面活字がネットオークションにごく安価で出品されていました。オークションには盤面全体の詳細な写真が載っていたので、パンライターの盤面とよく見比べて規格が合いそうだと判断し購入してみました。
「明朝体横打用」ということで、手持ちのパンライターとは違う書体を使ってみたかったのです。それにしても、外箱まで残っているのは貴重です。こういう機会は滅多にないと思うので、少しずつ梱包を解く過程をレポートします。
外箱を開けると、発泡スチロールに護られた内箱が。内箱には「必ずこの面を上にしてバンドを切って下さい」とあります。逆にすると収められている活字がもれなくこぼれます。
内箱をさらに開けてみました。チャック付きポリ袋で密閉された盤面活字(写真右)の下には真新しい冊子『文字索引』が収められていました。
ポリ袋の中身です。防錆紙が乗った盤面活字本体(右)と保護用の段ボール(中)、見出し盤用の活字シール、活字盤を保護するアルミの板(左)です。
活字シールです。使用頻度の少ない文字を別途購入して盤面へ追加した時に、見出し盤に貼っておくものです。
そして盤面活字が出てきました。日本タイプライター用「2376標準配列」の「明朝体横打用」9ポイント活字です。パンライターの盤面活字と形状が非常によく似ています。使用感は全くなく、活字が青白く輝いています。
側面には書体名・配列・製造番号のシールが貼られています。シールの直上にあるレールにボールゲージと呼ばれる四角柱状の滑り車を45度に噛ませ、タイプライター本体へ装着するようになっています。
整然と並ぶ新品活字たち。美しいの一言に尽きます。
盤面の仮名活字を拡大してみました。第637回の投函で紹介した、朝日新聞の1倍活字によく似た扁平明朝体でした。あの時書体を調べて以来使ってみたかったんだー♪
しかし。
パンライターに装着しようとしてもうまく入りません。両者を比べてみると今回購入した盤面(写真上)は短辺の寸法が3ミリ程大きく、ボールゲージがつっかえてしまいます。ボールゲージを省略してパンライターに装着するとザザザという金属が擦れる音がして明らかにまずい状況でした。最後の最後まで来て規格が違う事が判るとは……。もしや、同じパンライターでもPLUS製と日本タイプライター製では盤面の大きさが変えてあるとか……? はまり過ぎると還って来られなくなりそうなので、問題提起だけにしておきます(笑)。
そのままでは使えないのは残念ですが、レポートを続けます。
活字の形状を比べてみました。写真左は菅沼タイプライター用活字で、中央は今回買った日本タイプライター用盤面の活字、右はパンライター用の活字です。
日本タイプ用とパンライター用は全く同じ形状でした。(という事は、「日本タイプ用」には菅沼と互換性がある大きいものとこの形状のものの2種類ある?→このブログによると、「日本タイプの製品で、パンライター・ネオライター・スーパーライターは同じ活字だが、モジテックと言う機種はまた違う」とのこと。)
指でつまんで接写。上がパンライター用の12ポイント細丸ゴシック体、下が日本タイプ用9ポイント明朝体横打用です。活字の寸法は同じですが、彫られた文字の大きさだけ異なります。パンライター用の盤面に移植すれば問題なく印字可能です。とても手間がかかるので私はやらないけど。
左は今回入手した文字索引(1983年8月30日初版)、右はパンライターについてきたもの(1976年9月7刷)です。
音訓・部首・総画で文字の配列位置が引けるようになっています。巻末には日本タイプライターで使える全文字の配列表が載っていました。これによると活字は2書体6種あり、
・明朝体横打/細丸ゴジック体横打(12ポイント)
・明朝体縦打/細丸ゴジック体縦打(12ポイント)
・明朝体横打/細丸ゴジック体横打(9ポイント)
とのこと。半角の「アラタ」や変体仮名等もあるようです。和文タイプマニア垂涎の冊子でした!(←居る……よね?)
この冊子の巻頭に、平成改元に伴う配列変更の案内が挟まっていました。
平成を迎えて間もなくに生まれたものの顧られる事なく今に至った哀れな盤面活字。私も本来の用を為させてやることはできませんが、貴重な資料として持っておきたいと思います。
2011.2.12(土) 23:59 641 混沌の中から
【日録】雪で外出できなくなった三連休前半。ならばということで部屋の大掃除。新しく買った備品たちが梱包されていた段ボールの処分と、棚の整理。天井まで届く大きな書棚を買ったのでジャンル別に分類し、部屋に積まれていた本とCDは全て棚の中に収まった。さながら小さな“写植図書館”が出来、自己満足に浸る。“絵の資料”はもっと厳選しなければ。
A4の本や書類の収納になかなか苦労した。棚板をA4仕様にずらすと他の段に本が入らなくなったりそもそもB5より大きい本を収納する事を想定していなかったりする。大きい方が見応えがあって嬉しいが、痛し痒しだ。
12日は所属の写真サークルのメンバー+αの5人でカラオケに興ずる宵のひととき。
無難な歌で様子見をしようと思ったがその必要はなし。すぐにカオス状態になったので一安心(?)。私はどうしても歌謡曲寄りになってしまうが、生温かく見守ってくれていたようだ(笑)。
それぞれの引き出しの中身が見えて面白かった。全然知らない曲ばかりでもなく、傾向に少しずつ重なる部分がある。まだ長い間同じ時間を共有したとは言えない人達なのに、不思議だ。
Rさんの歌に即興でハモるのがうまく決まってとても気持ちよかった!『じこはおこるさ』等の珍曲も飛び出し、彼の底知れぬ歌の世界を垣間見る事ができた。
3時間程歌ったあとは夕食へ。
カラオケで盛り上がった勢いで、今度このメンバーで合奏しようということになり演奏曲まで決定。私はきちんと音楽やってる訳じゃないけどよかったかしらん。でも面白い事になりそうだったので飛び込んでみることにした。
いつかはオリジナル曲をやりたいねという話になった。「いいフレーズが思い浮かんだ! とその時思っても、いざ作曲にかかろうと思った瞬間忘れてしまう」とKさん。私も何度も経験があり悔しい思いをしている。RさんはICレコーダーに吹き込んでおくよう助言していたが、私の場合、どうしても忘れたくないフレーズは頭の中で無限ループさせて記憶する。今日はカラオケ中にフレーズが出てきてしまったので難儀した。帰宅してすぐMacに向かい、無限ループしておいたフレーズを打ち込んだ。骨組みすら危うかった新曲がかなり進捗した。万歳!
という訳で今回も良い刺激を沢山貰ったのであった。みんなありがとう。
(BGM:ゴードン(内海賢二)&トーマス児童合唱団『じこはおこるさ』)
2011.2.7(月) 23:59 640 満足の週末に、買い過ぎ警報
【日録】果てしなく続く名曲発掘の旅。
今回は発掘というよりは、直近に発売された曲です。
堀江由衣『インモラリスト』(2011.2.2発売)。
堀江さんのソロCDはポニーキャニオン時代から全て持っているので私の中では定番なのですが、本作は特に強力な吸引力を持っています。
QUEEN のような重厚で悲壮感のある曲想が組曲のように目紛しく展開し、突然拍子が変わったりブレイクを挟んだりする等とても聴き応えがあります。譜割りもかなり細かく、それに難なく追従する堀江さんの歌唱力にはただただ感嘆するのみ。カラオケトラックも収録されていますが、それに沿って歌うのは困難というか、曲の情報量が多くて覚えられません!
3曲目の『HOLIDAY』もいい。トイピアノを伴奏のスパイスに持ってきたレゲエ調の良質なポップスです。クレジットによると、グロッケン・ウクレレ・ドラムスのみ生演奏とのことで。打ち込みでここまでいけたらええよな〜。
自作自演の音楽家が全盛の今、職業作家がこうして骨のある仕事をしているのはとても喜ばしい事です。私だけだと思いますが、常に新しい表現に挑戦し続けていた昭和の歌謡曲が進化したものを見たような思いでした。
*
という訳で、久し振りに友人と“絵の資料”を買いに。
『インモラリスト』だけ買えれば良かったのですが、やはり色々買い込んでしまいました。
霊夢だョ!全員集合
左上から、東方蒐集録第参集2P霊夢、ねんどろいど、東方蒐集録第壱集霊夢、ねんどろいどぷち第一章、ねんどろいどぷち博麗神社例大祭カタログ購入特典Ver. 、博麗神社例大祭開催記念。写っていないが「figma博麗霊夢」もうちに居る。
買ったのは下段中央のだけですが、我が家にはこんなに霊夢が……。何だかんだ言って好きキャラなのかも?
フィギュアは集め出すとキリがなくて大変な事になるのは自明なので、場取らなくて安いディフォルメもの且つ好きキャラのしか買わんことにしています。が、歯止めが利く訳がないですよねぇ(笑)。
「東方蒐集録」より橙とナズーリン。筆者は動物系が好きであると判明。
東方蒐集録シリーズはちまこくて価格も手頃なので有難いですが、パッケージを開封するまで中身が判らないのでお気に入りを手に入れるまでに結構な数が揃う訳で……。全部揃えるつもりがなければ多少高くてもオークションで落札した方が安上がりだったと反省。
ただ、思いがけず手に入ったキャラがよく出来てたりするので、これはこれで良しといたしましょう。
「東方蒐集録」第参集より霧雨魔理沙Ver.2
魔理沙に特別思い入れがある訳ではありませんが、このフィギュアは可愛らしくて和みます。机の上にちょこんと。
友人の“冬の祭典”土産である赤りんご画伯の新刊『まだ聞こえてる祭りの音が、あと少しだけ消えないように』とねんぷち霊夢。満足の週末でした。
BGM:堀江由衣『インモラリスト』
2011.2.3(木) 23:59 639 新品活字を買ってみた。
【和文タイプライター】
菅沼タイプライターの盤面活字に収録されておらず、どうしても必要だった活字を買い足しました。「亮」「桂」、自分に関する漢字1字、横組用の読点「、」、「,」、「※」、「*」です。
自分の名前(桂光亮月)が印字できないのはとても気になっていたので、早々に対処する事にしたのです。ついでに私がよく使う記号も求めました。アスタリスクは本来のそれではないような気がしますが、これはこれで可愛らしいので良しとしました。
先述の「日本タイプライター」用の新品活字で、1本500円也。
実際には“イワタ特細明朝体”の新品活字があると聞き、平仮名全文字を注文したついでだったのですが、届いたものは昭和60年代以降の文書でよく見かけた懐の広い現代的な明朝活字でした。
タイプライター店の方には見本の画像を送り、何度も確認してから注文したのですが、どうやら「明朝体」より細分化された認識はお持ちでないようでした。恐らく和文タイプライターが全盛だった時代も売り手・使い手ともに書体に対する認識はこのぐらいのものだったのでしょう。残念ですが、平仮名は返品する事にしました。(この明朝体の出来も、決して悪くはありません)
新品の和文タイプ活字を見るのは初めてなので、そのまま返してしまうのはちょっと悔しい。という訳でじっくり見てみました。
拗促音には「H」「2」という刻印があります。
「っ・ゃ・ゅ」には2の刻印、「ょ」にはHの刻印があります。刻印された文字にどのような意味があるのかは今の私には分かりませんが、興味深いです。
今回購入した日本タイプライター用の活字は活版印刷用の金属活字と異なる特徴を持っています。(「パンライター」も日本タイプライター製ですが、また異なります)
同じ活字を向きを変えて撮影してみました。ボディの切り欠き(ネッキと呼んでよいものか)の深さが左右で異なっています。ボディの中心辺りで深さが変化しています。
一方、菅沼タイプライター用活字は、
ボディの右側に深い溝が彫られ、中空に近い状態になっています。ネッキは深い溝がある面の両側にあり、反対側には刻まれていません。これは確かに特殊だ。
盤面活字の空白部分に、購入した日本タイプライター用活字を装填してみました。高さは全く同じ、当たり前ですがサイズも同じです。印字も菅沼用の活字と変わらない感覚ででき、菅沼タイプライターに対して互換性がある事が実証できました。
写真ではうまく色が出ませんでしたが、使い込まれて黒っぽくなった周りの活字に対し、真新しい活字が白く目立っています。
自分の名前の活字が新品で売っていて、それを使えるようになったというのがこの目で見える状態なのが嬉しい。活字を少しずつ買い揃えて充実させるこの感覚は、画材の「コピック」をいつの間にか何百色も揃えてしまうのに似ています。これは危険だ……(笑)。
自分の名前が印字できるようになったので、かなり活用の場が広がったと思います。名刺とか葉書に使うと面白そうだ!
*
【写真植字】写研本社に動きがあるという話題を目にしました。
私も昨年末、それに関連する事の文書を知人に送っていただいています。“動き”については、「近い将来こうなる」と2007年のある催しでも耳にしていました。そうなると、真実なのではないかと勘ぐってしまいます。
東京へ容易く行ける場所に住んでおらず完全に裏が取れないのでこのようにしか書けませんが、今後の動きに刮目していきたいです。
亮月製作所で募集している稼働する手動写植機については数件からご連絡を頂いていまして、それぞれについて詳しい状況が判り次第、譲り受ける方を決定しようかと思っています。まだまだ募集中です。
今年中には導入して印字できるようになるといいなあ。
2011.1.26(水) 23:35 638 パンライターがやってきた
【和文タイプライター】亮月製作所にもう1台和文タイプライターが届きました。
PLUSの小型和文タイプライター「パンライター」です。
日本タイプライターから同名で発売されていた機種のOEMと思われます。横組ベタ送り専用の簡易なものですが、その分機構は単純なため操作は簡単で、鋳物の筐体とはいえ抱えて持ち運べるほど軽量です。パンライターは緑色のものが多く出回っているようですが、この機体はくすんだ青色。主張しすぎなくて好感が持てます。
実は昨年末に中古屋から2000円で譲り受けたものです。オークションでよく見かけるのは錆びたり見出し盤に書き込みがあったりするもので、ゴミに出されて雨に当たったりかつて酷使されたりしたと考えられるため手を出しにくいのですが、この個体は外観に殆ど傷みがなく、あまり使われないまましまい込まれていたのだろうと推測し、購入に至りました。ただし送り主の荷作りが不適切で活字の3分の2がバラけた状態で届きました。無惨で涙が出そうでした。
そこで例によって和文タイプライターの修理業者を見付け出し、盤面活字の復元と修理一式を頼んでいたのです。
丁寧に修理してくださり、全ての機能が滑らかに動作するようになりました!(ありがとうございました!)
→株式会社東京タイプライター商店
使い方は菅沼タイプライターとほぼ同じで、印字したい文字を見出し盤からカーソルで選び、印字レバーを押し込むだけです。パンライターでは見出し盤の下に盤面活字があり、長いアームでカーソルと盤面活字とが繋がっていて連動するようになっています。
パンライターの操作部です。下から順に、採字をするカーソル、ベロのように出ているのがスペース兼バックスペースレバー(倒す方向で変化)、その左に印字レバー、上の長いものが改行レバー(4段切替)、奥に僅かに見えているものが復帰レバーです。これだけ。枡目に文字を入れるような感覚があれば簡単に操作できます。
見出し盤の配列は読みの五十音順で、初めての私でもすぐに採字できました。仮名や英数字、漢字や記号を2205文字収録。
では、印字してみましょう。
見出し盤から打ちたい文字を選び、印字レバーを押すと……
盤面活字から活字を1本くわえ、せり出してきます。
せり出した活字はインクリボンに当たり、その背後にある紙に打ち付けられて印字されます。これの繰り返しです。
印字される文字は前回紹介した「細丸ゴシック体」でしたが、見出し盤は例の朝日新聞風の明朝体でした。なお、見出し盤最奥の英数字を採字すると本体からカチッと音がし、自動で字送りが半角になります。ひそかな気遣いに感動。
という訳で操作も採字も簡単、軽量で取り扱い易いので、和文タイプライターに入門したい方にお薦めです(←誰もおらんか)。ネットオークションで程度の良いものを粘り強く探してみてください。
本機購入の際、ビニール製の本体カバーと文字索引の冊子と昭和58年付けの原稿が同梱されていました。これらから判断するに、このタイプライターは1976年から1983年の間に製造されたと思われ、とある官公庁の施設で活躍していたようです(罫紙の欄外に「○○県」と印刷されていた)。予想通りぞんざいな扱いは受けていなかったようでほっとしました。
足りない活字の補充を含めた修理代はウン万円。今の時代にこれだけ投資して和文タイプを始めるのは我ながら変態だと思いますが、アナログ印字の魅力には替え難いのです。どうぞ変態と呼んでください(笑)。でもこれ以上和文タイプは買いません。コレクションでも動態保存でもなくて、実用目的なので。
パンライターがやってくるのを見越して用意しておいた電気スタンドと木製机とともに。どちらもシンプルで機能的なデザイン。良き相棒となりますように。
→HERMOSA「SNIF デスクランプ」
→ニコルソン家具店「レトロ ワークデスク」
夜も更けてまいりました。おやすみなさい……
2011.1.24(月) 21:18 637 和文タイプライターと書体
【和文タイプライター】19日付の投函の中で「和文タイプライター用の書体には明朝・ゴシックほか何種類かある」と書きましたが、手元の資料から可能な限り拾い出してみました。
画像をクリックすると拡大します
現時点で4書体が確認できました。
1は先日購入した盤面活字の書体。岩田細明朝体(イワタ明朝体オールド)に非常によく似ていますが、「あ」の傾き具合や濁点の位置等が異なります。
2は“イワタ特細明朝体”。dreamoclortv 氏の flickr から引用して集字しました。岩田のオリジナルなのでしょうけど、秀英体の流れを感じます。「の」の折り返しが尖っていて払いがくっつきそうなところがいい。
3は平体のかかった明朝体。朝日新聞の1倍活字にかなり近いデザインですが細部が異なり、「た」「に」等の脈絡が切られています。戦後生まれっぽいモダンなデザインです。
4は「パンライター」という日本タイプライターが製造していた和文タイプ用の活字。細丸ゴシック体なのですが、石井細ゴシック体にそっくりです。ただし「さ」「そ」のようにオリジナルと思われる形の文字もあります。アヤシイ。
得体が知れないのか私の勉強不足なのかは分かりませんが、4書体ともデジタルフォント化はされていないと思われます。これらの味わい深い書体のために和文タイプライターを使ってみるのもいいかも知れません。
“イワタ特細明朝体”について、盤面活字を譲っていただいたタイプライター業者さんに尋ねてみました。
「新品は1本500円、中古は探してみます」とのこと、ただし菅沼用のものは特殊で在庫がないので日本タイプライター用のものから流用するそうです。話によるとタイプライター用の活字は日本タイプ・日経・東和で互換性があるらしく、これらの活字を菅沼に使うことは可能、その逆は活字の長さの関係で不可能とのことでした。文字盤の配列も菅沼だけ特殊だとか。
どちらにしてもこの書体を購入し使うことはできるということで一安心。新品を揃えると平仮名だけで立派なDTP用フォントが買えてしまうので、できれば中古で安く購入したいところです。
2011.1.23(日) 23:53 636 【誰得】菅沼タイプ字送り一覧
【和文タイプライター】19日付の投函の中で「菅沼タイプライター12号-3000D型は送りが16段切替」と書いたものの、どのように送りが変化するのか分からなかったので印字して一覧にしてみました。画像の数字は「横ピッチダイヤル」に刻印されているものに対応しています。
画像をクリックすると拡大します(実寸・240dpi)
手持ちの活字は五号で15Q相当なので、ベタ送りは3.75mmピッチとなります。横ピッチダイヤルを「10」に設定した時がほぼベタ組みのようで、ダイヤルの数字の増減に正比例して送り量が変化している模様。数字が1変わると14文字の行長が約5mm変わるので、1文字につき 5÷13≒0.3846mm≒五号の1/10 ずつ送り量が変化するようです。
なお、これは12号機の場合で、10号機の場合はこの倍のピッチになる代わりに10段切替となります。送り量は縦横共通です。
取扱説明書の解説は「分かっている人向け」だし、和文タイプライターの実用上の資料はネット上に殆ど存在しないので、こうして遊びながら掲載していきたいと思います……って、誰が得するのっ?
2011.1.22(土) 23:43 635 テレビで見かけた書体
【写真植字】テレビを見ること自体が少なくなった管理人ですが、コマーシャルに写研書体が使われているのを見かけました。
→英会話イーオン「英語家族」編
定番の石井太丸ゴシック体が和文・従属欧文共に使われています。欧文の使用は珍しいと思います。
→アース製薬「バスロマン」
藤原紀香さんが『野ばら』の替え歌を歌うもの。歌詞の字幕はスーラなのに、「ミルクプロテイン」「コラーゲン」等の商品名はファン蘭E。抑制の利いたゴージャスな感じに相応しい書体がDTP用にはなかったのでしょう。この書体、テレビではとても久し振りに見ました!
2011.1.19(水) 23:59 634 和文タイプライター、はじめました
【文字関係】和文タイプライターを購入しました。
菅沼タイプライター株式会社製「12号-3000D」型です。
銘板を見ると1975年10月製造の刻印があり私よりも年上です。最後のオーバーホールは平成2年とあります。よくこれまで故障もなく綺麗な状態で生き残ってくれました! 付属品がほぼ全て揃っていたので、きっとどこかの事務所で大切に使われていたのでしょう。
和文タイプライターの存在は、高校生の時に文化祭のパンフレットがタイプ打ちだったのがきっかけで知り、実物は10年程前に郷土資料館のような施設で初めて見ました。それ以来何故かあまり興味が湧かず、関わることはないだろうと思っていました。
しかし昨年のサイト再建の際、手動写植機は和文タイプライターを参考にして発明されたと知り、どういうものであるのか使ってみたくなりました。
和文タイプライターは既に生産終了しているので中古を探しましたが、出回っている殆どが英文タイプライターで、「何で日本なのに英文タイプばっかなの!?」と理不尽さを感じ憤りもしました。
探し続けて1年弱、北海道のリサイクルショップから完動品を5000円で譲り受けました。やはり和文タイプライターに需要はないのか、この店で1年半買ってくれる人を待ち続けていたようです。
本機は電源を必要としない手動式で、複雑な電子回路を持たない分構造が単純で修理し易く、殆どが金属部品でかなり頑丈に作られています。そのため一人では持ち上げられないほど重く、家庭用の机に置いたら多分崩壊するので、今は床に直置きしています。
しかし届いた機械には活字が収納されておらず(写真の白い円筒の下にある茶色い場所)、このままでは絶対に印字できません。やられた(?)と思い挫けそうになりましたが、現在でも和文タイプライターの保守をしている店を探し出し、盤面活字一式を取り寄せました。
約2500文字がびっしりと収録されている。活字は固定されていないので、ひっくり返すと大変な事になる。中央付近に予備の活字を入れるための空白が確保してある
盤面活字の拡大。活版印刷と変わらない風情
これでようやく印字するに至りました。
画像をクリックすると拡大します
※見出し盤は後述の「土地家屋調査士・司法書士用」ではありません
手前の「見出し盤」に印刷された文字を中央の小さなカーソルで選ぶと奥の盤面活字も連動して動き、左右にあるレバーを押し下げると活字を拾ってプラテン(白い筒状の物)に打ち付けるようになっています。
手動式の和文タイプライターは裏文字になった活字を直接見て文字を打つ方式のものが多いようですが、菅沼タイプライターは発明当初から伝統的に見出し盤を備えているため採字(って写植以外にも言うのかな)しやすく、両手式の印字レバーや機構の配置等の左右対称デザインも美しく、購入の決め手となりました。電動式じゃないというのも後押ししました。
付属していた取扱説明書によると12号-3000D型は最上級機種だったらしく、偶然とはいえ良いものを手に入れる事ができとても嬉しいです。
試しに印字してみました。
送られてきた盤面活字は土地家屋調査士・司法書士用で、「雑種地」「根抵当」といった熟語が採字し易い位置に配置されています。登記事務に使われていた関係でアルファベットや横組用記号は収録しないという実に漢らしい仕様。人名漢字にも未対応(予備活字は購入していない)でした。
一般の漢字の配列は五十音別かつ画数順のようで(未確認)、言われているほど採字に時間はかかりません。写植の「一寸ノ巾」配列はある程度慣れないと素速い採字はできず、私はしょっちゅう写植機を前に唸っています。そう思うと、和文タイプは初めての私でも5〜30秒ぐらいで採字でき、かなり楽だという印象です。
和文タイプライター用の書体には明朝・ゴシックほか何種類かありますが、私が欲しいのは“イワタ特細明朝体”と呼ばれている書体です(リンク先は dreamoclortv 氏の flickr、画像の出典不明)。
一筆書きのように繋がり、大きくうねる平仮名の画線が魅力的。実はこの書体も和文タイプライターを買う動機でした。職場に保存されている古い文書でこの書体を見付け、「使いたいなぁ……」とうっとりしてしまったのです(笑)。
12号-3000D型は縦横組可能で、送りは縦横とも16段切替です。タブも可能。活字の大きさには四号・12ポイント・五号・9ポイント・8ポイントがあるようです。使いこなせれば初期の「スピカ」並みの組版ができると思います。
慣れるまで遊んでみて、書体も少しずつ揃えていきたいと思っています。印字の依頼が来るようになったら面白いだろうな、きっと(←需要はあるのだろうか)。
2011.1.18(火) 23:59 633 完成された安定感
亮月製作所用の掛時計を新調しました。
SEIKOの「KS474M」という防塵時計です。
掛時計は滅多に買うようなものではないので、折角なら妥協せずに選んでみようと思いました。
私の好みは「機能美」で、ごちゃごちゃと飾り付けられたりデザインしようと思ってデザインされたりしたものよりも、虚飾を排して斯くある姿(時計なら時計としての機能)を体現したものが好きです。
「耐久性」という言葉も大好きです。頑丈で故障がないように作られているかだけでなく、年を取って今の自分とは違う嗜好や感覚を持つ自分になっても愛用していられるかも考えます。その上材料が劣化して見た目が見窄らしくなったり、デザインに作られた時代の息がかかっていて古臭く感じるようになったりするのは嫌なので、少なくとも20〜30年以上使うことを想定して選ぶようにしています。
あちこち探して外観でまず候補に挙がったのは、WaveTrance の電波掛時計でした。できれば電波時計がいいと思っていたので、シンプルで今風デザインの香りがないこの時計は買いだ! と思いました。逆に、電波時計には何故こういうタイプのものが殆どないのでしょう?
詳細を見たら3000円台で中国製。なんかアヤシイので一応の仮押さえとして、もっと良いものがあるかも知れないと思って探していたところにKS474Mを見付けてしまったのです。
あまりに気に入ってしまったので、注文して届いたらすぐに激写。
文字盤の数字や目盛りは平面ではなく浮き彫りになっている
くすんだ薄緑の金属筐体と3時の位置にある三日月型の断面をした可愛らしい蝶番
蝶番の反対側にある留め螺子。ムーブメントは金属筐体の内側にあるので、電池交換や時刻合わせのときはこの螺子を廻して裏蓋を開ける
開腹状態。質実剛健な外観からは想像できないシンプルな部品構成
裏蓋は中心がプラスチック、周囲がゴム製。留め螺子により金属筐体と密着し、塵の侵入を防ぐ
壁掛け用の穴がくの字になっており、バスや船舶等揺れのある環境に掲げられても簡単に外れないようになっている
これぞ時計という無駄がなく素っ気ないデザイン。読みやすく癖がない書体。可愛らしい薄緑のスチール筐体。過酷な環境で長年の使用に耐える防塵設計。電波時計ではないし定価15000円という実用時計としてはかなり高いものなのですが、媚びのない真面目な意匠と金属製のしっかりした造りにひと目惚れでした。LOVEずっきゅんなのです(←分かる人にしか分からん)。
電波掛時計が980円で買える時代に1万数千円もする普通のクォーツ掛時計を買うのは限りなく道楽に近い気がしますが、どうでもいいような安い時計を買って3年ぐらいで壊れて買い直すのを繰り返すよりも、造りがしっかりして飽きのこないデザインの時計を何十年も大切に使う方が一生を通しての満足感が高いと私は思うのです。それにこの時代、物を使い捨てているような場合ではないですし。
KS474Mの系譜を調べてみると、バスや船舶用の時計として1964年にトランジスタ式・単1電池使用の初代を発売、その後クォーツ式に変わり、1977年に単2電池使用の「QA513M」、そして最近まで販売されていた秒刻みの従来型「KS451M」、2007年に秒針が滑らかに動くスイープセコンドの現行型「KS474M」へマイナーチェンジ、というように何度も仕様を変更されながら、外観のデザインを殆ど変えることなく現在に至るという超ロングセラーでした。
“バス時計”としてレトロ方面で語られることが多いようですが、古めかしいからいいというよりも、デザインをこれ以上変えようがないから四十数年間変えなかったという完成された安定感がこの時計の魅力だと思います。
容姿は今風でなく自らの本来の使命に徹するタイプの一見地味な子ですが、薄緑の外装や蝶番、平体がかかった書体の文字盤などに可愛らしさが仄見えるところがいい。長いお付き合いになりそうです。
CITIZENの防湿・防塵時計「リフレM293」も可愛い子やな〜。こちらもバス・船舶用でKS474Mより手頃な値段、アイボリーのプラスチック筐体。防塵に加え防湿仕様にもなっているので、台所や洗面所にも掛けられるところもいい。
※追記
KS474Mについて語るブログは多くありますが、この時計のムーブメントについて記している所はないのでここで取り上げておきます。
私が購入したKS474MのムーブメントはSKPという銘柄で、SEIKO製ではあるのですが生産国は中国でした。
上部をよく見ると、「SKP/NO(0)JEWELS/CHINA」と読み取れる
NO JEWELS とは、軸受けに摩耗防止の宝石が使われていないという意味
SKPの掛時計用ムーブメントを部品として買うと国産でも中国産でも1500円*。純国産時計だと思ってKS474Mの購入を検討されている方は注意されたし。買ってみないとムーブメントの生産国は判らないのでどうしようもないですが、私は中国産の物で痛い目に遭っているので、正直言って長年の動作に耐えるか不安です。生産国がどこであろうと耐久性に大差はないのでしょうか。
*有限会社岡山時計部品センターの通販サイトを参照。 →楽天市場
2011.1.15(土) 23:59 632 共鳴の輪
★これまで記録日を表題の日付にしていましたが、分かりにくいので実際に出来事があった日を日付として残すことにしました。今迄の慣例通り、後日記録する場合の時刻は23:59とします。
【日録】所属の写真サークルの写真展が最終日を迎え、会場である名古屋のカフェでクロージングパーティが開かれたので参加した。
開始の16時には既に30人程が集まっており、店内はほぼ満員状態だった。サークルのメンバーよりもミニライヴの演奏者の方がずっと多く、メンバーの内々で締めるつもりでいた私はただただ圧倒された。
ミニライヴには数組が出演。ギターやウクレレ、リコーダーやオルガニート(作曲できるオルゴール)といった楽器の演奏と歌が主で、間々に料理が振る舞われつつ、賑やかな時間がゆったりと流れた。
私もミニライヴの終盤、“後座”(前座の反対)のような流れでカホンを叩いた。プロの方々の後に演奏するのは何とも申し訳ないが、精一杯やらせていただいた。
見ず知らずの人達が集まり、写真と音楽を通じて一つの輪となる。奇蹟のようではあるが、それぞれが持っているものに共鳴する部分があるのだろう。そこにいた人達に同じ匂いを感じた(私はかなりアウトローだけど)。
主宰のRさん、お店のKさん、サークルメンバー、演奏者の皆さん、会場に来てくれた友人A氏、みんなありがとう。
カフェ凛さんが用意してくださった看板
Nikon NewFM2・Aiニッコール50mmF1.8S・コダックEktar100・絞りF2
※後日談
実は持参したカセットデンスケのプラグ変換コードを忘れ、一度きりの演奏を録音できなくなったことにかなり凹んでいました。すべて終わった後だからここに書いちゃうよ(笑)。
2010.12.32(土) 23:59 631 新年明けざる日
24日(金)、仕事中から鼻の奥に乾いた違和感を感じていたものの、25日に無理を押して用事に出掛けたら容態が悪化してしまいました。26日の写真サークルの忘年会の参加を断念せざるを得なくなり、27〜28日の仕事も1日半を休み、29日からの冬休みも大晦日まで寝込んでいたという今まで罹ったことがないようなとても酷い風邪に見舞われました。
ようやく屋内で動いても差し支えない程度に回復しましたが、大掃除も寒中見舞の準備も全く出来ず今に至っています。私の中では2010年がまだ終わっていないのです。新年を迎えた実感が全くなくて、寧ろ「12月32日」に居るような感覚です。
2010年は周りが大きく変化し、自身も再構築を迫られた一年でした。
こと亮月製作所にとっては再出発の年でした。老朽化しきった旧サイトを閉鎖、内容の殆どを半年かけて新しく書き下ろし移転しました。先んじて技術や作風を改めたイラストと音楽関係との整合性がようやく取れました。
写植関係の研究はサイト移転の中でそれなりに進展しましたし、動画サイトで曲とイラストの発表も多くでき、充実した活動ができたと思っています。同人誌への寄稿もとても新鮮な感覚でした。サイト活動とは別に、所属の写真サークルでの活動はすっかり定着した感があります。
当サイトは冠に「写植ファンサイト」を掲げていますが、ただ好きなだけでいいのか、という反語に近い疑問が常に頭の中にあります。それは、ネット上の写植に関する情報やtwitter等の書き込みを見ていると、非常にいい加減で不確かだからです。
中には根拠のある情報を提示しているサイトさんがあるのは知っています。しかしその一方で、「写研の書体は未だデジタル(フォント)化されていない」などという書き込みを見ると、よくそんなことが言えるなあと情けなくなってくるのです。(個人的には、写研が手掛けたタイプフェイスを指して「写研フォント」と言うのもとても気持ちが悪い。)
写植について、少しでも多くの事を知ってほしい。
写植好きの私が、不特定多数の人が閲覧する媒体の管理人として願うのはそれだけです。その為には内容が正確でなければならないのです。サイトの日当たりアクセス数から推測するに、このサイトを見てくださっている人は全国で数十人に満たないのでしょうけど、そうであっても無責任であってはならないと思っています。
「好きな事だからこそ責任を持とう」と決意し実行したのがサイトとしての2010年の変化でした。
写植を主題にして短くはない期間が過ぎましたが、この10年余りで同世代の人が写植関連のサイトを立ち上げたという話を聞くことはなかったので、恐らくこれからもずっと孤独な旅を続けることになるのでしょう。まあ、写植に関しては独りでもいいや!
逆に考えれば違う世代の方との交流が深められ、自分では世代的に体験できなかったものを得られるという大きな利点があるので、今後も見聞を深めるためそういった世界へ飛び込んでいきたいです。
同世代で写植じゃない方も、どうか仲良くしてやってくださいね(笑)。
という訳で2010年の総括でした。
2011年がよい年でありますように。
2010.12.19(日) 23:59 630 満腹の気持ち
【日録】18日(土)、午後から写真展の準備へ。
4ツ切りに伸ばした写真をパネルに貼り、それを会場に掲げるというそれだけの作業だが、文字で表現する以上に手間と時間がかかる。これまであまり準備に関わることはなかったが、地道な裏方作業が催しを支えているのだと分かると、催しへの愛情も増してくるものだ。
会場である「cafe凛」さんで設営。主催のRさん、メンバーのGちゃんとの3人で写真の配置を決めていく。色調の強い写真から淡い写真、黒白まで様々あり、それぞれを相応しい場所に配置するまでの過程はパズルを解くような感覚だった。
cafe凛にて昼食
Nikon D80・AiAFニッコール35mmF2D・ISO 1600・絞りF4・絞り優先AE(1/40秒)
料理の写真は実に難しい。この時「景色を少し入れて斜めに撮ると『女子カメラ』っぽい」と言われるも、何故それらしく撮れるのかを私達はもっと考えなければならないと思う。
今回の新しい試みとして、お客さんに一人1枚ずつフィルムカメラで写真を撮ってもらい、それを次回の写真展で展示するという企画がある。Rさんによると、今の小学生でフィルムを知っているのは10人に1人もいないという。知っていても「映画に使う、昔のもの」という答えが返ってくるらしい。フィルムカメラで撮影するとすぐに「(画像を)見せて」とカメラの裏面を見たがるそうだ。
いまだフィルムで撮る私達は、彼らから見たら数寄者にしか見えないかも知れない。いやそれでも、結果がすぐ見えなかったり物として残ったりするからこそ「意識を集中して大切に撮る」感覚も知ってほしいな。
夕方からは3人でRさんの伝で中区新栄にある「しまうまカフェ」へ。
住宅街の奥にある古民家を活用した(というか、ほぼそのままの)カフェ。今日は「8時間耐久餃子」という催しが昼から始まっていて、そこへ飛び入りで参加した。
片や餃子をひたすら大量生産し、片やそれをひたすら食すということを8時間続けるという。見ず知らずの人が同じ目的を達成しようとわいわいやっている、バカバカしく(褒め言葉)混沌とした賑やかな会。突然その場に置かれた自分は「ほえ〜」と雰囲気に呑まれるしかなく、それもまた心地良かった。
傍らには各人が食べきった餃子の数をシールでグラフ化してあり、最終的には20人程の参加者で1000個弱を食べきっていた(!)。
餃子グラフ。橙色のシールが、食破した数。
Nikon D80・AiAFニッコール35mmF2D・ISO 1600・プログラムAE(以下同じ)
餃子にはにんにくが大量に入っているらしいので、食後に紅茶を頼んだ。深みのある香ばしいアールグレイ。東京の輸入業者から特別に仕入れているらしい。
味や香りもさることながら、見たこともないポットで出てきて驚いた。
まず、上のような置き方で出てきて、
所定の時間になったらポットを立てる。そしてカップへ注ぐ。
ポットの中には茶漉し用の仕切りがあって、横にした時だけお湯が茶葉に届くようになっているようだ。
ユーモラスな外観だけどとても実用的! 店主さんに尋ねてみたら、ドイツ製で万円単位だとか。入手法は分からなかったので、ポットの裏を見てメーカーのロゴを撮影しておいた。陶磁器産地の人間は皆、器の裏を見て出自を知るのが癖になっている。
Ronnnefeldt社のスリーピングポットだった。12600円也。
ちょっと高いけど使い易そうだし、きっと買っちゃうんだろうなぁ……。
心と体が満腹といった有様で帰途に就いた。Rさん、Gちゃん、どうもありがとう。
2010.12.16(木) 23:59 629 ぬくもる
【日録】13日は私の誕生日だった。
当日、仕事から帰宅して玄関を入ると、包みが一つ届いていた。友人からだとすぐ分かった。急く気持ちを抑えながら丁寧に封を解いた。
中川政七商店「めでたクリップス」
花火の玉のような紙製の球に、「めでたクリップス」という札が付いている。これは何ぞ?
球を開けてみると、和風の図を象った小粋で可愛らしいクリップがたくさん! これでちょっと書類を纏めるだけでささやかに机周りが彩られる逸品。
お祝いの気持ちが贈り物の形にも込められていてとても嬉しかった。嬉しさ余って紹介してしまった次第。ぬくもる心で新しい歳を迎えられた。どうもありがとう。
*
果てしなく続く名曲発掘の旅。
・つじあやの『紅色の花咲き誇るとき』(2010.9.8)
2日に名古屋市千種文化小劇場(ちくさ座)で催されたつじライヴに久々に行ってみたら、バックバンドや編曲が神がかっているように良くて、その中につじさんの“芯があるうららかさ”があり、その緊張感と音の豊かさに涙ぐむほど感激しました。
聴いたことがないうたばかりだったので、その帰りに最新のアルバムを買い求めたのです。最新と言っても、9月に発売されていたのを知らなかったのですが……。
2002年から数年間、ファンサイトを運営するほどつじあやのに傾倒した管理人は、最近の作品にどうも馴染めずサイトを閉鎖し、気持ちが離れつつあるところでした。そこに本作が飛び込んで来た訳です。
言い方は良くありませんが、音楽家を好きになったり同化したくなったりする事は宗教に限りなく近い。そうなると楽曲の良し悪し・好き嫌いではなく、好きな音楽家だから作品も好きという思考停止状態に陥ってしまうように思います。音楽好きとしてそれは良い事とはいい難いのです。
つじさんから暫く離れてみたことによってつじ作品の良さを発見したような、新しい感覚でした。
・『キダ・タローのほんまにすべて』(2010.12.1)
中学生時代から関西のラジオを聴くのが好きで、「キダ・タロー」という偉大な作曲者がいることをその時知りました。
高校生の時、レンタルレコード店の閉店セールで『浪速のモーツァルト キダ・タローのすべて』(廃盤)を見付け、さんざん迷った挙句『懐かしのCMソング大全』をコンプリートすることにして資金不足で諦めて以来13年。手に入れることは出来ないものかとずっと思い続けてきました。待ちくたびれたところに発売の知らせが!
収録されているどの曲を聴いてもコテコテのキダ節。演歌や童謡に近い節回しで、聴き手に近い所にある音楽という印象です。陳腐な表現ですが、「ぬくもりと慈愛と笑いに溢れている」。
今年の作品に『てくてく こうやくん』という、高野山開創1200年記念大法会イメージキャラクター「こうやくん」のテーマソングがあるのですが、「あの山こえて、この山こえて」というしみじみひたむきな歌詞に乗せて、メジャーの曲調にマイナーコードが一瞬挟まるあの(?)展開に心が釘付けです。必要なさそうなところに敢えて寂しげなコードを入れてくるキダ氏の感覚に強く共感します。夕陽を見て家に帰りたくなったときの気持ちに近いです。詞曲ともキダ・タロー作。今でもやっぱりええ歌作るわ〜。
2010.12.9(木) 23:44 628 いてほしい病
【イラスト制作部+文字関係】ブログ「遠近法ノート」のn-yujiさんが発行した同人誌『ふぉんと!』にイラストを寄稿させていただきました。
かの名作記事の再録やフォントの擬人化など、フォント好きにはたまらないネタが満載です。なんと頒布当日に完売してしまったそうで! おめでとうございます!
ブログでは姿が見えない「脳内姉」さんが可愛いです。n-yujiさんとのやり取りといい、イラストといい。こんな姉がいてほしい……。
私はおまけページの企画で「ナール」の擬人化イラストを描かせていただいてますので、ご笑納くださいませ(→イラスト制作部・ナールに掲載しました)。
本文中、脳内姉さんのページの「読み終えた頁をむしゃむしゃと食べてしまいます。」で思い出しました。
ねんどろいど『文学少女』天野遠子
うっかり魔が差したのではなく確信犯。この可愛さは買わなかんやら!(買わないといけないでしょう! の地元弁。)「ねんどろいどを1体だけ残して処分しろ」と言われたら、きっとこの遠子先輩を残すと思います。こんな先輩がいてほしい……。あぁ、「先輩」という甘美な響き……(管理人、壊れる)。いや呼ばれることもありますけどね。
*
【音楽制作部】管理人の好きな音を生録音の音源で紹介するコーナー「音のスケッチ」を新設しました。
「音を録る」ことは再現することが前提の行為です。そのため自分が気に入った音はできるだけ忠実に残すことにしています。その中の一番それらしい部分を抽出し、演出は一切なしでこのコーナーで公開することにしました。
良質のヘッドフォンでゆったりと聴いてみてください。きっと私が居た情景と同じ場所へ行くことができると思います。
2010.12.3(金) 23:06 627 変わらないこと
【日録】11月27日(土)。早朝から東京に向かった。
お昼前から都内在住の友人Aさんと5年振りに再会。待ち合わせ場所に姿が見えた時、一瞬で判った。「変わらないね」とお互いの人となりが健在なのを喜ぶ。ただしAさんはお子さん連れ。確実に5年という時間は流れているのだ。
天気は快晴。絶好の行楽日和ということで六義園を散策。トップページの写真もこの時撮った。
Nikon D80・AF-S DXニッコール16-85mm F3.5-5.6G ED VR・プログラムAE(以下同じ)
Aさんのお子さんは色々なものに興味津々で、好きなものを拾い集める姿がとても可愛らしかった。私に娘が出来たらきっと溺愛するに違いない(笑)。
六義園の紅葉は見頃を迎えつつあり、天然のグラデーションを楽しむことができた。逆光に透ける葉が美しい。
「5年間にどんなことがありました?」
色々なことが、沢山あった。話したいことが堰を切って出てくるほど自分がお喋りじゃないのは、こういう時、もどかしい。
転勤が2回あり、ミクさん(VOCALOID「初音ミク」)と組んで曲や動画を作り始め、写真サークルに入り、イラストをもう一度ゼロから始め、サイトを移転し、祖母が亡くなり、妹が結婚して家から居なくなった。変わらないようでいて、何もかもが変わってしまったかのような5年間だった。
それでも変わらないものが確かにあると私は信じている。
それを問われているようで、背筋がしゃんと伸びた。
少し懐かしくて、清々しい気持ちで、とても楽しかった。Aさん、ご家族のみなさん、ありがとうございました。
午後からは「もじもじカフェ」へ。詳しくは「写植レポート」参照。
久々の写植関連イベントへの参加で、自分でも分かるぐらい気分が高揚していた。懇親会では沢山飲んだとはいえ、きっと訳の分からない事を言ってたんだろうな(笑)。
あくまでも趣味であり実体験もあまりないとなると、幾ら調べ物をして理解したつもりになっても掘り下げた話は難しいし無責任に下手な事を言うことはできない。それでも参加者の方に「書体が好きな人は多くても、写植の仕組み(写植機)が好きという人は今まで見た事がなかった」と言われた。きっと頑張りどころだ!
2010.11.24(水) 23:59 626 ウェルカム
【日録】20日(土)は所属の写真サークルの顔合わせ会へ。
この冬も写真展を開くことになったが、もう延べ5回目だ。最初恐る恐る知らない人達の輪に入って行ったと思ったら、いつの間にか古株になって自由奔放にさせてもらっている今。それでもこの向こうにはまだ無限に世界が広がっているように見える。幾重にも張られていた伏線がここで繋がるような、そんな出会い方をしているメンバーも、まま、居るのだ。
このサークルの居心地の良さは、リーダーRさんのウェルカムな思想に依るところが大きいと思う。来る者は拒まず、全てを受け容れているように私には見える。その雰囲気が個性のきわめて強いメンバー達を惹き付け、上手く纏めているように思う。そしてそれぞれが何かを押し付けることも決してない。気を遣い合っているというよりは、お互いのアクの強さを認識して恕しているような、それを無意識にやっているような、そんな感じ。
今回はお世話になる会場の方への挨拶と、夕食会と楽器の演奏を楽しむ。時間が普段の数倍速く流れる感覚で、あっという間に終電を逃してしまった。Rさん今回も泊めてくれてありがとう。
翌日は「名古屋市民ギャラリー矢田」の展覧会へ。人が丹精込めて作った作品を見ていると、自分も何か作りたくなってくる。社会に出た人がそれ以外の場で何かに打ち込む姿って素敵だ。私も嬉々としてずっと続けていきたい、そんな清々しい気持ちになった。
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果てしなく続く名曲発掘の旅。
・湯川潮音『クレッシェンド』(2010.11.17)
・相対性理論『シフォン主義』(2008.5.8)
・相対性理論『ハイファイ新書』(2009.1.7)
・やくしまるえつこ『COSMOS vs ALIEN』(『荒川アンダーザブリッジ×ブリッジ』OP/2010.11.17)
・坂本真綾『DOWN TOWN』(『それでも町は廻っている』OP/2010.10.20)
潮音嬢は2年振りのオリジナルアルバム。待ってました!
やくしまる&相対性理論は絶賛はまり中。『COSMOS vs ALIEN』を聴くと言葉とメロディーとのタイミングが頭の中でどうしても噛み合わず混乱してしまいます。「相対性理論」は最近の乙女が聴く王道って本当ですか? Rさん!
真綾嬢は“それ町”のアニメを気に入ったら、オープニングを歌っていたという具合。EPOが『オレたちひょうきん族』のエンディングでこの歌を歌ってた頃は裏番組の『8時だョ!全員集合』を見ていたから知らない、もとい、物心ついてませんでした。カップリングの選曲もすばらしい。真綾ちゃんはカヴァーもとても良いのね。 |